消えた二時

橋を民は越えていく

僕は草を毟り

風に投げた

フッと草は向うへ流れ

掴めずにいた草は

その場に落ち

崖に生える枝にぶら下がるだけだった


今日は渡らない方がいい

薄い羊が遊牧している

それは届かなくとも影を造る

ここで黙って見てる

騒がしい橋の上を見てる

望遠鏡が捨てられていて

レンズは欠けていた

拡大の景色の右上

そればかりは少し遠かった


進む者と戻る者が橋に溢れている中

しゃがむ子供をみた

母親は手を伸ばしながら流されてしまった

子供は戻る者に踏まれ続け

やがて見えなくなった

薄い羊が橋を跨いだ

橋の真ん中は崩れ

そこの民は川へと落ちていった

午後二時くらいの話である

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