第2話 魔導車旅
駅につくと思い思いに朝ご飯を買い、僕らは
5分程度待っただろうか。ホームに魔導車が滑り込んできた。魔導車の外観は汽車によく似ている。石炭のかわりに
この世界には魔素と呼ばれる物質が満ちている。とくにこちらの魔大陸と呼ばれる北の大地は濃度が高い。魔素は普段は何もしない物質だが、そこに意志が加わるとその意志に応じたエネルギーを発生させる。
魔導車のように、魔素に加える意志を魔法式で固定化し便利に使える道具を魔導器といい、それらが僕らの生活を豊かにしていた。
みんなで記念写真を撮ると予約しているコンパートメントへと向かう。
「子どもだけになるからと言ってあまり騒がないように。・・・・・ああ、ハゼリアさん。我々はこちらです。最近、情勢がキナ臭くなっていますが黒天教会ではどう見ていますかな。「・・・・・少し白天教の原典主義者が活発でして・・・。」」
「「「はあい。」」」
僕とセツナと
みなでわいわい朝ご飯を食べていると列車が出発した。
魔笛の音を聞いていると旅行前特有のわくわくする感じがする。
窓の外を流れるホームに見とれつつ、兄に質問する。
「コウ兄ィ、今日行くのはマウラだったよね?」
「そうだよ。あそこは有名な温泉地だし、うちの親戚が経営している旅館があるんだ。」
僕らの住む首都カグツチは火山地帯の盆地にあり、もともと龍人族が多く住む地域だったらしい。少し移動すると温泉や鉱物の産地があり、親族も多く住んでいた。
「親戚が旅館を経営してるなんてすごいのね。」
感心したようにいう
「親戚って言っても同じ種族ってぐらいでそこまで交流があるわけじゃないし、あそこは一族の訓練所も兼ねてるからね。今回も旅行中に鍛錬が入るんじゃないかな。」
「ウチ、くんれん大好き。楽しみだな~☆」
「うえぇ~、旅行中までしゅぎょうみたいなことするのー。」
拳を振り上げ、瞳を輝かせるセツナは体を動かすことが大好きだ。対照的にインドア派な幽紀はしょぼくれている。
「まあまあ。今回は旅行中だしそんなにハードなことはしないでしょう。」
幽那さんは喜ぶセツナにはよかったわね、と微笑みながら落ち込む幽紀を慰めている。
僕はと言えばどちらかというと訓練は好きだ。魔法も体術もやればやるだけ上達するし、なにかに集中している間は前世のことなど考えずに済む。
「今回こそは兄さんから一本取るんだ。」
僕は兄にそう告げ、微笑む兄に拳をぶつけて挑戦的にニッと笑う。
「頑張れよ。まずはちゃんと基本の型をしっかり身に着けるところからだぞ。」
髪の毛を兄にわしわしかき混ぜられ、笑い声をあげながら逃げ出すと窓の外の風景がちょうど変わるところだった。
それまでの切り立った崖が消え、一気に開けると目の前に滝が飛び出してくる。
「「わぁぁ~。」」
みんなで歓声をあげて窓に飛びつく。
ちょっとした小競り合いになるも、
朝の透き通った日差しが飛沫に反射し、神々しい神秘を作り上げていた。
「こういうところに、・・・・・神様はいるのかな。」
ボソッと僕が漏らした言葉にセツナが反応して振り返る。
「かみさまはねー、キレイなところだけじゃなくてみんながひつようだと思うところにいるんだよ~。」
得意そうに笑う彼女は、偶には神官の娘っぽいことを言うんだなと驚き、数秒見つめてからそうだね、と微笑んだ。
かつて同じようなことを言った幼馴染を思い出し、少し胸が痛んだ。
魔導車に別れを告げ、15分ほど歩くと旅館に着いた。
レンガ造りの立派な建物に圧倒される。
大人たちと兄は慣れたものなのかそのまま建物に入っていく。
残された4人は慌てて後を追いかける。
「昼食までは、1時間くらいあるな。自由にしてていいぞ。遅れないように。」
荷物を置くと父が時計を見てそう告げる。空き時間に大人たちはあいさつ回りに行くようだ。
僕たち3人は大喜びで旅館の探険に出かける。その後ろを紅夜兄さんと幽那さんがのんびりついてくる。その場に残っていると大人に巻き込まれると判断したようだ。
館内は1時間ではとても回り切れないほど広く、珍しい構造や置物が多くて僕らは満足しながら昼食に戻った。
とても楽しい旅になりそうだ。
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