鈴蘭八景

♯白波の街景色


白波を辿る

誘われる様に

君の街まで


朝凪から白昼蜃気楼へ

夢の森 霧の中を歩く

触れ合う 君の指へ


サラササラ…重なる

サラササラ…淡く

サラササラ…モザイクプールへ





♯紅通り


夕焼けに照らされた 子供達は

羽根を羽ばたかせ 途中で燃えた

俺はその灰掻き集め

夜に輝く蛍にする


まだまだ絵には 出来ないけど

殺されるくらい美しき 紅い通り

擦り付けられた 檸檬の様な

香りの漂わす 綺麗な道


俺はいつかその中の絵になる





♯蛹群青


若葉を食べる青虫

養殖工場にて見学

薄緑の蛍光灯太陽の下

照らされる土の上を這う


蛹は群青

鮮やかな群青色

朝方に背を破り孵化し

空の奥へと行く

それは空へと溶け込んで

今の空があるのを知る者は少ない





♯サルの橋


言葉が渇く 砂を吐く

イルカ魚雷で 濡せば

天体観測 新しい星

翔べそうさ 今日はフライデー


渡れば退化する サルの橋をゆけ

分かりあえた頃 取り戻せ

真直ぐな朝になる 橋の向こう側

アダムとイヴよりも 新しく





♯花飾りの娘


懸命に声を張り

平和を訴えた幼いあの娘は

ガムを噛む傭兵に銃口を押しつけられ

額に風穴を開けられたのです


風はそこを敢えて潜るのです


あの娘の汚れなき深い青の瞳は深さを増し

その奥に光は届かなくなったのです


私達に出来る事は

力を捨て裸で戦場へと行く事

その前に痛々しいあの娘の傷を

綺麗な花飾りで覆い隠し

土に帰るまで祈るのです





♯コンビニ


目を閉じればきっと

囁きが聞こえる

「また明日も来て私はずっと居るから」

不思議な気持ちはきっと

お手頃に潜んでいて

「闘鶏になりそうなら温めてあげよう」

ずっとどこかに居るのですね

必要になったらまた通います

お供え物に果物とお茶一杯





♯水車ベンツ


天秤かけた 運命吉凶

君の奪われた笑顔

電波発しながら水車ベンツは

君の水上の街へ


腕にかけた防水時計

鴎が案内する

口笛響き渡る水車ベンツは

君の水上の街へ


ビルの上 手を振る

赤の水着姿の 君に

優しい風 二人を包め




♯あすみ駅


押し花のしおり

渚の香り

心は微かに揺れて

君の手離すまいと

嘘付く弱さ


思い出している

指先は描く

無邪気になれた時代を

残業帰りの夜空

余りにも白い満月く


思い出せる

時代の流れ

軌跡はまだ短過ぎて

置き去りにされて

君は遠くへ逝った

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