burglar

いつの間にか夜が来る事が無くなりました

私はやけに長い午後の太陽を見上げ

コンビニで買って来たアイスを教室で咥える


夕方は午後四時にやって来て

翌日の午前四時まで続く

こんなに晴れた日なのに

夜が来ないから天体観測が出来ないでいる


毎日テレビでは討論をしている

私は毎日お茶を飲んで煎餅を囓る

新聞が多く世間に知らしめる

私はテレビ欄だけを見る

プラネタリウムが街では大流行で

ここの町もそうだった

私も部屋に置いて我慢をしてる


学者が言っていた

夜は死語になるのでしょうねと

私は部屋に戻り押し入れに入る

そしてゆっくりと眼を閉じたのだ


最近は夜行性の動物を良く見掛ける

きっと夕方を夜と見なしちゃったんだと思う

私は部屋の窓に身を出し

スイカを囓ってる

30円のラムネ

ビー玉は球状に空を回してた

飼い犬が狸と戯れあっている

私は友達が出来て良かったじゃない

そう独り言を呟いた


テレビではナイトスポットって番組が人気だ

暗い場所 夜を感じる場所を巡る番組だ

番組で放送された場所には沢山の人が集る

夜は落ち着きたいのに

皆が祭り気分で私は行く気が失せている

オバケが出る事で有名だった廃トンネル

そこは今や大人のバーになってしまった


私は仕方がないから

廃病棟を目指す事にしたけれど

若い人達の営み場であった

私は思ったのだ

今さら関心持ちやがってと

結局部屋の押し入れに引籠もる


そう言えばこの現象が起きてから

クラスメイトが来なくなった

私の前の席で授業をろくに聞かないで

いつもキャラクターばかり書いている奴


私と奴の関係はノートを写させる関係だ

それくらいの関係だけど

私は誰もが気にかけない奴の行方を探る事にした

私は奴の家を知っている

本当は知らない筈だったのに

ノートのやり取りを

誰かが夫婦なんて言うから

同じ方面に帰る同級生と一緒に帰りながら

奴の家に向かったのだ

結果これがきっかけで以来私は

プリントを届ける仕事が増えた


私は放課後

誰に言われた訳でもないプリントを

あえてクシャクシャにし鞄に入れた

今日くらいは叱ってやりたい

むしろ母親とこの関係だ


奴の家は遠い

田んぼに挟まれた一本道を通ると家がある

私の住んでるところとにていて

やけに自然が私を囲んでいた


家の玄関を叩く

お婆さんが笑顔で出て来た

私は今日も怒ってやれそうにないみたいだ

廊下の突き当たりを右に曲がり角

一番奥が奴の部屋

私の部屋にもある軋む音がする

私は無断でドアを開けた


するとそこには地面が無く

私は星の輝く夜を無重力で彷徨う

引き返そうとするとドアが閉まり

奴の声がテレパシーで届いた


「信じられない話だけど聞いてくれ

俺、夜に盗みばかりやってたんだよ。

最悪だよな…駄菓子屋ばかり狙ってた。

そうやって夜盗んでたら

本当に夜を盗んじゃったんだ…。」


信じられない話だけど部屋を見た時に

信じる事しか最早選択は無かった


「貯金箱浮いてんだろ?

それを駄菓子屋に盗んだ分返してくれないか?

いっつもごめんな…もう迷惑かけない。

だから頼む。」


奴のテレパシーは泣き声だった

私は彷徨う貯金箱を掴むと

自然に開かれたドアの外へと泳ぐ

私はもう一度部屋を振り返り

急いで駄菓子屋を目指した

いくら盗んだか聞いていなかった私は

駄菓子屋に着くと

貯金箱の蓋を開けて

小銭やお札をお店のお婆ちゃんの前で撒く

三万円はすっからかん

お婆ちゃんの呼び止める声を聞かず

私は再び奴の家を目指す


気が付くと外は真っ暗になっていた

私は奴の部屋のドアを勢い良く開ける

するとベッドがあり

机があり電気が着いていて奴がいた


私は涙していたけれど

奴が戻った事は

真っ暗になった時に気付けた筈だと

帰り道で気付いた


ナイトスポットは終了してしまって

廃トンネルのバーも無くなった

世界中に夜が訪れて

人が星を見上げてるのを良く見掛けた

残念なのは飼い犬が友達と会わなくなった事

静かに天体観測をしたいのに

周りに人が沢山いる事

奴は相変わらず私にノートを求める事だ


山に登って天体観測をしようか

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