第38話 デューク、迷宮に向かう
鑑定の結果を見て流石のパトリックも驚かざるおえない。
メタ自体のレベルが大きいダンジョン下層のフロアボス級であり、テイマーとしてのデュークのレベルもS級の冒険者並みの実力になってしまっている。
コレの原因はメタの『はぐれメタル』化による防御力と素早さの大幅な能力値の上昇に他ならない。最早デュークは『白猫』のダンジョンテイマーとして完全にオーバースペックてあり、超一流の冒険者として活躍出来るレベルなのだ。
「デューク、君の能力は間違い無くS級の冒険者としてやっていけるレベルだ。もし君が望むのであれば『白猫』を抜けてᏚ級冒険者として完全移籍する事も可能だ。君はどうしたいかな?」
パトリックは包み隠さずにデュークに問うた。デュークの意志を尊重すべきとの判断からである。
「…『白猫』でやってはいけないでしょうか?」
「デュークが居てくれるなら『白猫』としては大変にありがたいし大助かりなのだが…」
「それなら『白猫』で!!お願いします!」
「本当に良いのかい?冒険者としての名声も手に入るんだぞ?」
「ボクは『白猫』になるのが夢でしたから!冒険者になる事じゃありません!」
「よし、分かった。じゃあこれからも頑張ってくれ」
「はい!よろしくお願いします!」
デュークの意志を聞きパトリックは本題に入る。
「で、デュークに向って欲しい場所がある」
「何処でしょうか?」
「南の迷宮群の一つ…迷宮【ダイダロス】だ」
「迷宮?…まさか…」
「うむ、実は数日前にイレイザ捜索隊から連絡が入ってな、【ダイダロス】にイレイザの反応が有ったそうだ」
しかしパトリックは苦虫を噛み潰した様な表情で更に続ける。
「捜索隊は迷宮に入りイレイザ救出に向かったのだが…とある大問題か起きた」
「正直信じられんのだが…報告によると迷宮内にエンシェントドラゴンの1体【終焉のザグス】が出現したらしいのだ」
『ラグレシオン』にはエンシェントドラゴンが三体棲息している。
【破滅のレジア】、【黄昏のリピト】、【終焉のザグス】の三体は『災禍の三厄竜』と呼ばれ、文明が滅ぶ時に必ず現れて「世界を壊す」と言われている。神々と同等の力を持つと言われているまさしく『最強のドラゴン』である。この竜の逆鱗に触れる事は世界の破滅を意味する。
「何でそんな怪物が…」
「全く分からん…ただ調査隊に『我こそは古の竜【終焉のザグス】我の眠りを妨げる者には大いなる災いが訪れよう…去れ!』と念話を送ってきたらしい」
「なんて事だ…それでボクは何を?」
「その後話し掛けても反応が全く無いらしい…其処でダメ元なのだが…メタに念話でコミュニケーションを取れないかと思ってな」
「メタにですか?」
『メタおはなしするの?』
「すまん…しかし、方法が無いのだ…相手は【終焉のザグス】だ。力で押し通せるものでは無い。下手をするとこのまま諦める事も考えねばならん…イレイザ一人の為に世界を危険に晒す訳にも出来ないからな…」
すると、部屋の扉が開けられ、その先にいた男がこう言った。
「もう一つ方法が有るかもな」
「お、お前…いつの間に…」
「デューク、久々だな。王都にやって来たら顔を出せと言ったはずだぞ」
「ロ、ロキ様…」
『ロキひさしぶりなの』
「よう、メタも久しぶりだな」
とロキが突然現れた。
「俺が時を止めてる隙に…ってのはどうだ?」
「そうか!その手があったか!」
『ロキあたまいいの』
「だろ?メタはよ〜く分かってんなぁ」
「しかし…お前は冒険者ギルドで…」
「それどころじゃねーだろ!パトリックから冒険者ギルド本部に『緊急事態だから』って連絡しといてな!」
「…どうも『渡りに舟』みたいな感じしかしないのだが…」
「さあ、デューク、メタ、迷宮【ダイダロス】に行くぞ!!善は急げだからな!」
「はい!!」
パトリックは上手く使われた様な気がしてならないが、他に手が無いのでその案に乗る事にした。
一方のロキは飽き飽きしていたギルドの仕事から逃げ出す口実が出来て『してやったり』の状況である。
結局、デュークが王都居たのは半日くらいである。何せロキが早く早くと急き立ててパトリックが冒険者ギルド本部に連絡した時には既に王都を離れた後だったのだ。
「いやぁ、デューク助かったぜ。マジで飽き飽きしてたんだ」
「はぁ…でも大丈夫だったんですか?」
「良いの良いの、どうせ大した仕事じゃ無いし…それよりもエンシェントドラゴンだろ?中々見れないぜ」
ロキはギルドから逃れられて安心している様だった。
「エンシェントドラゴンにロキ様の魔法が効くのですか??」
「う〜ん…微妙かな…」
「えええええ!!」
「前にエンシェントドラゴン【黄昏のリピト】とやった時には時は止められた。だから生き延びてるんだが…」
「やったって…戦ったんてすか??」
「まあ、若気の至りってヤツよ…殺されかけたけどな」
今は馬車で移動中である。ロキの「スピード」の魔法で我々の時間は速くなっている。その為に他の人や動いている物がスローモーションに見える。でも実際は我々の動きが速すぎて他の人には見えて居ないらしい。
「あの…エンシェントドラゴンはそれほど強いのでしょうか?」
「強いとかってレベルじゃなくてな…そうだな…『死』そのものって感じだな。目を合わせた瞬間『あっ、オレ死んだな…』みたいな」
「…良く生き残りましたね…」
「生き残ろうと強く思った時にタマタマ発動した魔法で何とか逃げ切れた」
「強運ですね…」
「今思うと逃してくれたのかもな…恐らく気紛れでな」
「迷宮【ダイダロス】には行った事有るのですか?」
「ああ…最後に行ったのは5、6年前かな…
その時はエンシェントドラゴンは居なかった筈だが…」
「イレイザさんが居た事と何か関係が有るのかな…」
「さあな…だが、確か【ダークアウト】で消えたって言ってたよな?う〜ん…それなら…関係は無いと思うがな」
『ロキ、ドラゴンやっつけるの?』
「アレは無理。死ぬぞメタ」
『しぬのやなの…』
「じゃあ絶対怒らせるなよ」
「そう言えば…ロキ様に初めて会うって決まった時にギルマスに言われましたよ『怒らせたら死ぬから』って」
「アレスの野郎…何て事言いやがる…俺はそんなに凶暴じゃねえよ…」
「ところで…どの位で【ダイダロス】に着くのですか?」
「そうだなぁ〜後3、4日位かな…」
「そんなに早く…凄いですね…」
本来なら20日以上掛かる道程である。因みにデュークを助けにきた時もこの魔法を使って同じ様に馬車でやって来たらしい。
「とにかく急ごう。ドラゴンもそうだがイレイザがどうなってるかも気になるしな」
こうして、ロキとデュークは迷宮【ダイダロス】に向かう事となったのである。
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