第32話 デューク、メタと二人旅に出る(その壱)
デュークはゴードンの店にやって来た。
ゴードンに盾を直して貰う為である。
「ゴードンさん、居ますか??」
「デューク!!ケガは大丈夫なのか??」
「お陰様で…ゴードンさんの盾じゃ無かったらやられてたと思います…」
「そうか…盾を見せてみな」
「うむ…これは…ロード級のドラゴンゾンビだな。流石に防ぎ切れなかったか」
「せっかく製作して頂いたのに…」
「なんの、デュークの命を助けたのなら良くやったと褒めてやりたいわい。修理は2日貰おう」
『じじぃ、はやくなおすの』
「ん?!!メタか??何じゃその姿は?進化したのか?」
「スミマセン…はぐれメタル系に進化した様です」
『あるじとおでかけするの』
「フン!そんな事は知らんわい!何ならお前を叩いて盾にしようか?」
『じじぃこわいの…』
「メタ!ゴードンさんでしょ!」
「フハハハ!2日後に待っておるぞ!」
ゴードンさんの店を出てから直ぐに冒険者ギルドに立ち寄った。
「ゼノさん!」
「デューク!!大丈夫なのか??」
「御心配お掛けして申し訳ありません」
「良かった…ホントにヤバかったからな。もしもの事があったらレイナに顔向け出来なかったぞ」
とゼノは頭を掻いた。
「しかし、デュークには礼を言わなきゃな。ラフレシアを庇ってくれて…確かに『白猫』的にはマズい行動なのは百も承知だが、ラフレシアはあの隊の回復の要だ、もしもの事が有れば全滅もあり得たからな」
「そんな…僕は何も知らないのに飛び出してただけです…」
「そういう気持ちは俺達冒険者にはありがたい事なのさ。だからよ、アレス達には謝っても俺達には謝るな。感謝してんだからよ」
『ゼノはやっぱりいいやつなの』
「!!メタか??」
『メタなの。しんかしたの』
「おいおい…コレって『はぐれメタル』だろ?また更に速くて硬くなったのか?」
『あるじはメタがまもるの』
「なるほど…デューク守りたい一心で進化したか。大した奴だ…」
「ゼノさん、『はぐれメタル』について教えて欲しいのですけど…」
「『はぐれメタル』はスライムの亜種でより液体に近い身体を持ってる。メタルスライムよりもスピードと防御力が遥かに高けえ。冒険者にとってはレア中のレアで数年に一度位は倒されるが経験値が恐ろしく入ると言われてる…あっ、最近じゃロキが倒してんな」
「えっ、ロキさんが!?」
「アイツはレアハンターだからな。色んな魔獣を倒しまくってる」
「なるほど…それで迷宮を渡り歩いてるんですね」
「そう言えばロキは王都に向ったぞ。暫く居るかもしれん」
「本当ですか?実は僕も王都へ行くんです。総長に呼び出されてるので…」
「ほう、パトリックにか?会ったら宜しく伝えておいてくれ」
「ゼノさんは総長とお知り合いなのですか?」
「パトリックはオレと同郷の幼馴染さ。兄弟みたいなもんだよ」
「ああ、それで…」
「ん?何か聞いてるのか?」
「あーいやいや…誰かから聞いた様な…アハハハ」
デュークは【ディスティニー】の時空間の亀裂の事件でロキがパトリックに相談した事を知っていた。何故パトリックなのかと思っていたが此処で話が繋がった。
「レイナにでも聞いたか?ココを出る時パトリックに師事する様に王都に行かせたからな」
「あ!そ、それです」
「そうかそうか。まあ変わった奴だが信頼出来る。安心していいぞ」
「あの…【ディスティニー】の調査は…?」
「うむ、あの後引き続き『黄昏』がやってるよ。『白猫』からはナオキを付けて貰ってる。安心しなよ」
「ナオキさんが…」
「ついでに『双頭の蛇』の二人も一緒に行ってるからよ。まあ、そっちは気にせず王都に行って来いよ」
『ダミアンのまけんはかたくてつよいの』
「何だ、メタはダミアンお気に入りか?フハハハ!」
「有難う御座います。安心しました」
コレでデュークの心のつかえも晴れた。
次の日はポーション工場に出掛けてパトリックに納品するエリクポーションとエリポーションを【キューブ】に入れた。
工場にはゼノが選抜したメンバーが警備をしていて何重にも魔方陣が敷かれており、その敷地の建物も見えないし入る事さえ出来ない。出入りは他の建物から転移の魔方陣でしか出来ないというセキュリティである。
受取が終わったデュークは『白猫』に行き馬車を引取り王都への手形など必要品をライアンから受け取った。
「コレで大丈夫だな。もう出るのかい?」
「明日ゴードンさんの店で盾を受け取ったら直ぐにでも出ます」
「そうか、まあ戦闘もそう無いだろうと思うが盾は持たなきゃだしな」
『じじぃはいいたてつくるの』
「コラ!ゴードンさんでしょ!」
「メタは相変わらずゴードンさんをじじぃ呼ばわりしてんのね…ローナイト随一の武具職人を…」
ライアンもメタの毒舌には呆れ顔である。
翌日、馬車でゴードンの店に行くと既に盾は出来上がっており、ゴードンは酒を飲みながら待っていた。
「おっ、早いな。手直ししておいたぜ」
ミスリルの盾は大きさが少しだけ小さく変わっており、デザインも少しだけ変えてあった。『白猫』のマークが彫られており新品同様の出来栄えである。
「少しだけ小さくしたのは重さを変えずに強度を増す為だ。ダメージや傷の具合で少しだけ小さい方が取り回ししやすいとみた」
「確かに前より取り回ししやすそうです」
『じじぃうであげたの』
「メタ!!」
「フハハハ!そうか、腕が上がったか!じゃあ次はお前を盾にしてやるからな!」
『じじぃこわいの…』
「メタ…ゴードンさんでしょ…」
メタは相変わらずである。修理代を支払いゴードンの店を出た後、そのまま城門に向かう。
王都に向けて出発したデュークとメタはそのまま馬車で移動している。
『白猫』の馬車と言うのは普通の荷馬車よりも小さい。荷物を運ぶ必要が無い為に寝るスペースがある程度で事足りる為だ。だから車軸は1つだし速く走れる様に軽量化されていて振動を抑えるサスペンション(魔獣の革や骨を加工したもの)も備えて長距離も快適なのだ。
『あるじ、ばしゃでたびするのたのしいの』
「レイナさんとガオに乗って旅してた以来だもんね。タマには良いかもね〜」
『あるじといっしょはたのしいの』
メタはお気に入りの鞄から出てデュークの肩に乗っている。
二人で旅をするのはコレが初めてである。ダンジョンテイマーのデュークは基本、街からダンジョンの往復なのでフィードテイマーと違って旅には出ない。今回のこういう事が無ければ中々旅には出れないからである。
途中、何度かの宿場町に泊まりながらの旅なのだが、デュークは急ぎ王都に行く為に先に進めてPAでの野宿をする事にした。
今回のPAでは他に人が居なかった為にメタと二人である。焚き火をしながら夕飯を作り食べた後には馬車の中で寝る感じだ。
こうして1日目の夜が更けていくのであった。
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