第36話 デューク、メタと二人旅に出る(その伍)

『吟山亭』出たデュークは峠をゆっくりと下っていた。その先は難関と言われる樹海地域である。樹海地域は馬車で3日程抜ける迄掛かるのだが、魔獣に遭遇する可能性が非常に高い。その為に樹海の入口両方に宿場町があり、其処で樹海地域を抜けるまでの限定で専門冒険者を雇う人も多い。『白猫』のフィールド『ボックス』は専属が居るのでその冒険者に頼むのが通例だが、デュークはその必要は無い為にそのまま通過して行く。


樹海地域内では宿場町は2箇所でそこに泊まらないとPAで休むしかない。しかしリスクが大きく余程の高レベル冒険者じゃ無ければその様な事はしない。デュークも宿場町経由で行く予定で有る。



『あるじ、魔獣多いの』



「襲って来なければ放置してね」



デュークは無駄な戦闘は避けたかったがそれでも魔獣が湧いてきた。デュークとメタにとってはダンジョンより楽な相手なのでサクサク倒しては先に進む。



日の落ちる前には宿場町【トータス】に到着していた。此処も【ライチ】と変わらない宿しか無いので、厩だけ借りて馬車で野宿した。【キューブ】に『吟山亭』で作って貰った山賊焼きを夕飯用に2日分入れて有るので、パンとスープで豪華料理になった。



「メタ、この樹海を抜けたら王都まで2、3日で到着だよ」



『おうとたのしみなの』



「えっ?そうなの?」



『おうとにロキがいるの』



「あ~そういう事ね…ロキ様に会うの楽しみなんだ。僕もお礼言わなきゃだし」



こうして夜が更けてゆくのであった。




宿場町【トータス】を朝に出たデュークは樹海の中を走り続ける。しばらく走っていると強い魔獣の感知したので馬車を一旦停めた。



「結構強そうだね…さてどうするか…」



『メタがみてくるの』


と言うとメタがサッと消える。その素早さと気配の消し方は忍者並だ。しばらくするとメタが戻って来た。



『サイクロプスなの。よわっちいの』



「メタが言うなら大丈夫かな。やっつける?」



『やっつけるの』


と言うとまたもやメタはサッと消える。デュークはそのまま追いかける。すると結構大き目のサイクロプスがメタに猛攻を食らっていた。その素早さにサイクロプスは翻弄されて攻撃が当たらないのである。



「メタ!ブレスからの魔炎魔槍!!」



メタはファイヤーブレスをサイクロプスの顔面に吹き付けてから魔炎魔槍になってサイクロプスの胸を貫いた。サイクロプスはゆっくりと倒れる。



「やったね、メタ。ご苦労様」



『サイクロプスはあたまわるいの』



倒したサイクロプスを【キューブ】に仕舞ってからまた馬車で走って行く。


しばらく走ると商人らしきキャラバンがやって来る。先頭に居るのは樹海専任の冒険者である。



「サイクロプスの気配がしてたのだが、見ていないか?突然消えたので」


と流石は中々の感知能力である。



『メタがやっつけたの。よわっちいの』



「!!き、君のテイムの魔獣か?」



「あ、そうです。サイクロプスは倒したので大丈夫ですよ」



「そ、そうか。有難う」



「いえいえ、それでは失礼します」



冒険者達は呆気に取られている。デュークは愛想の良い挨拶をして走り去った。


その後、何度かの魔獣襲撃は有ったがメタによって全て血だるまにされた。



宿場町【タートル】に到着したのは日が出ている間である。この宿場町でも馬車で野宿である。此処【タートル】では魔峰による蜂蜜が名物でデュークも購入していた。魔峰は音の魔法で操る事が出来るので養蜂が可能なのだが、街場では危険なので出来る場所が限られる。【タートル】は樹海の中にある事から色々な条件が奇跡的に揃っており、古くから養蜂が盛んに行われている。隣の宿場町【トータス】で行われないのは魔草の数が足りない事が致命的な原因らしい。



「ハチミツ美味しいよ。メタも舐めてみる?」



『メタはませきがよいの』



「そっか〜甘いのになあ…」



相変わらずメタは鉱物類しか興味が無い様である。




翌日の朝はスピードアップして一気に樹海地域を抜ける事にする。途中何度かの魔獣襲撃が有るがサクサクと倒してゆく。樹海地域端に有る宿場町をパスしてようやく樹海を抜けて更に先に進んでゆく。


その先では2日程野宿をしてようやく王都が見えて来た。



「メタ!王都が見えてきたよ!やっぱり大きいなぁ〜」



『おうとおおきいの』



ゴールが見えてきた事で更に足取りも軽くなる。


こうして色々な出来事があったデュークとメタの初めての二人旅はやっと終わるのであった。



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