月の黙示録

#1

天照 運ばれた森

辿る浮船 窓と庭

腐る焼香は 非道の色

柵の野の まだ遠い陽は

線と指と 距離の月よ

逆さ 落ちる空

根の生えた街

朝は遠いわ 楓


#2

葉の調 韻の森

暮れる日常 安堵の濠

破片の弓 跨ぐ兵は

溶けた鉄の 重い月夜

朧 霞み 旋律の隙間

淫ら尼の香り

刃を研ぐのは

月光は道のべ 捧げ


#3

刺されば 裸足の檻

塞ぐそこは 歯止め無く

火車は去る 棺は舞う

混ざる煙 惑わす蜃気楼

金と輪廻と 鱗の銀河

斧と磨り減る摩天楼

靴の底は 踏みの色

踊る先に 的を居た 重ね


#4

待ってな 凪の月

回る歩道の森 杭を打つ

無効の歩道 海辺の椅子

閉ざす光 輝く瓶を

芯と蔓と 鉄線の領域へと

運河の催す 砂鉄

蜘蛛の影遊び 埃被る

野も消えず 浮世の要塞


#5

地下と青の梨

刈られ草よ 鳩の祈り

触れる底は 水の膚

散らす侵食の星屑に

林檎 黄色 信号 黄色

果ての風の通りは

憂鬱の朝の 蛍

詩々の飛び交う 羽根音


#6

満ち潮 満潮の思想

隅の光源 窓の先

笑うカーテン 眠れぬ四肢よ

夢の問い色 瞳も消さず

因果と鈴 密と罪と 唾と罰よ

線路の集る火は

筆に何時を 岸を弧で

月の黙示録 悪夢の調べ

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