第8話 神殿騎士
「ネネちゃ~ん、またね~☆」
セツナがぶんぶん手を振る横で僕は頑張って取り繕っていた。自分の行動を思い返すと顔から火が出そうだ。
ネネはちょっと心配そうに、少し恥ずかしそうに僕の方を見ていたが、心配いらないと笑顔で送り出す。
彼女の言葉に少し前向きになれていた。もう逃げたりはしないと思う。
路地裏に姿が見えなくなり、僕らも帰るかとそちらに背を向けた瞬間、幼い少女の悲鳴が響き渡った。
「ネネちゃん!?」
顔色を一瞬で変えたセツナが飛び出す。
遅れて、僕は
「今のって、ほんとにネネちゃん?」
「わかんないけど、でもあそこにはネネが!」
疾風のように駆けるセツナを必死に追いすがる。
その勢いのまま、彼女が入っていった路地に飛び込んだ。
「「ネネ(ちゃん)!!」」
そこにはネネらしき少女を抱えた白金の鎧を纏う4人の騎士とそれを威嚇するセツナがいた。
「フン。『依り代』さえ確保すれば余計な目撃者は消すに限る。さっさとやれ。」
一番偉そうな鎧の言葉にバっと前列にいた騎士2人が動く。
「ネネちゃんを!かえせ~!」
セツナが動く。全力の身体強化で弾丸のように突っ込んでいく。
騎士の持つ大盾を目くらましに利用し、小さい体を活かして器用に立ち回る。
「な、なんだこいつ!?・・・・・・ただのこどもじゃない!?」
混乱する騎士たちをさらに戸惑わせるべく援護に水弾を撃ち込みながら幽紀に耳打ちした。
「幽紀、ここは僕たちで時間を稼ぐから父上か
コクコクうなずく彼に身体強化を施し、強めに背中を叩く。
「行って!」
走り出した彼を数瞬見送り、すぐにセツナの援護に向かう。
ネネはまだ連れ去られていないか?セツナは無事か?
視界に入った彼女はちょうど騎士に捕らえられたところだった。
「クソ!手こずらせやがって!」
「ク゛ソジジイ!は゛な゛せ゛!」
「この!!」
拳を振りかぶる騎士の手元に、生成した短剣を最速で投擲する。
命中したその衝撃で握力が緩んだ隙を逃さず、セツナが蹴りをぶち込み、脱出してこちらに飛びずさってくる。
「大丈夫か?まだやれるか?」
「ウチはまだいける。ちょっとゆだんしただけ!」
頬を拭った彼女から捕らえられたネネに視線を移す。
抱きかかえられた彼女は猿轡でも噛まされたのだろうか。声は出ていないが涙にぬれたその瞳が強く訴えかけてくる。
「たすけて!」
助けるさ!何とかしなければ今までの努力の意味がない。
【ソウヤの、考えてることは、むつかしくてわたしには、よくわからないけど。
ソウヤがケガしたら、・・・・・わたしは悲しい。新しい魔法が使えるようになったって、喜んでたら、・・・・・わたしもうれしい。それじゃ、ダメ?】
彼女のくれた言葉が脳裏によぎる。ネネがいなくなったら、僕は悲しい。力を振るう理由なんてそれで十分だ!
両手に産み出した短剣を握り、宙に今操れる2本の武器を浮かべ、横に並ぶセツナに問いかける。
「敵は自分より大きい相手。訓練通りに行くぞ。足引っ張るなよ?」
「どっちが!?いっつもウチより先にへばるのソウの方でしょ!?」
フフンっと不敵に笑い、身体強化の黄色い光を強くする彼女がとても頼もしい。
戦いに挑む高揚感を魔素に変換し、できるだけ冷静に聞こえるよう、戦闘再開を告げる。
「行くよ!」「うん!」
僕たちは弾丸のように飛び出した。
右の騎士に水弾を撃ち込み、釘付けにして左の騎士に2人で突っ込む。
操る短剣でガードを右に集中させ、先にたどり着いたセツナが炎を纏った拳で盾をかち上げる。
作った隙を逃さずに気勢を上げて、膝に4連撃を叩き込む。
重心が崩れたところにセツナが追撃をかけ、壁にたたきつけた。
「まずひとりッ!」
勢いのまま、次の相手に向かおうとしたところで強力な魔法の気配を感じて全力で防御を固める。
「
光属性の中級魔法、炸裂する光球が僕らを襲う。
防御壁をあっさりと貫通され、数m吹き飛ばされる。
「ぐぅぅー!?」「きゃああー!??」
なん、・・・とか、・・・・・防御が間に合ったか。・・・・・・体は、まだ動きそうだ。
気力だけで体を動かし、周囲を確認する。
セツナはしばらくダメそうだな。僕が動くしか・・・・・ない!
ふらふらな体をなんとか動かしておぼつかない足取りで立ち上がる。
足元に落ちた影に気づき、必死に顔を上げて睨みつけると上から舌打ちが降ってきた。
「大人しく死んでおればよいものをォ~。『獣擬き』の分際でぇ~~!!」
そのダミ声とともに頭上から降ってくる黄色い光を睨みつける。
これは、・・・・・躱せない。この軌道だと後ろのセツナに当たってしまう。
スローモーションに見える世界の中で限界まで強く闇魔法の盾を形成しながら心の中で詫びる。
ゴメン、父上。今力不足を盛大に後悔してる。
ゴメン、幽紀。お前が帰ってくるまでもたなかった。
ゴメン、セツナ。キミまで巻き込んじゃうかもしれない。
ゴメン、ネネ。たすけ、・・・・・られなかった。
そしてあっさりと盾を食い破ったその光は、僕を吹き飛ばした。
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