第25話 とあるメタスラの冒険記。
本文
「じゃあ留守番宜しくね」
『…メタもいっしょにいくの…』
「う~ん…今日は駄目だって言ったでしょ?」
『ペインさんとおはなしするの…』
「今日はペインさん忙しいからメタとお話し出来ないの。だから今日はお留守番だよ。いいね?」
『メタおるすばんするの…』
「うん、メタは良い子だね。じゃあ行ってくるね」
デュークは『白猫』に呼び出しを受けた。例の『神養石』運用開始し工場の見学などを兼ねて冒険者ギルドで話し合いがある為だ。
前回で割合の話は『白猫』内では済んでいるが冒険者ギルドとの話は今回が初めてなのでデュークも呼ばれたのだ。
(あるじのいうこときくの)
メタが我慢出来たのは10分であった。
でもデュークと約束したのでデュークの元には行けない。部屋の中でぴょんぴょん跳ねている内に空腹感に気が付いた。
(おなかすいたの…)
実は昨日デュークに壷の中に魔石が入っていると聞いていたのだが、置いてけぼりになる事ばかり考えていてすっかり忘れていたのだ。
(ませきとりにいくの…)
メタは窓から外に出た。屋根伝いに跳び回り、城門の入り口までやって来た。外からの訪問者が入る隙に素早く外に出た。
メタは近くのダンジョン【バゼアル】に潜って魔石を獲りに向かったのだ。
ダンジョンに着くと真っ直ぐ中層を目指していた。そこの魔獣が良い大きさの魔石を持っているのを知っている為である。
6階に着くと奥の方でゴブリンに囲まれてる冒険者のパーティーを見付けた。
(よわっちいの)
メタはゴブリンにファイヤーブレスを吹き付け3体ほど燃やした後で驚いているゴブリン全てを跳弾で吹き飛ばして行った。
「なっ…何が起きてんだよ…」
冒険者で剣士のマシューが言った。
初心者冒険者パーティー『ホークアイ』のメンバーは5階でレベリングをしていたが調子に乗って下まで降りてしまったのだ。ゴブリンに囲まれて焦っていたが、いきなりゴブリンが燃えたと思ったら他のゴブリンがぶっ飛ばされたのだ。
『おまえたちよわっちいの』
マシュー達の目の前にいきなりスライムが出現した!しかも喋っている!
「な、な、なんだオマエ!」と戦闘隊形を取る。
『メタはわるいすらいむじゃないの』
「魔獣のクセに!分かるもんか!」
『メタにはかなわないの。よわっちいの』
「コノヤロ!!」とマシューがショートソードで攻撃するとメタの身体に当たった剣がポッキリ折れてしまった。
『なまくらなの』
マシューは呆然としている。他のメンバーも驚いて動けない。するとメタがメンバーに向かってこう言った。
『おまえたちついてくるの。よわっちいからメタがまじゅうをぶっとばすの』
マシュー達『ホークアイ』のメンバーとメタはパーティーを組んでダンジョンの中層を目指す。もちろん初心者冒険者の『ホークアイ』が降りた事がない、と言うか今の16階ももちろん初めてだ。
『ホークアイ』のメンバーは剣士のマシュー、魔術師のケイ、回復魔術師のリタ、アーチャーのダリルの四人でランクは全員ᖴである。
「マシュー、こんな深くまで入って良いの?」
リタが小声でマシューに言った。
「仕方無いだろ…あの…メタがどんどん行っちまうんだからさ…」
マシューは戻りたかったのだが、メタのゴリ押しでここまで潜ってしまったのだ。しかもメタが居なければ戻る事も出来ない…それで仕方なくついて来たのだ。
『だいじょうぶ。メタにまかせるの』
メタは自信有り気な様子である。
マシューはメタに剣を折られていたが、12階でオークソルジャーのドロップしたソルジャーソードを手に入れていた。他のメンバーもドロップアイテムで武器や防具を次々とレベルの高い物に装備し直している。
メタは魔石だけを吸収してアイテムは全部彼らに渡していた。
メタがどんどん初心者では倒せない魔獣を倒しているのでマシュー達はレベルもどんどん上がっている。
メタは20階のフロアボスを倒し、いよいよ目的の中層にやって来た。
『ここのまじゅうをいっぱいたおすの』
「中層だぞ…大丈夫なのかよ…」
ダリルは腰が引けている。
『メタはいつもあるじとずっとしたにいくの。だからだいじょうぶなの』
「主??誰だよ…それ…」
『あるじはあるじなの』
すると魔獣がわらわら集まって来た。マシューは剣を構える。やって来たのはオークジェネラルとオークマジシャンである。
メタは目にも止まらぬ速度でオークジェネラルを一撃で倒していく。マシュー達にはオークジェネラルの血飛沫しか見えない。集まって来た魔獣をあっという間に全滅させる。
『やった〜ませきたくさんなの』
メタは魔石をどんどん吸収している。マシュー達はレベルがアップした上にアイテムが沢山入る。オークジェネラルのサーベルやシールド、オークマジシャンの杖やローブなどなどを一杯袋に入れていく。
メタが満足する頃にはマシュー達はオークジェネラルやマジシャンをチームで倒せるまでになっていた。レベルが上がったお陰である。
『メタはそろそろかえるの』
やっと地上に出られる…『ホークアイ』のメンバーはホッとした様だ。
出口に出るとメタが空の色を見て慌てていた。
『あわわ…メタかえるの。あるじにしかられるの』
その言葉を残してメタの姿がかき消えていた…
「な、な、何だったんだ…ありゃ…」
ダリルはメタが消えてビックリしている。
「でも…凄くレベル上がったよ。メタちゃんのお陰じゃないの?」
とケイは満足そうだ。
「また会えるかな…メタ…次はもっと強くなってるからな!」
マシュー達は次にメタに会えるのを楽しみに、自分たちのレベルを更に上げる事を誓っていたのだ。
メタは超特急で部屋に向かっていた。デュークにお留守番を任されていたのに魔石欲しさに外に出たと知られたらガッカリさせると思ったのだ。
部屋に着くとまだ灯りが点いていなかった。
どうやらメタは間に合ったようだ。
窓を閉めてテーブルの上でデュークを待っていたが、遅くなってもデュークは戻らない。
その頃デュークはゼノとガイルとアレスに付き合わされて大変な目に合っていた。
(あるじおそいの…)
頑張って待っていたが、いつの間にかメタは寝てしまった。
「ただいま…メタ寝てるかな…」
デュークは何とか逃げ出して戻って来た。
テーブルの上で静かに寝ているメタを見て安心した様に言った。
「お留守番ご苦労様。おやすみメタ」
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