第33話 デューク、メタと二人旅に出る(その弐)

2日目、朝が開ける頃には馬車で出発していたデュークは2時間ほど走った先の左側の森の方に魔獣の気配を感じ取った。しかも結構強そうである。


『まじゅういるの。やっつけるの』


「うーん、放って置けないよな…仕方無いか」


あまり乗り気ではなかったが冒険者も見当たらないし、このまま放置して他の旅人を巻き込まれない様にしなければならないし。


『メタがいってくるの』


と言い残してメタが消える。進化してからのメタのスピードはかなりの速さである。馬車を離れた場所に止めてデュークも盾を構えながらそちらの方向へ行くと既にメタがオーガを倒し終わっていた。


『よわっちいの』


メタはこの位は朝飯前と言わんばかりにオーガの上で飛び跳ねている。取り敢えずオーガを【キューブ】の中に入れる。


途中、宿場町の冒険者ギルドの出張所に赴いてオーガの件を話すと討伐依頼が出ていた様である。依頼受けせずにオーガは無料で引取って貰いギルド扱いにして貰う。出張所の方はホクホク顔である。


「メタ、ご苦労様。はい、魔石」


メタは魔石を吸収してゆく。嬉しそうだ。

余計な時間を掛けたので昼飯はパンと干し肉を噛りながら移動する。


「メタ、ここガオに乗って通り過ぎたトコだよ〜覚えてる??」


『おぼえてるの。レイナとガオに会いたいの』


「そうだねー会いたいねー」


レイナとガオはイレイザ救出の為に迷宮を捜索している。未だ吉報は入らないが師匠と姉弟子が帰ってくる事を祈っている。実はこの時この件に関して大きな動きが起こっていたのだがデューク達は知る由もない。


2日目の夜もPAて野宿をした。

今回はローナイトに向かう商人と護衛の冒険者の人達と一緒だった。食材を振る舞うと皆喜んで食事を囲んだ。


「いやあ、噂には聞いてたけどホントにメタルスライムなのな。しかも『はぐれメタル』は初めて見たよ」


「一度見た事は合ったんだが直ぐに消えちまったからなぁ」


などとメタの話が中心になってしまう。まあテイマー自体が珍しいのに激レアのはぐれメタルとなればびっくりされるのは当然である。

実は『白猫』ではフィールドやダンジョンのこうした相席の際に食事や飲み物を振る舞う事を推奨している。まあ簡単に言えばイメージアップと情報収集を兼ねる為である。キツい旅やダンジョンの途中での美味い食事は気分も良くなり口も軽くなる。積極的なコミュニケーションを取りながら色んな情報収集をして、しかも今後の営業にもなるので一石二鳥なのである。


「王都に行くんだって?じゃあ次の宿場町【ルダ】で泊まったら良いよ。彼処の温泉は疲労に良く効くって昔から湯治客が多いんだ。飯も悪くないしな」


「温泉ですか!良いですね!」


「宿なら『杜の小屋』がオススメだ。彼処は風呂も料理も良いし値段も安い」


「そうそう、彼処の卵料理は美味いぞ〜」


「へぇ~卵料理ですか『杜の小屋』ですね。行ってみます!」


次の朝、商人達と別れて次の宿場町【ルダ】まで急いだ。温泉に入りたいからである。デュークの居た村には共同温泉が有ったので懐かしかったのだ。


『あるじ〜おんせんてなあに?』


「お風呂だよ。お湯がね違うんだよ」


『メタもはいるの』


「宿の人に聞いてからね」


宿場町【ルダ】には夕方前には到着した。町の人に『杜の小屋』の場所を教えてもらい行ってみると部屋が空いていた。宿の女将さんがどういう訳かメタを気に入ってくれて風呂も食事も同伴OKにしてくれた。


「メタちゃんは何食べるの?」


『メタはませきたべるの』


「あら…残念ねぇ〜ウチの卵料理食べて欲しかったのに〜」

と女将さんが残念がったりしていた。実に気さくな女将さんである。


早速、自慢の温泉に入りにゆく。デュークも久々の温泉だ。身体を洗ってからメタも綺麗に洗ってお風呂に入った。メタは桶にお湯を張ったのに入る。


「ああ嗚呼あ…ぎもちいいいいい…」

デュークはおっさんみたいな声を上げる。


『あったかいの…』

メタも満更じゃなさそうで桶の中で溶けている。


結構な長風呂の後で夕飯となったのだが、ここの卵料理は絶品であった。中でも所謂オムライスが半熟トロトロのデミグラスソース風味で最高であった。あまりの美味さにデュークはオカワリしてしまった程だ。


「どうやらお気に召したようね。沢山食べて貰って良かったわ」


「こんなに美味いなんて…初めて食べました!」

デュークは興奮気味である。


「卵が新鮮で良い卵だから出来る料理なの。宿場町の外れで養鶏をやっててね、そこのご主人から朝獲れの卵を直接仕入れしてるからね」


「なるほど…後は料理人の腕ですね!!」


「あら!若いのに上手いわね!ちょっとアンタ〜!料理人の腕ですってよ!」

と笑いながら女将さんが言うと厨房の窓から顔を出した大将が親指を立ててニヤリと笑う。


こうして『杜の小屋』での素敵な夜が過ぎて行くのであった。

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