第9話 おまえはいったいなにを言うてるんや


 リア充と一緒に洞窟から外でよおもたら、神田さんが洞窟の外から帰ってきた。相変わらず乳首浮いてるぴちぴちのタイツでうちは目のやり場に困る。神田さんが斧を抜く。戦闘になる。「硬化呪文頼む!」言われてうちは息子さんと盗賊さんに硬化呪文をかける。びちびちのタイツのおっさんを前にして息子さんがばっきばきに硬化する。大事なことやからもう一回言うてみる。半裸のおっさんを前にして息子さんがばっきばきに硬化した。盗賊さんも硬化した。ばっきばきに。

「あとは防御してろ!」

「は、はい」

 言われんでも縮こまっとく。神田さんが思いっきり振りかぶって斧を振り下ろす。戦士さんが鎧で受ける。血が飛び散る。傷はやくくさで治るけど、めっちゃこわい。戦士さんも盗賊さんも何回も死にかける。神田さんごっつ強い。でもあっちこっちから盗んできた装備品と盗んできたものを売り払って得た装備品の力で強化したうちらもそれなりに強い。しばらく続いた盗賊団対盗賊団の戦いは、事前にやくくさをしっかり準備してきたうちらに軍配が上がった。神田さんの手下がリタイヤしていく中で、うちらはやくくさを使いまくって粘りに粘った。

 息子さんの鞭が神田さんの(硬化呪文)に当たって、神田さんは悶絶して崩れ落ちた。

 そんな恰好してるからあかんねやと思う。

 うちらはリア充を助けだした。街に戻ったら、助けた男が胡椒屋さんで黒胡椒をくれるいう。息子さんが受け取る。……あっちの国やと胡椒の一粒、黄金の粒いうとった。うちらは一袋もろた。これをキメイラの翼であっちの国に運ぶだけで、なんぼになるんやろか。うちら別に冒険なんかせんでも遊んで暮らせるんちゃうん?

「おい、いくぞ」

「あ、はい」

 打算効かしたうちとちごうて、息子さんたちはそういうことは考えへんかったらしい。

 息子さんたちよりうちのが腹黒い説、あるかもしれん。



 うちらはあの港の近くの胡椒欲しがってる王様のところまで戻る。

「どうせダメじゃったろ?」

 て言われて、うちは盗賊団息子さん一派なめんなおもう。

 胡椒あげたら王様は感激してご褒美に船をくれた。物の価値のわからん人が王様やとこの国の人も大変やろなてうちは同情する。うちらは船乗ってこの国を離れる。達者でくらせよ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る