第23話 アイテムの無駄遣い


 石で出来た門番を倒すと、奥へ続く道が開いた。

 息子さんの千里眼に頼ってうちらは進んでいく。

 途中でけんちゃんの石いうアイテムを拾う。けんちゃんがものすごい魔法力を託した石で、この石にはうちら全身の傷を治す力があるらしい。「持っとけ」いうて息子さんがぽいっと戦士さんにその石を渡す。

 進んでいくと、なんや汚らしいおっさんが、紫色の多頭竜と戦っとった。おっさんは攻撃呪文に魔法力を無駄遣いしたせいで、回復呪文に手が回らんようになって多頭竜に負けた。

 小さい声でなんやぶつぶつ言ってたけど、うまく聴き取れんかった。

「聖樹の葉っぱありますけど」

「ほっとけ」

 息子さんが冷たくいう。

「“ぞうま”は無駄にアイテムを消費して勝てる相手じゃない」

 随分薄情な気がしたけど、おっちゃんを見捨ててうちらは先に進む。

 一番奥っぽい部屋まで来たら、真っ暗なそこに急に火が灯って明るくなった。

「象魔」がおった。

「我が生け贄の祭壇までよくぞやってきた。勇者よ」

 …………

 いや、うちら勇者とちごて盗賊団やけど、まあええんかな?

「世界の希望たる貴様を血祭りにあげて、世界を絶望の闇で覆い尽くしてくれよう。いでよ、我が眷属」

 そう言い残して、象魔は奥に消えていった。

 代わりに、おっちゃんを殺した紫色の多頭竜が現れる。

「“か”、全体硬化呪文と加撃呪文を。“い”、軟化呪文、“も”と俺は攻撃」

 息子さんが指示を飛ばす。

 激戦を潜り抜けてきたうちらはそれなりにつよなっとって、さっきおっちゃんと戦ったばっかりで傷を負ってる多頭竜を倒すのはさほど難しいことやなかった。

 通路の先に明かりが灯る。

 奥へ来い、いうことやろう。

「回復呪文」

 賢者さんの呪文で態勢を整えて、うちらはさらに奥へ向かう。


 すると、そこにはあいつがおった。

 地上世界でうちらを苦しめた、あの魔物が。


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