お出かけの先で

瞼に何度も重ねた幸せな光景が重りとなって

この瞳を閉じさせてくれたなら良いんだけども

今日も深い穴が冷たく存在していて

太陽を背負ったと思っていた子供達が落ちていく

幾つ落ちれば光を放つのだろうか

帰らぬ言葉を待たずに私は出掛けた


町では鼠の群れが川となっている

その先には一本の綱が天から垂れており

そこを目指しての大移動だった

砂埃が病を含んでいそうだから

ハンカチで口を押えて本屋の奥へと逃げ込んだ

そうしていると夕日が急に傾いて

いつの間にか私だけが店内に独りだけいた


静まった店内で私は一冊だけ何となく本を開く

そこには挟まれて潰された名前の分からぬ子虫が

栞の様に潰れていた

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