第45話 デューク、魔導具を購入する

それから2、3日過ぎた頃、久しぶりにロキが顔を出した。どうやら冒険者ギルドから逃げ出して来たらしい。


「あああ!!だリィ!!オレを何だと思ってやがるんだ!」


「まあまあ…折角入れてくれた紅茶ですから、これでも飲んで落ち着きましょう」


「嫌がらせにも程があるぜ!ったく!…あっ、この紅茶美味いねぇ~」


「恐縮で御座います…」


「ボクも『白猫』から何も言ってこないのでずっとメタとザグス様の修行を見てるだけで…」


「相変わらずメタの覚えが悪いのか?」


「スキルの相性じゃないかってザグス様は言ってました。後で移譲された【古竜の硬鱗】というスキルは他のスキルと統合して【古竜の守護鱗】ってスキルに進化して自分のモノにしましたから…」


「おいおい、それ聞いてないぜ…またスキル貰ったのか?」


「はい、後ドラゴンブレスを…」


「…もう、いっその事ドラゴンにして貰ったら良いんじゃねえか??」


「ほう!それも面白いかもしれんのう!!」

と、中庭から入って来たザグスが笑いながら言った。


『あ~やっぱりロキがきてるの』


「よぉ!メタ!またスキル貰ったってな!もうドラゴンになるか?アハハハ!!」


『メタはドラゴンいやなの』


「何でじゃ??ドラゴンなら空も飛べるし強いのじゃぞ!!」


『かっこわるいの』


「「「エエエエエ!!」」」


どうやらメタの感覚ではドラゴンの姿は格好良く無いらしい。ロキは大笑いしていたが、ザグスはちょっとガックリした様に見える。


「ところでいつ頃までここに居るんだ?」


「一応、ギルマスからの謹慎期間が百日ですから…」


「その割には迷宮に行かせたりしてんじゃねぇか?」


「まあまあ、アレは緊急事態ですからね」


「しかし、ヒマだな。何処か出掛けるか?」


「ロキ様はヒマじゃ無いですよね…」


『あるじ〜どこかいくの?メタもいきたいの』


「おお、メタは何処か行きたいよな?」


「メタは修行中でしょ!!」


『ううう…あるじきびしいの…』


「そんな事言わないで出掛ければ良いじゃねぇか。なあ、メタ?」


『…あるじがだめっていうの…』


「ザグス様が修行に付き合ってくれてるんだからね!」


「まあまあ、タマには息抜きも良いじゃろう。メタは出掛けたいんじゃろ?」


(ザグス様…完全に孫にせがまれたお祖父ちゃんになってますよ…)


『あるじ〜』


「う〜ん…仕方無いなぁ…じゃあ出掛けるか」


『わ〜い!メタおでかけするの』


「良し!決まったな!何処か出掛けようぜ!!」


「いや、ロキ様はお仕事有りますよね?…」


「細かい事は気にすんな!アハハハ!!」


結局ロキに押し切られたデュークはメタとザグスと4人で王都の散策に出掛ける事になったのである。



王都ギガンティアは王宮を中心として周りを堀に囲まれ、その周りには貴族の住居や騎士団の駐在エリアが在り、その周りが城壁で囲まれている。そしてその外側に庶民のエリアあり城下町が広がっている。

城下町には東西南北に街が分かれており、「北街」や「南街」などと言われそれぞれに特徴のある街が形成されている。

「北街」エリアは所謂『山の手』地区で高級住宅街になっており金持ちが多い。

対する「南街」は『下町』であり庶民の街でスラム街も此処にある。

「東街」は商工施設が多くて商店街や市場、工業施設などがあり、商業ギルドもこの地区にある。

「西街」は歓楽街で宿泊施設も有り、冒険者ギルドや『白猫』ギルドもこの地区にある。

デューク達は「東街」の商店街を回る事にした。


「いやぁ〜大きな商店街ですねぇ…ローナイトでも凄いと思ってたのに、桁違いの大きさですね…」


「まあ、王都だからな。人も多いから当然こうなるわな」


「これだけ居て良く息がつまらんのう…全く人間の考えてる事は良く分らんわい…」


『ひとがいっぱいなの』


しばらく歩いていると大きな魔導具の店があった。魔導具は高価な物が多いが便利な物が多い。魔導具には魔力を使って動かす物と、魔力無しで魔石等を使って動かす物がある。この店では生活必需品から兵器までかなりの魔導具が置いてあった。


「いらっしゃいませ。1階は生活必需品で2階は兵器類の取り扱いで御座います。ごゆっくりとご覧になって下さいませ」


「何か欲しい物でもあるのか?」


「そうですね…メタと二人でダンジョンだと松明使ってるのですけど、魔導具で何か良いが有ればなぁって。ボクは魔法が使えないから…」


「それならばコチラにどうぞ」

店員は2階に案内する。ダンジョンと聞いてコチラに連れて来たのだろう。


「コレが『ライト』の魔法の魔導具です。魔石を使うタイプで耐久性が有るのに軽くて小さいので人気商品ですよ」


「この眼鏡みたいなのは何ですか?」


「おお、お目が高い!コチラは新作の夜目が利く様に『ダークアイ』の魔法がかかる魔導具です。灯りでは無いので相手に気付かれずに接近出来ますよ!」


「へぇ~凄いなぁ。いくら位なんですか?」


「1000万Gですが950万Gまでは値引きしますよ!!」


「950万!!高っ!!」


「オススメですけどねぇ…先程の物でしたら40万Gになります」


「40万…それもそれで結構お高いですね…」


「耐久性があるのと小型化してますので…そちらの方ですと耐久性は有りますが大きくて多少重いですね。持ち歩きには軽い方が良いかと…」


「デュークなら軽い方が良いんじゃねえか?『白猫』だと力が無いからよ」


「あ~『白猫』の方でしたか!なら小さい方が宜しいかと。何年か前に『白猫』のテイマーの女性が大きい方を購入されたのてすが、1年程前にまた買い直しに来られましてね、何でも重過ぎるとの事で軽い方を購入されてましたね」


「えっ、テイマー?レイナさんかな??」


「確か表に赤いジャガーの魔獣を待たせてまして…」


「コレ買いますっ!!」


「あ、ありかとうございます。コチラへどうぞ」


デュークは『白猫』のギルド証を見せて購入した。『白猫』のギルド証にはギルドに貯めてあるお金を使う事の出来るカード決済機能か付いている。大きいお店ではそれを使う事が出来るのだ。デュークは例のエリクポーションのお金がギルドの口座に振り込まれる。最初の権利金が既に振り込まれているので問題無く購入出来るのだ。


「有難う御座いました。今後とも御贔屓下さいませ」

店員はホクホク顔で丁寧な挨拶をした。


「レイナが買ったって分かった途端購入決めてたな。そんなにお揃いが良かったか?」


「し、師匠が買ったなら間違い無しですからね!!」


(チョロすぎる!!)


『あるじ、うれしそうなの』


「レイナとお揃いで嬉しいんだぜ。間違いねえよ…」


ロキの言葉も耳に入らずレイナとお揃いの魔導具を大事そうに【キューブ】に仕舞い込むデュークであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る