第4話 魔法訓練
翌日、今日は鍛錬の日だ。
旅館の裏には大きな鍛錬場があり、その奥には精霊の試練洞窟があるらしい。
大きくなったら挑戦してみるといいと言われ、僕はちょっとがっかりしていた。
精霊憑きと言われる精霊と契約できる人はかなりの強さを持つことが多く、子どもの憧れだったからだ。
「本日訓練を行うこの鍛錬場は炎の精霊の試練洞窟がある国内でも有名な場所だ。」
全員鍛錬場の揃うと、指導を行う親たちの取り纏めを行っている僕の父が語り始める。
僕ら5人は真面目な顔でその訓示を聞いていた。
「歴史は長いが、最新の訓練場に劣っているわけではない。その理由は精霊がいるからだ。精霊とは何なのか。学校で習ったな?だれかわかる者?」
「は、はい!」
座学が得意な幽紀が手を挙げて答える。
幽那さんが、がんばれ、と声をかけている。
「せ、精霊は魔素が濃い場所でちからが意志をもったそんざいです。その中でも本能が強いものは魔獣と、理性が強いものは精霊とよばれます。」
できた!とうれしそうな幽紀を幽那さんがイイコイイコしている。
座学が苦手なセツナは早くも飽きているようで足で地面をいじっていた。
紅夜兄さんにつつかれて僕も集中しないと、と正面に向き直る。
「そうだ。よく勉強しているな。つまり、ここには精霊がたくさんいる、ということは魔素が他の場所より濃いということだ。そうするとどうなる?蒼夜。」
ビクッと当然の指名におどろくも、それは知っている。
「魔素が濃い場所では魔法の発動に必要な意志が弱くて済むので新しい魔法の習得や、制御訓練に有利です。」
答えに満足したのか父がうむ、とうなずく。
「そのとおりだ。よって今回はすでに覚えている魔法の練習ではなく、新魔法の指導を行う。」
それまで後ろに控えていたセツナのお父さんが父の横に並ぶ。
「私が光魔法を、ハゼリアさんが闇魔法を指導する。やりたいほうに集まるように。」
そういって父は解散、と手を叩いた。
魔法の適正は体に出る。主に髪や瞳などだ。
体に含まれる魔素が、漏れている意志によって変化しているからそうなるらしい。
そのため、親子でも見た目は似ていても色が違うこともよくあるみたいだ。
僕は髪が群青色で瞳が藍色だから水と闇の適正が高い。
父は髪がオレンジで瞳が炎を閉じ込めたような色のため火や光が得意だ。
適正はある程度遺伝するみたいだけど完全に法則はわかっていない。
僕は父より母の遺伝が強かったみたい。
僕と幽紀は適正の高い闇魔法の習得を目指すべく、ハゼリアさんのところに行った。
紅夜兄さんや幽那さんもこちらに来たので遠くでセツナが「みんなずるぃ~」と叫んでいたが無視だ。
さらに今回教わるのが治癒魔法だと言われ「むずかしいのやだ~」と叫んでいたが僕はなにも聞いていない。
「さて、紅夜くんは
僕と幽紀は顔を見合わせ、ふぅっと一呼吸いれて集中してから、それぞれの手のひらに闇属性の魔法球を形成する。
幽紀のそれは球形になる前に空中分解し、僕のは数秒形を保った後、後を追うように散っていった。
「「はぁ~~~~。」」
そろってため息をついていると、なぐさめるように頭をポンポン叩かれる。
「闇は他とは特性が違うからね。よく見ていて。」
出された手を凝視していると見やすいように少し大きめの魔法球が顕現する。
自分のものと比較しながら魔素の流れを見ていると幽紀が先に気づいた。
「あ、そっか。やみはすいこんでいくからかためるんじゃなくて出し続けないといけないんだ!」
その通り、とハゼリアさんはうなずき、流れが見やすいように、と炎を吸い込ませていく。
それはきれいに渦を描いて中心へと流れ込んでいった。
「闇魔法を安定させるにはこうして中心を作り、そこに流し続けるのが基本だよ。
私は紅夜くんたちの指導をしてくるから、自分たちで練習してみようか。
わからなくなったり、できるようになったら呼んでね。」
「「はい!」」
ハゼリアさんを見送り、セツナの悲鳴をBGMにして二人でお互いにアドバイスをしながら練習する。
午前中いっぱいかけて、僕と幽紀は闇魔法球の安定をマスターした。
ハゼリアさんに報告に行って褒められ、上機嫌で昼食にセツナを誘いに行くと、彼女はしぼった雑巾のようになっていた。
まぁ、セツナは単純だからおいしいご飯でも食べれば元に戻るだろう。
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