第24話 デューク、盾をオーダーする(後編)

ゴードンの店を出て冒険者ギルドにゼノと戻るとギルド内はダンジョン【ディスティニー】の話で持ち切りになっていた。今までのダンジョンの常識では考えられない階層の増加と迷宮レベルの魔獣の数々など、驚きを持って報告されていた。


デュークはゼノに、ついでに話があるとギルマスの部屋に居た。



「次の調査は早くても50日後だ。『黄昏旅団』のフルメンバーがそこら辺までは戻って来れねえんだ」



「でな、グレードマンが次の調査もデュークでとご指名なんだが…どうだ?」



『あるじもメタもかならずいくの』


とメタが先に答える。『黄昏旅団』のメンバーがお気に入りなのでメタは行く気満々である。



「ボクで良ければ是非に…と言うかコチラからお願いしたいくらいです!」



「アハハ!二人ともその気なら助かるぜ。グレードマンには俺から伝えとく」



「よろしくお願いします」



『よろしくなの』



「フハハハ!メタがヤル気なら大丈夫だな!」


とゼノは笑いながら頷いた。



その後、冒険者ギルドを後にして『白猫』のギルドに戻る。


ライアンが盾の無い事に気付いてデュークに話し掛ける。



「おっ!盾を預けたって事はオーダーしたんだな。良し良し」



「はい!ゼノさんの紹介でゴードンさんにお願いしました!」



「ご、ゴードンさんだって!?マジか??」



「はい、十日後に出来るので…ってゴードンさんだと何かマズいですか?」



「いやいや、そういう意味じゃ無くて…良くオーダー受けてくれたね…ローナイトは元より王都にも名声が轟く名工だよゴードンさんは」



「そんな凄い方だったのか…レイナさんの盾も作ったと聞いて是非にとお願いしました」



「ナルホド…しかし驚いたな…ゴードンさんは根っからの職人肌でね、客が気に入らないと王族の依頼も蹴飛ばすからねぇ…その人が受けてくれるのは大変な事だよ」



「そ、そうだったんですか?そんなに怖い人には見えなかったけど…」



『じじぃこわいの…メタをたてにするの…』



「こら!ゴードンさんでしょ!」



「じじぃって…メタ…」



「何かゼノさんの真似をしてしまって…」



「ああ、そういう事ね…」


ライアンはなるほどと頷いた。



「それじゃ、十日は特別休暇だ。ゆっくり休むと良い。ガイルさんには私から話しておくよ」



「よろしくお願いします」



メタは二人の前でぴょんぴょん跳ねながらこう言った。



『あのね、ペインさんとおはなしするの』



デュークとライアンは顔を見合わせて苦笑した。


メタにペインさんとお話するのを諦めさせた後、デュークは久々に自分の部屋に帰った。




一日二日は大人しくしていたが、メタも出掛けたいとウズウズしているので街を散策したり、買い物をしてみたりしたのだがやはり落ち着かない。普段は休みらしい休みも取らず、暇さえあればレベリングをしていたので中々休暇の使い方が分からないのである。



7日経った頃に『白猫』から呼び出しがあり久々にギルドに顔を出した。



「おう!休暇中悪いな。『神養石』の件だが色々決め事をしないとマズいからな。お前が休暇中の今ならじっくりと話し合えると思ってな」



「デュークは本来100%の権利が有る。それをギルドに移譲してくれた訳だがそれでも幾らかの権利は発生する。その割合を決めたいのさ」


ガイルとライアンは色々考えてくれている様だ。



「う~ん…良く分からないからお任せします!」



「それじゃあ駄目なの。キチンとやるの。良いね??」


とライアンの圧力が凄い。



「は、ハイ…」


捕まったデュークを尻目にメタはコッソリとペインの部屋に向かうのであった。



結局は一日掛かりでようやくそれぞれの取り分が決まった。


利益配分はギルド本部が20%、ローナイト支部60%、ローナイト冒険者ギルド15%、そしてデュークに5%で決まった。


製造販売元はローナイト支部で本部は全ての流通をコントロールする。冒険者ギルドは工場と警備を担当する。デュークは10%の取り分を拒否し5%を冒険者ギルドに割り振った。しかもデュークは自分の取り分から3%を自分の出身地であるゼリフ村の教会と村自体に割り振る事にした。



ヘトヘトのデュークとペインとお話出来て満足そうなメタであった。



それから3日はギルドの養成所に通いトレーニングを行っていた。




そして十日後…



「よう!出来てるぜ。装備してみな!」


ゴードンはデュークに仕上げた盾を見せた。



「す、凄い…」


その出来栄えに言葉も出ないデューク…



『じじぃ、きれいなたてなの』



「へっ!当たり前じゃわい。誰が作ってると思ってるんじゃ!」



デュークは装備したその盾がまるで昔からづっと使ってる物の様にしっくり来るのを感じた。コレが名工の実力なのであろう。



「こんなにしっくり来るとは…流石ですゴードンさん!!」



「その預けさせてもらった盾のお陰じゃ。その盾が色々教えてくれる」


名工ゴードンならではの言葉である。


その盾の傷がデュークのクセや使い方を全て記憶しているのだ。それを読み取り新しい盾に反映させる技術こそがゴードンの真骨頂である。



デュークがゴードンにお金を払おうとすると



「ん?代金は鼻タレから受け取ってるわい」



「そんな…」



「いつも良い仕事をしてくれてる礼だそうじゃ。素直に受け取っておきなさい」



「そうですか…分かりました。後でお礼に伺います…」



こうしてデュークは名工ゴードン作のミスリルシールドを手に入れたのである。そしてこのミスリルシールドはデューク最大のピンチを助ける事となるのである。



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