第42話 デューク、王都に戻る

「ところであの紋様は何なんだ?何時付けられたんだ?」

ロキはザグスが迷宮内で浮かび上がらせたあの左手の甲の紋様について聞いたのだ。


「ああ、アレはなリピトがお前を眷族にした証じゃよ」


「はぁ?じゃあオレはリピトの眷族に勝手にされたって事かよ!?」


「まあ、お前が許可してないならそう言う事じゃな。多分眷族にされた時に、お前は瀕死とかの状態で何かしらの力を得てる筈じゃがのう」

それを聞いてロキは納得した。眷族になった事で『時の沈黙』は発動してロキはリピトに生かされたのだと。


「リピトが眷族にしたという事は余程お主を気に入ったのだろうのう」


『メタにもしるしないの?』


「おまえにも有るぞ。ホレ…」

メタの頭の所にロキとちょっと違う紋章が赤く光っている。


「良いじゃねーかメタ。何かオレと兄弟っぽくてよ?アハハハ!」


『う〜ん…メタにみえないの…』


「あっ、鏡出すよ。ちょっと待ってて…」

デュークは【キューブ】から鏡を取り出してメタの姿を写してやる。


『あるじ〜へんなのがうつってるの』


「えっ?何かな?」

とデュークが覗き込むと鏡にはちゃんとメタが写っている。


「メタちゃんと写ってるよ…あっ!そうか、メタ進化してから鏡見てないのか!」

はぐれメタル系に進化してからメタは自分の姿を見てなかったのである。


『う〜ん…へんなの…』

どうやらこの姿に慣れるまで少しだけ時間が掛かりそうである。





王都に近づくにつれロキが落ち着かなくなって来た。何かしら考え込んだり頭を抱えたりと忙しない。


『ロキどうしたの?』


「ああ…王都に戻ってからの事を考えるとよぉ…あ〜憂鬱だ」


「そんなにイヤな仕事なんですか?」


「中堅のギルドメンバーの教育とかオレには向いてねえんだよ…」


「教えるのは大変だからのう…」


『ザグスじいはしっかりおしえるの』


「メタは覚えが悪いからのう…」

中々上手く行かないのでザグスも気弱になってる様だ。


「大体よお…剣士だ武闘家だの肉体派に魔術師のオレが何を教えるっつうの…」


「それは酷い…」


「だろ?だが今回はギルドの総長から直々のお達しでね…やらないならギルド証剥奪だとか物騒な事言ってやがるからさ」


「そこ迄って…何かやったんですか?」


「例の【ディスティニー】の件とか…まあ色々だ」


「まさか…ゼノさんから報告されたとか?」


「まあな。だから困ってんのさ」


「…不憫過ぎる…」




王都に着くと先ずは『白猫』の本部に報告と言う事になった。

シリウスからの報告を受けて今回の捜索隊の任務は完了となった。シリウスはそのまま冒険者ギルドに報告に向かった。


「イレイザ、良く帰って来た。本当に無事で良かった」


「総長…ご心配お掛けして申し訳御座いませんでした」


「後で事情は聞かせてもらうが、とにかく此方で用意した宿でゆっくり休むと良い」


「有難う御座います…」

そのままイレイザはギルド職員と共に指定の宿に向かい数日間は休む事になった。


「レイナ、本当にご苦労様。良く探し出して救出してくれた…感謝しかない」


「止めて下さいよ…そんな他人行儀…可愛いアタシの弟子ですから」


「本当に有り難う…ロキとデュークにも感謝するよ。良くあの【終焉のザグス】を御してくれた」


「正直まぐれです…メタに感謝ですね…」


「まあ、俺のお陰だけどな。作戦勝ちよ」


「アレって…作戦だったんですか?」


「当たり前だろ。アレくらい言わせなきゃ聞きゃしないって。それよりもデュークの方が大したもんだったな。アレこそ作戦か?」


「作戦な訳ないですよ…どうにかしなきゃってもう必死でしたよ」


「シリウスの報告だと【終焉のザグス】はそのまま消えたとあるけど?」

シリウスは流石に何も言えないので知らぬ存ぜぬを通した様である。


「…いやぁ…それがよぉ…」

ロキも流石に言い難そうにしていて、レイナは遠い目をして知らん顔をしている。


「い、今、王都の外で…メタにスキルの手解きをしてもらってまして…」


「…アハハハ…何言ってるかサッパリ分からないんだけど…」

この後パトリック総長に説明するの に小一時間掛かってしまい、次第に総長が真っ青な顔になって行くのを目撃する事になる。




『エイッなのっ!!』

ポン!!とメタの大きさが二周り程大きくなった。


「う〜ん…今日はここまでじゃのう…」


『ううう…とってもつかれたの…』


「それはこちらのセリフじゃぞ…」


『あっ、あるじがやってくるの』


「おっ、話しは済んだのかのう…」


「ザグスさん、どうですか?」

デュークは手を振りながら聞いた。レイナとロキとパトリックが一緒に付いて来ている。


「う〜ん…まだまだじゃのう…他にも教えたいスキルも有るのじゃがのう…」


「そうですか…取り敢えず今日はどうします?」


「そうじゃのう…久しぶりに人間の作る飯でも食おうかのう…」


「ザグス殿で宜しいか?私はデュークの所属する『白猫』ギルドの総長パトリックど申します。この度はメタの師匠を引き受けて頂いたそうで…」


「まあ、眷族にしたからのう。教育位はしてやらんとのう」


「その…王都でその…正体が判りますとかなり…」


「ん、安心しろ。正体がバレるようなヘマはせんわい。ワシも何処ででも暴れる訳ではないぞ。其処らの野良ドラゴンと一緒にするな」


「そうですか…それならば我々が用意する屋敷にお泊り下さい。そこならば心置きなくメタに手解き出来るでしょう」


「左様か。ならばそうしようかのう…」


『ザグスじいとおとまりなの』


「良かったね、メタ。コレでちゃんと教えてもらえるね」


喜んでいるデュークとメタを尻目にロキは苦笑いし、レイナは頭を抱え、パトリックは笑いが引き攣っているのであった。

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