腐った蜜柑

もぎ取られた僕らは育つ仕事から

食べられる仕事に移るのです

箱に詰められて人の為に

愛を果汁に詰めて持って生きてます

箱を開ける度 仲間が眩しい外に手で持っていかれる

「じゃあいってきます」

ただいまの返事はなく

当然お帰りの返事もない


ある夜僕の下のミカンが泣いていた

「ごめんねごめんね」と謝っていた


暫くして僕が外に出る時が来た

皆の顔を見るのは最後だからじっくり見ておこう

僕の下のミカンは真っ白になって死んでいた


彼は腐ってしまった

愛をあげる前に体が持たなかった

彼を囲むミカンは蝕む愛液に狂った様に叫んでいた

「俺と変われ」そんな言葉ばかりを僕は浴びた

「変わる気はないけど皆と腐っても良い」

更に残された蜜柑達を駄目にする様な

そんな言葉しか浮かばなかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る