第5話 おうちかえりたい


 もういやや。あつい。こわい。さみしい。しんどい。

 うちはたった一人で砂漠を走ってる。魔物から逃げてる。棺桶三つ担いで。うちらは緑色のカニに襲われた。逃げ損ねて先ず盗賊さんが死んだ。次に戦士さんが死んだ。どうにか逃げ切ったけど、次に空飛んでる猫に襲われた。突然のことやった。空から降ってきた猫が息子さんの頭しばいた。息子さんが西のピラミッド行けいうて、「東の西から西の東へ。西の西から東の東」言い遺してもう一匹の猫に襲われて死んだ。あと「宝箱は絶対開けるな」とも言うてた。なにいうてるんか全然わからへん。今際の際にそんなこと言い遺そうと思う考え方もこわい。嫌や。もうやめたい。うち帰りたい。なんでこんな旅出てきてしもうたんやろ。田舎でよかったやん。ちょっと魔法使えたからていうて、欲張ったから変なことに巻き込まれてこんな目にあってるんやん。平凡な一生て貴いことやん。うちは愚痴りながら歩くけど、あたりまえに棺桶三つは返事してくれへん。せつない。うちはずるずる泣きながらピラミッドに突撃していく。

 さいわいなかにもあんまり魔物おらへん。生き顰めて歩いて行ったらどうにかなる。道は勘に頼るしかない。進んでいったら分かれ道の先でボタン見つける。うちはピンとくる。こっちは東側のはずやから東の東はこの位置のことで。

あれ? 東てどっちやろ? 建物の中歩いてきたから方角わからんようになってもた。

 ここ窓ないから太陽も見えへんし。

 ……まあええわ。

 適当押した。扉開いた。うち、天才。

 魔法のカギみっけた。勝った。

 テンション上がっていいつけ破って、最上階の手前にあった宝箱だけ開けてみた。

 なんかごっつ派手な服見つけた。売ったらお金なるやろかこれ。

 あはははははは。

 あかん、棺桶の重さとかで魔物の怖さとかで頭バカなってる。

 さっさと近くの街いこ。

 みんなの顔見たい。

 また涙でてきた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る