第24話 社長は社員の生活に責任持ったらなあかん
「か、カバさん……」
ブラック企業勤めのあのカバさんが虚ろな目をしてうちらを見とった。
頬にはまるで生気がない。体は骨だけみたいに細い。
「あああああああ」
て、掠れた声を出してうちらに襲い掛かってくる。
カバさん、なんでなん!?
なんでそんな姿になってまで働かなあかんの?
そら働くんが大事なことなんはうちにもわかるよって。
でも人生棒に振ってまでやることちゃうやん。
ほんまにつらかったら逃げてもええやん。
なんであんたそこまでするんよ。
……やめさせたらな、あかん。
あいつをあのまま働かせるのは、あんまりにもあわれや。
「“も”、身を守れ。“か”、“い”、全体硬化呪文」
うちと賢者さんは全体硬化呪文を掛ける。
カバさんが骨みたいになったやせ細った手で戦士さんをしばく。「ぐぅっ!」戦士さんはものすごいダメージを受ける。すごい力やった。まるでリミッターが外れたみたいに。命が燃え尽きる最後の輝きみたいに。カバさんは自分の肉体を顧みず、肉体の限界を超えた力でうちらをしばいてくる。
でもその力は、前みたいな火ぃ噴いたり、呪文を使ったりするような多彩なもんやない。
ただ力任せにぶん殴ってくるだけや。
だから硬化呪文を繰り返して物理攻撃に対してつようなったうちらを突破することはでけへんかった。戦士さんがけんちゃんの石を翳すと傷が治っていく。うちは息子さんに加撃呪文をかける。自分にもかける。息子さんの雷の剣が、カバさんの胸を大きく切り裂く。
「もう眠り。あかんよって」
うちは開かれた心臓に向けて剣を突き入れた。
「これで、やっと、ねむれ、る」
カバさんは力尽きた。
「……許さへんからな」
象魔はにやにや笑っとった。
死ぬまで働いた自分とこの社員を助けもせずに。
カバさんをこんなになるまで使い潰した象魔をにらみつけた。
「象魔(しゃちょう)、おまえ、絶対落とし前つけさせたるからな!?」
滅びこそ
我がよろこび
死にゆくものこそ
美しい
うちらの最後の戦いが、始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます