第10話 やくくさ



 うちらは船乗って西を目指す。

「あの、」

「黙ってろ。これ一歩でもミスったら夜になってロスるんだよ」

 息子さんめっちゃぴりぴりしてる。総舵輪を回してじぐざくに河を遡っていく。息子さんのめっちゃ操船技術すごい。実は船乗りさんやったんやろか? うちはむしろいままでの所業を思い出して船乗りよりは海賊のが正しいような気がしてくる。うちらはもしかしてヒトツナギの財宝手に入れる冒険をしてるんやろか? それはそれでロマンある。

 奥地のちっさい村に夕方には着いて、息子さんはすぐに井戸の下の方を掘り出した。なにがあるんやろおもてたら、稲妻の杖いうレアアイテムぽいものが出てきた。息子さんは、まさに人間ダウンジングマシーンやー。(グルメリポーター風に)

 うちらはその村の道具屋に向かって、「消え去りそう」言う悲痛な名前の草を買う。うちらの冒険はやくくさやとか消え去りそうやとか、変な草吸ってばっかおる。

 うちはあのやくくさいうやつが、ほんまに傷治す草なんかどうか結構疑ってる。

あれもしかしたら痛覚麻痺させて痛み止めてるだけで、傷治って見えるんは幻覚なんちゃうやろか? だってあんな即効性、ありえへんやん。やばい草を吸いすぎて頭おかしなってるんちゃうやろか。その影響なんやろか、うち、そろそろ盗みに抵抗なくなってる気がしてる。

 船で海上にぽつりとある国にいく。入口に門番おるけど、消え去りそう使こうたらうちらのことガンスルー決め込んだ。くさこわい。息子さんはいつも見たくタンスとかから金目のもんを盗み出す。それから地下に降りて、なんやパズルみたいなんを解いて厳重に保管されてた壺も盗む。盗みの手口が手慣れすぎてる。

 奥地のちっさい村にキメイラの翼で戻って道具屋でパクッてきた金目のものを片端から売り払って毒針を二本と毒の粉に変える。

 とくにスーツが高値で売れてうちは驚く。

 田舎のくせにセンスええやん。


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