第40話 デューク、古の竜と対峙する(中編)

「よし、良く言ったぞメタ」

ロキは満足そうな笑みを浮かべて言った。


『…我を起こす愚か者は…誰じゃ?』

ムクリと頭を起こした【終焉のザグス】が念話を放つ。


『メタなの。じゃまだからジジィドラゴンはどくの』

メタは瞬間に【終焉のザグス】の鼻の上に移動して念話を放った。


『ん?はぐれメタルの小童が…舐めるな!!』

【終焉のザグス】はそう言うと『竜の威圧』を放った。が、メタは平気な顔でぴょんぴょん飛び跳ねている。【終焉のザグス】はそれを見て(ほう…これは彼奴の言ってた…)と少しだけ関心を持った。『竜の威圧』はエンシェントドラゴンが相手の力量を試す為に使用する。耐え切れないのは等しく雑魚、耐えられた者はそれ相応のレベルを持つと判断される。【終焉のザグス】はメタ達を『竜眼』を使いステータスを見る。中々面白い進化をしているのと、レアなスキルを獲得している事に興味を引かれた。そしてその『相棒』の能力も。


『ジジィドラゴンははやくどくの』


『ふん!何でお前如き小童の戯言を我が聞かなければならんのじゃ』


「あの…エンシェントドラゴンは神にも引けを取らない力が有ると聞きます。ならば身体を小さくする事も自由自在に出来ると思うのですが…」

と、デュークは言った。


『おおきさかわるの?ジジィドラゴンはやくみせるの』


『何故我がそんなこ…』


「あっ!出来ないなら良いんですが」


『誰が出来ないと言ったのだ!!その位は簡単に出来るわ!!』


『はやくみせるの!』


『だがら何故お前等如きにみ…』


「やっぱり出来ないなら仕方無いですから…」


『やかましいわ!!出来ると言っておろうが!!その目でよーく見るが良い!!』

言うな否や【終焉のザグス】は身体を一気に小さくさせ、ほぼ人間と同じくらいになってしまった。その好機をロキとレイナ達は見逃さない。そのまま一気にイレイザのいる方に走りたした。

一方のメタは小さくなったのを見て大喜びしている。


『ジジィドラゴンすごいの!メタにもおしえるの』


『ふん!貴様はスキルを持って居ないでわないか。無理じゃな!』


「メタ、例えあのエンシェントドラゴンでも出来ない事が有るんだよ。神様じゃ無いからね」


『たいしたことないの』


『戯け!!やろうと思えばやれるわ!!』


『ならはやくするの』


『ムムム…この小童共め…ならば我が眷族になれば出来なくは無いぞ』


『メタはあるじのものなの』


『別に眷族になるのには関係は無い。我と家族になる様なものだからな。では始めるぞ!!』

完全にデュークとメタのペースにハマッた【終焉のザグス】はメタをあっさりと自分の眷族にしてしまった。そしてスキル移譲により《スキル 伸縮自在(低級)》を獲得する事になる。


『どうじゃ!出来たであろう?』


『わ〜い。メタもおおきくなるの』


『試してみよ』


『エイッなの!!』

するとポン!とメタの大きさがひと回り程大きくなった。


『…まだちいさいの…』


『修行せい…』


『でもザグスじい、ありがとうなの』


『じい…』


「メタ、ザグス様でしょ」


『かぞくなの。さまづけはへんなの』


((…意外と正論!!))


『それと…人間、お前も面白い能力を持っておるのう』


「えっ?ボクが…ですか?」


『気付いてはおらぬか…お前には『幸運の加護』が与えられておる』


「『幸運の加護』…」


『幸運の女神が人間に加護を与えるのは200年に一人とかの割合じゃ。もしかするとそのうち幸運の女神に会う事もあるかも知れんのう』


「何故ボクにそんな加護が…」


『さあな…会えた時にでも聞くと良い』

デュークはザグスは何か知ってると直感したが『会う事もある』と言った事に意味があると思い、あえてザグスにはこれ以上聞かなかった。



一方、レイナ達三人と1匹は一気に加速してイレイザ救出に向かっていた。予めロキが『スピード』の魔法を掛けていたのである。


「ロキ様、メタに言わせたのは計画的ですか?」


「あ、ああ。も、勿論だ」


((絶対違う!!))


「それにしてもメタとデュークは大丈夫かしら…」


「あの二人なら大丈夫だ。師匠が信じないでどうする」


「…そうですね…」


「さて、メインディッシュが居たぞ」

ロキが言ったその目の前にケルベロス《ナイトメア》が居たのである。ケルベロスの中でも最上位の強さを持つ個体である。だがロキはそんな恐ろしい魔獣を前に全く臆してはいない。


「楽しみたいのだがな…時間が惜しいので一気に決めさせてもらうぞ。悪いな《ナイトメア》!!」


「時空魔法『時の沈黙』…」

ロキが魔法を掛けるとロキ以外全ての時間が止まる。そしてケルベロスに『時空斬り』を叩き込む。ケルベロスは真っ二つに切り裂かれていた。そして時が動き出す。

レイナとシリウスは何が起こったのか最初は分からなかった。気付くと目の前のケルベロスが真っ二つになっていたのだ。


「行くぞ!」

ロキの声で直ぐに動き出す。

そしてその奥にイレイザを介抱する様にユニコーンの「ユニ」が座って居たのである。


「イレイザ!!ユニ!!」

レイナの声にユニが応えた。レイナはデュークから受け取っていたエリクポーションをイレイザに飲ませる。イレイザは足に大きな傷を負っていたがエリクポーションの効果で傷口も塞がり血の巡りも回復してゆく。


「…レイナ様…どうして…?」


「イレイザ、探したんだよ…やっと見つけた」


「話は後だ、デュークの所に戻るぞ」

ロキはイレイザとユニにも『スピード』の魔法を掛けて直ぐにデュークの元に引き返したのである。



ロキ達は唖然としていた。

急いでも取ると其処には小さくなった【終焉のザグス】がメタに何かを懸命に教えており、その後ろで微笑みながらそれを見守っているデュークの姿を見たからである。


「あっ、レイナさん!イレイザさん無事だった様ですね!」


「デューク…一体其れは…」


「ああ、メタがザグス様の眷族になってスキル移譲して貰ったので、いま修行中です」


『あっ!レイナさんとロキが帰ってきたの』


『コレッ!!メタ!!集中せんか!!』


『ザグスじいはきびしいの…』


「イレイザさんですね!初めまして!レイナさんの弟子のデュークです!!」


「い、イレイザだ。宜しくデューク…」


「デューク…お前等は相変わらず斜め上行くな…」

ロキが呆れながら言う。


「不肖の弟子でスミマセン…」

レイナは遠い目をしながらこう言うのが精一杯だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る