風の夢のままで

彼女は丘の海に向けられたブランコを漕いでいる

森の陰からあなたの背を押したがるのは追い風

僕は出かける時渡り機会に乗って

置き去りの記憶が今も錆びないままのジュラ紀へ

放物線を描くその石が粉々に白人に砕かれたら

きっと空は水になる きっと空は水になる


フライパンの卵の核は愛だった

僕らはそれに油を注いでる

熱に帯びた表面に殻の隙間が開かれて

黄味は落ちて行く

そうして愛は凝縮して僕らの口に運ばれる

静かな朝今日も誰かが火に油を注ぐ


パラシュートの先には

小さなプレゼント箱がある

大きな影がそこを通った訳でもないに

それは世界中に撒かれている

今 山の一軒家に住む老夫婦にもそれは届く

コーヒーの似合う朝の事だった

妻が箱を郵便ポストの近くで見つけたのだ

夫はゆっくりとカップをテーブルに置く

そして食べた後の皿をキッチンで洗い

それからテーブルに箱を置く

中身は軽く音もしない

開けるとやはり空だったのだが

二人は気持ちが若返っていた

夫は昔は乗り回していたオートバイを車庫から引っ張り

キックを何度も踏みエンジンをかけた

二人は歳に似合わない若かりし頃の服を着て

山を下りて車の通らない一本道をアクセル回した

風が気持ち良く感じたのはあの頃だったと

夫はサイドミラーから妻の顔を見たとき

二人はあの頃の姿をしていた

プレゼント箱の中身は見えない青さだった

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