飽きたんだ

飽きたんだ

投げた石の音は返らない

僕は沢山石を投げ入れても

池は返事を無かった

波紋が出るだけ幸せと

諦めたあなたは言う


飽きたんだ

生活は余りにも穏やかだ

狭い路地から鳴いてやって来る

人懐っこい野良猫

店はいつ開くか気になる常連客

電線にしがみつく雀

在り来たりな青空

斜陽に平行する影

変らぬ友人と変らぬ遊びをし

変わらぬ家族と屋根のした暮す

誰か飛び切りの不幸になってくれ

僕の舌は酷く渇いている

その考えばりは飽きないのねと

自身に飽きたあなたは言う


飽きたんだ

再生は繰り返される

お気に入りの変拍子も

どう鳴るか知っている

知らない音を探そうとしたけど

僕は知り過ぎていた

酷似が溢れていて

内向を詩に盛り上がってる

自惚れる程新鮮さが無かった

世界最重要はそれだけだった

僕の心を走らせず

ただなっているだけだった

外の踏切も

この工夫は何時まで持つかな

音程 速度 再生方向を変えて

同じ曲を聴くあなたは言う


飽きたんだ

胸を揉む感触も

射精する感触も

怒られ殴られた痛み

放置されて病んだ虫歯

癪に触って蹴られる痛み

鉛筆を握る感覚

工夫しなきゃならない程

世の中はつまらないのかもね

ルービックキューブを揃えて遊ばない

そんなあなたは言う


飽きたんだ

詩を書く事に

僕は何を伝えたい

僕は居る事伝えたい

それは届いて居ないのさ

何にも伝わっちゃ居ないのさ

晴らされない心が在るのは

もう飽きてしまったんだ

言葉に飽きたら死ぬだけさ

休まず走らすあなたは言う


飽きたんだ

飽きる事に

飽きたんだ

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