第34話 デューク、メタと二人旅に出る(その参)
宿場町【ルダ】の温泉宿『杜の小屋』で一泊したデュークとメタは朝風呂を堪能した後で朝食を取っていた。
宿だとパンの朝食が一般的なのだが『杜の小屋』では炊きたてご飯である。一夜干しの魚と特製玉子焼き、温泉玉子はオカワリ出来るとサービス満点だ。
『あるじ〜きょうもここにいたいの』
「う〜ん…もう一泊したいけど王都行かなきゃだからね…そだ!帰りに来れたら泊まろうね!」
『わ〜い、またおんせんはいれるの♪』
メタは此処の温泉がかなり気に入ったらしい。鉱泉の泉質がメタにはしっくり来た様だ。
「お世話になりました!」
「有難う御座いました。コレね、ウチの旦那からデュークさんにって」
と言うと女将さんが少し大き目の箱を手渡した。
「オムライス入ってるからお昼か夜に食べてね」
「えー!いいんてすか??」
「【キューブ】に入れときゃ熱々のまま食べれるからヨ!」
奥から大将が声をかける。
「有難う御座います!!また寄らせて貰います!」
「メタちゃんもまた来てね」
『あるじとまたくるの。おんせんはいるの』
こうしてデュークとメタは『杜の小屋』を出て王都への旅路についた。
昼間の内は途中休憩しながら、そのまま馬車を走らせる。日が完全に落ちたら其処で野宿となる。
PA以外での野宿は馬車の周りに結界用の杭を打ち、専用の縄で囲めば魔獣は近づかない。また、馬車自体にも魔獣避けの魔方陣が描かれているので大丈夫なのだ。
しかしながらデュークはテイマーなのでこの方法は使えない。何故なら魔獣であるメタが居る為である。馬車の魔方陣も外してある。ではどうするのか?と言うと…何もしない。メタは魔獣の中でもかなりレベルが高い。その為にメタに喧嘩を売って来る魔獣が居ないのである。
デュークは馬に牧草と水を与えると、焚き火をしながら『杜の小屋』特製のオムライスを食べる。
「スゲ〜美味い!やっぱりオムライス最高だよ」
『あるじがうれしいとメタもうれしいの』
「また『杜の小屋』に行こうね」
『おんせんはいるの』
二人共、昨夜の温泉宿の余韻に浸っていた。
翌日は宿場町を素通りしてそのままひた走る。この辺りからは周りが森になってくるので泊まる場所の予定を上手く立てていかなければならない。変に欲張って進むと夜中に魔獣と鉢合わせする可能性が有るからだ。
デューク達も馬が居るので無理は出来ない。PAや宿場町を利用しながら馬のストレスを少なくさせるのだ。
「そろそろ宿場町だなぁ〜宿空いてると良いのだけど…」
『おんせんなの』
「あーここら辺は温泉じゃないよ。ゴメンね」
『…がまんするの…』
「メタは良い子だね〜」
宿場町で宿を探したが、今日は何処も満室だった。仕方無いので広場で野宿する事にする。馬の世話をして食事をしていると、こちらにやって来る人が…
「おっ!居た居た。おーい!デューク!」
「あっ!シモンさん!お久しぶりです!」
シモンは『白猫』の先輩でローナイトー王都間を担当するフィールドの『ボックス』である。デュークと気が合う所があり、色々とフィールドワークを教わったりしている。
「やっぱりこの町か。予想通りだな」
「ボクを探してたんですか?取り敢えずココどうぞ」
「おう。依頼じゃ無いがちょいと大物に言伝を頼まれてな」
「えっ?大物って…総長ですか?」
「イヤイヤ、ロキ様だよ」
「ロキさんが??一体何でしょう??」
「今な王都の冒険者ギルド本部で捕まって色々やらされてるらしい」
「やらされてる…」
「それでな…しばらく居るから顔出せってさ」
「へっ?それだけ??」
「相当ストレス溜まってるみたいだな。総長にデュークが来ると聞いて良い暇つぶし相手になると思ったんじゃないか?」
とシモンは笑いながらデュークの肩を叩く。
「泣く子も黙る『時の覇王』直々の御指名だぞ。会いに行ってやれ」
「は、はい…了解しました…」
『ロキにあえるのうれしいの』
「おっ!メタかよ?また随分と姿が変わっちまったな…」
こうしてデュークは王都でロキに会う事になったのだが、コレもまた新たなる物語の布石となるのであった。
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