第35話 デューク、メタと二人旅に出る(その肆)
翌日、シモンと別れて再び街道をひた走る。森の真ん中を抜ける様に街道が走っているので魔獣の感知を大き目に張っている。
午前中は特に何も無く走っていたが、休憩後の午後に走っていると前方で戦闘を感知した。どうやら商人のキャラバンが襲われてる様だ。怪我人多数でヤバそうだ。
「メタ!先に行って!」
メタはフッと消える様に加速し、襲っていたゴブリンライダーを魔槍に変形して貫いた。
(ギャ!!)
襲っていたゴブリンの群れは突如として現れたメタに驚いている。メタは更にファイヤーブレスで2体のゴブリンソルジャーを焼きながら魔槍となって更に他のゴブリンソルジャーを貫いた。
「メタ!あのデカいのを狙って!」
追いついたデュークが停めた馬車を飛び降りて盾を構える。
メタは魔炎魔槍となり【エクストラスキル 神速】でゴブリンジェネラルを貫く。ボスが殺られたゴブリン達は逃げ出したが何匹かはメタのファイヤーブレスの餌食となった。
デュークは直ぐに怪我人の場所に行きエリポーションを与えて回った。
「冒険者の方かと…『白猫さん』でしたか。私は『カナラック商会』のハレーと申します。この度は助けて頂き誠にありがとう御座いました」
「ローナイト支部のデュークです。コッチは相棒のメタです」
「て、テイマーの方でしたか…コレは…『はぐれメタル』ですか?」
「はい。こないだ進化しましてね…」
『あいつらよわっちいの』
「メタ。ご挨拶して」
『メタなの』
「あ、ありがとうメタさん。助かったよ」
「ところで護衛の方達が居ない様ですが…」
「護衛の冒険者はこの先でゴブリンと戦闘になってます。私達を逃して戦ってくれてるのです」
「そうですか…」
デュークがその先を感知してみると冒険者らしき人達が此方に向って来ている。
「大丈夫そうですね、そろそろコッチに来ます」
「おーい!!無事か!!」
護衛の冒険者らしき人物が声をかける。
「これは…待ち伏せしてたのか!クソッ!」
「危うい所をコチラのデューク様に助けて頂きました」
「何と…『白猫さん』じゃないか…どうやって?」
『メタがかたづけたの。ごぶりんよわっちいの』
「あ、アンタ…メタルスライムのテイマーか?…デュークってローナイトの『白猫』のデュークかい?」
「はい。あの…何で名前を…」
「ローナイトの冒険者じゃ知らない奴は居ない有名人だと聞いたぜ」
「は?そ、そんな事は無いですよ…」
「アハハハ、照れるなって。俺はカーグンの冒険者でジムってもんだ。今回は助かったよ」
「カーグンですか!ランドウさん元気にされてますか?」
「へっ?ギルマスと知り合いかい??」
「ウチの師匠と2年以上前ですがお世話になったので…」
「そうだったのか。そりゃあ奇遇だなぁ〜」
それからしばらくジムと話をしてからゴブリンの亡骸を【キューブ】に突っ込んでいると、ハレーさんが是非にも礼がしたいと言い張ったのであるが、王都に急ぎで行くからと丁重にお断りした。
「デューク様、王都に行かれましたら『カナラック商会』に必ず顔をお出し下さい」
「はい、時間が有りましたら…」
「いやいや、是非に!!」
押しの強いハレーさんに圧倒される。
その後、デュークはハレー達と別れてそのままひた走る。その間にメタに魔石を与える。
『あるじ〜やどにおとまりするの?』
「そだね、メタも頑張ったし宿に泊まるか」
『おんせんなの?』
「温泉は…無いかな…」
メタはガッカリした様だった。メタはすっかり温泉好きになってしまった様子だ。
宿場町【ライチ】は森の中に有る町で木製の壁で囲まれた宿場町である。森での野宿は危険な為に造られた町であり、基本的に簡素で素泊まりの宿が多い。より多くの人を泊める為に考えられたやり方らしい。
「コレなら馬車の中でも同じだったなあ…」
『おんせんないの…』
メタもデュークもガッカリの宿だったのである。とにかく早く寝て翌日は早出する事にした。
翌日は早出をしたおかげで一気に森を抜けられた。そのまま先に進むと次は山越えのルートになる。山を越えてからが最大の難関の樹海地域なのだが、山越えも中々大変なルートである。
『やまはおっきいの』
「これを越えていくんだよ〜」
メタにとっては初めての山である。壮大な山ののゆ大きさにテンション高めである。馬車はゆっくりとした歩みで登ってゆく。途中で馬に休憩を与えながら登るので時間が掛かるのだ。
そんな感じなので峠の宿『吟山亭』についたのは大分暗くなってからだった。デュークは部屋が取れるか心配したが空き部屋があったのてホッはとした。
『吟山亭』は峠の頂上付近にある大きな敷地の宿である。此処の主人は元S級の有名な冒険者で、この山越えが大変な事に現役の頃から心を痛めていたらしく、引退後に仲間を引き連れてここの開拓をしたらしい。
この宿の名物は大きな露天風呂と魔獣料理である。温泉は出なかったのだが良質な鉱泉が出たのでそれを沸かし湯にした大きな露天風呂は人気なのである。
「ああ嗚呼ああああ…」
デュークは湯舟に浸かるとおっさんみたいな声を上げる。
『きもちよいの…』
メタも大好きな鉱泉で桶の中で溶けている。
主人はメタを見て『はぐれメタル』なのをたいそう驚き、温泉に入るのも快く許可してくれた。流石は元冒険者、テイマーには優しいのだ。
「メタ、お星様が綺麗だね〜」
『あるじ、おほしさまはおいしいの?』
「う〜ん…どうだろうね?…確か隕鉄って有るから食べてみる?手に入ればだけど」
『いんてつたべたいの』
露天風呂から上がると、次はお待ちかねの魔獣料理を堪能する。じっくりと熟成した魔獣の肉を山菜などで鍋にしたり、香辛料をまぶして焼いたりと丁寧で手間のかかる料理が盛り沢山だ。
「この香辛料何使ってるんだろう…ホント美味いなぁ」
「そりゃあ秘伝の粉だぞ。ガハハハ!」
ご主人が笑って話す。
「コレ、是非に土産で売って下さい!」
「ん??スパイスだけを土産でか?その発想は無かったな…」
「今まで居なかったんですか??」
「う〜ん…肉とセットでとかタダで欲しいとかレシピくれとかそんなんばっかりだぞ」
「絶対に名物になりますって」
「そうか?うむ…試しにやってみるか!」
その後、『吟山亭スパイス』と名付けられた商品が王都で空前のブームになるのはその後のお話である。
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