第15話 生活習慣病はほんまに気ぃつけなあかん
うちらは以前に通過した関所からカギを開けた先にあったぐるぐるの中に飛び込んだ。うちは一回目とおんなじように目を回す。うぐう。酔うた。しんどい。
道中で「夜のランプ」を使ったら、あたりにおった魔物の気配が急に薄くなった。息子さん曰く夜のランプには「エンカリセ」と同じ効果があるらしい。
ぐるぐるの先には、山に囲まれた内陸の国があった。うちらはその国を「ブクマ」したあと、そっから南にある洞窟に入る。毎度恒例の息子さんの千里眼で奥に進んでいって、うちは落とし穴にけり落とされた。
「うひゃあ」
うちは間抜けな声をあげて尻もちをつく。息子さんが落とし穴に飛び込んできて、うちらは落ちた先にあった宝箱を開ける。するとぴっかぴかの鏡が出てくる。「真実の鏡」いうもんらしい。対象の本来の姿を映し出すそうや。
うちらは脱出呪文で洞窟を出て、さっきブクマしたお城に戻る。それから息子さんは武器屋にいって、いままで持っとったほとんどの武器と防具を売り払って新しい武器と防具を買い漁る。戦士さんが洗礼の剣を買ってもらう。息子さん、うち、戦士さんは竜鱗の盾を装備する。なんでもこれは、防御力だけじゃなくて魔物の使う火炎や吹雪のブレスを受け止めてくれるらしい。
「あの、うちの武器は?」
息子さんは無言で余っとったこん棒をうちに渡した。
うちはこん棒を装備した。
……うち、戦士になったんやよね? しくしく。
それから「夜のランプ」を使って街を夜に変える。そんで裏口から王城の中に潜入する。盗賊団、息子さん一派にはこんなんお手のもんや。
王様の寝室まで入っていって、息子さんは寝てる王様の隣で「真実の鏡」を使って王様のほんまの姿を映し出した。
……なんてことや!
王様はとんでもないメタボやった!
服で隠れとるだけで腹周りの脂肪がありえへん。
おまけに頭は、あれはカツラや!
しかも肌の色がめちゃんこ汚い。緑色してる!
不健康すぎる! 信じられへん!
「見たなぁぁぁ!!?」
メタボであることを知られた王様は、逆上して、近くにあった護身用のこん棒を持って襲い掛かってきた。立派な寝間着も脱ぎ払って半裸になってメタボを全開にする。王様めっちゃ着やせするやん! カツラも剥ぎ取って、投げ捨てる。興奮したら汗出てきたんか、化粧も剥がれて汚い肌の色が顕わになる。
「“い”、“か”、全体硬化呪文を重ね掛けしろ!」
「はい!」
うちと賢者さんは、全体硬化呪文を何度も唱えて、防具を揃えてあって守備力の高い息子さんと戦士さんをカッチカチのバッキバキにする。息子さんがカッチカチのバッキバキになって、王様のこん棒を受け止めて息子さんが屹立する。戦士さんも屹立する!
「“か”、戦士→俺の順に加撃呪文をかけろ!」
言われた通りにうちは加撃呪文を掛ける。
加撃呪文によって腕力が倍加された戦士さんの一撃を食らって、王様が悲鳴をあげる。
息子さんの鞭を食らって、嬌声をあげる。
王様がこん棒を振りかぶった。逃げ損ねた息子さんがこん棒の一撃をまともに食らう。硬化呪文がかかってるけど、その痛恨の一撃は息子さんの骨を砕いて膝を突かせる。賢者さんが速攻で回復呪文を飛ばして息子さんが回復する。うちはやくくさで戦士さんを援護する。
せっかく戦士に転職したのにうちはまたやくくさ係をやってることをしょっぱく感じる。
うちも剣を持ちたい。
王様は散々に暴れまわったけど、物理攻撃しか攻撃手段がなかったから、硬化呪文でしっかりガードを固めたうちらを崩すことはついにでけへんかった。時々くる痛恨の一撃も、連発はされへんかったから賢者さんの回復が間に合った。
鞭でしばかれまくった王様は、ついに力尽きて倒れた。
うちらは王様の部屋から、変身の杖いうアイテムをパクッて逃げた。
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