潜水

人の居ない市民プールの朝

蝉の鳴く声

車が通る音しかしなくて

僕は真ん中の第5レーンで

それ以外の音を合図に潜水しようと構えてる

今日は市の祭りで花火が打ち上げられた

それを合図に僕は飛び込んだ

水中に潜りこんで日焼けした肌が

擦られた様にヒリヒリするけど

そんなのもは直ぐにどうでも良くなって

母の羊水に居た時の事を

必死で思い出そうとしている

体を丸め呼吸を捨てる

小宇宙の羊水は

少しばかり静寂の音を出していて

知らないうちに子守唄にしていた

気がつくと僕は精子になっていた

その身を必死に動かした

この中で僕は卵子に出会えるだろうか

唯一邪魔なのはお互いの生命の時間

祭りが終わってプールに潜りに来た人達が

赤子になった僕を見つける

それは人の居ない朝でした

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