第39話 デューク、古の竜と対峙する(前編)
ロキの魔法により加速している馬車なのだが走ってる間にロキはマナポーションを使わなかった。デュークが見てない時に使ったのかと聞いてみるとロキは涼しい顔でこう言った。
「ああ、この魔法は大した魔力は要らないから使う必要が無いな」
恐らく使う魔力はソコソコ必要な筈だが自身の魔力量が桁外れに高い為気にならないのだろう。
やはりこの人は規格外なのだとデュークは改めて認識したのだった。
馬を休憩させながらだったが、3日目に迷宮【ダイダロス】が見えて来た。
迷宮【ダイダロス】は階層も5階建てになっており、南の迷宮群の中で最大の迷宮である。通常、迷宮は3階から5階建てであり、上に登ってゆくのがダンジョンとの違いである。中は迷路の様に魔法陣や隠し部屋が満載で魔獣のレベルも格段に高い。レアな魔導具や武具も有るのでSS級以上の冒険者はパーティを組んで挑戦するのである。
入り口に向かうと横に建物がある。これが迷宮の駐在所であり迷宮の出入りなどを管理しているのでレベルの低い冒険者は立ち入る事は出来ない。
この建物の横には大きい宿屋も併設されており道具屋や武具屋まで営業している。品揃えも良く高級品ばかりである。基本的にSS級以上の冒険者しか来ないので無駄な低級品は置かないのである。
「さて、何処に居るのかな…迷宮の中かな…」
そう言ってた矢先に宿から凄い勢いで飛び出して来た魔獣がデュークに飛びついてくる。
「ガオ!!久しぶりだね!!」
『わあ!ガオなの!』
ガオは嬉しそうに二人を舐めたり頭を擦り付けている。
「どう見ても襲われてるようにしか見えんな…」
ロキが苦笑してると宿から何人か出てきた。
「デューク!?どうして此処に!?」
レイナが呆然として立っていた。
「レイナさん!!お久しぶりです!」
『わあ!レイナさんなの』
喜ぶデュークの横で喋って来たメタを見てレイナが言った。
「アンタ…メタなの?何で喋ってるの?…」
とレイナが更に混乱したのであった。
一方、調査隊『花鳥風月』のリーダーでSS級大賢者のシリウスが驚愕の表情でこう言った。
「ロ、ロキ様…何故此処に…」
「おう、久しぶりだなシリウス。【終焉のザグス】の事を聞いてな、駆け付けたって訳さ」
「そ、そうか…冒険者ギルド本部が動いてくれたのですね!助かった!」
「お、おう、まあな」
まさかギルド本部から逃げ出して来たとは言えないロキである。
「とにかく宿で話を聞こう。時間も惜しいしな。デューク、メタ、行くぞ」
「はい!分かりました!」
「おい、デューク…今シリウスさんがロキ様って言ってたよな?もしかして『時の覇王』のロキ様?」
「ええ、そうですよ!何時もお世話になってまして…」
「ウソでしょ…超大物じゃないの…」
『ロキはね、ペインさんの弟なの』
「へぇっ??な、な、何でペ、ペインさんの名前が出てくんのよ!」
「本当なんです。本人から聞きましたから」
「…アンタ、アタシと離れてからどうなってんのよ…何か頭痛いわ…」
頭を抱えてるレイナにデュークとガオが寄り添いながら宿に戻るのであった。
「ほう、ではパトリック総長はこのメタに話し掛けさせて反応を見る事とロキ様の魔法で【終焉のザグス】を止めるの二通りの案を出したと」
「オレが出るのは最後の最後。【黄昏のリピト】には効いたが【終焉のザグス】には魔法が効くか分からんからな」
「確かに…相手は三厄竜…取り敢えずメタに話させましょう」
『メタがはなしするの?』
「そうだよ。エンシェントドラゴンに話しかけるんだよ。良いね?」
『えんしぇ…わからないの…』
「古いドラゴンだよ?分かる?」
『ふるいのわかったの。メタがおはなしするの』
「デューク、大丈夫なの?その…怒らせたりすると大変だよ」
「メタは話好きだし大丈夫だと思います!」
(う〜ん何となく分かってなさそうだな〜)
レイナはデュークとメタの感じが何処か牧歌的で心配だったのである。
「とにかく直ぐに出発しよう。可能性が有るなら何でもやろう」
リーダーのシリウスは早目の決着を考えていた。
迷宮【ダイダロス】の入り口には魔獣の門番が控えている。これを倒せない者は迷宮には入る事が出来ない。デュークとメタはここに来るのは初めてなので戦わなくてはならない。
「レイナさんの弟子ならこの程度の魔獣なら倒せると思うのだが…」
「デューク、行ける?」
「メタ、魔槍で」
メタは魔槍から一気に門番の魔獣を片付ける。
「おお、中々やるね」
シリウスは素直に褒める。
「メタ、中を調べよう」
デュークはメタの上に手を置くとそっと目を閉じた。迷宮の奥に途轍もない強さの魔獣を感じる。
(これが【終焉のザグス】か…イレイザさんは…)
迷宮の更に奥に魔獣と人間が一緒に居る気配がする人間は弱々しい感じ…怪我をしているのか?
「やっぱりドラゴンの所を通らないと奥に行けませんね。イレイザさんと思われる人が弱々しい感じです」
シリウスとレイナが驚いている。迷宮の感知は非常に難しく広範囲は更に難しいのだがメタとデュークの感知スキルはイレイザがいると思われる場所まで感知したのだ。
「それじゃあ行くか。魔獣は俺に任せとけ」
ロキが話をしながらもどんどん魔獣を倒してゆく。まるで散歩でもする様に迷宮を歩いて居るのだ。
(流石は『時の覇王』レベルが違い過ぎる)
シリウスは驚いていた。顔は知っているが一緒に魔獣を倒したことが無かったのでここまでレベルの差が有るとは思っていなかったのである。また的確に罠や魔獣の位置をロキに話しながら歩いているデュークもタダ事では無い。レイナはガオに乗りながらデュークの一挙手一投足を見ていた。
【終焉のザグス】が寝ている場所に着くと其処に寝ていたドラゴンの大きさが半端無い。
「これがエンシェントドラゴンかあ…デカイなあ」
「これが暴れるんだからなホントにやばい」
ロキはそう言いながらメタを呼んで何事か耳打ちしている。
「メタ!そろそろ始めるよ」
『あるじ〜りょうかいなの』
そしてメタはかなりの大きな念話でこう言ったのだ。
『やい!ジジィドラゴン!はやくおきるの!メタとおはなしするの!』
デュークは血の気が引いている。レイナは頭を抱えてる。シリウスは空いた口が塞がらない。
一人だけヨシヨシと腕を組みながら見ていたのはメタに叫ばせた張本人のロキである。
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