第17話 デューク、大人気『白猫さん』になる。

それから二年後…




「いやぁ~今回も大成功だよ!レベルが上がったし、欲しかったミノタウロスの角も手に入った!」


と満足そうに剣士であるクリムが言った。



「何時もながら見事な囮役てすよね!メタちゃんは!」


魔術師のマリアが褒める。




「最後の入りがイマイチで心配したんですが…奥に固まってた様で良かったです」


とデュークが言った。



「それじゃあ、またお願いします…って言っても中々順番回ってこないからなあ~」


とリーダーで盾役のジミーが苦笑している。



「申し訳無いです…でもまたご一緒出来ればと思います。その時は宜しくお願いします」



「人気者の辛いトコだよね~まあ、気長に待ちますよ」


回復魔術師のリックが言う。


「メタちゃん、コレはオレからのプレゼント」


とメタに魔石を渡す。


メタは大喜びでぴょんぴょん跳ねる。



「あっ、何時もスイマセン…メタ!お礼は??」



リックの肩に乗りアタマを下げる格好をする。



「じゃあまた!」と冒険者パーティー『カサブランカ』のメンバー達がギルド『白猫急便』から出て行った。



「お疲れ様。今回の報酬でーす」


受付のピノも上機嫌だ。



レイナと別れて二年、デュークはローナイト支部専属のダンジョンテイマーとして『白猫さん』をやっていた。


評判は上々で数多くの冒険者から頼りにされている。最近では順番をめぐって揉め事が起き、冒険者ギルドで順番を調整する事もある程だ。デュークは硬くて速く、そして状態異常無効化持ちとなれば冒険者はデュークに気を回さず魔獣に集中出来る。しかもメタの囮役はタダ魔獣を連れて来るだけで無く、冒険者に攻撃しやすい位置まで連れてくるので評判が良いのだ。またデュークはダンジョン【バゼアル】の階層の魔獣や罠などを細かく把握しているので、道案内も出来ると来れば冒険者も放っては置かない。


そしてデューク自身も【バゼアル】に暇があればメタと潜るのが日課で、レベリングも兼ねて調査もするので何か聞くならデュークにという感じになっている。



「ありがとうピノさん。えっと明日から少し潜りますからヨロシクです〜」



「2日間でしたよね?予定空けてますから。気を付けて下さいね」



「了解しましたっ!あ、ギルマス居ますか?」


思い出した様にデュークは聞いた。



「あ~、さっきコッソリ抜け出たので…」


とバレバレな様子。



「アチャー…じゃあそろそろガイルさんの雷…」


「ギルマス!!何処行った!ゴルァ!!」


言った側からガイルが怒鳴り声を上げている。アレスはまた仕事をサボって逃げた様だ…



「じゃあまた…」とデュークは逃げる様に立ち去った。






「アレスさん、やっぱりここでしたか…ガイル副長カンカンでしたよ」



「お〜デュークじゃないか。今日戻りだったね~ご苦労様」


とアレスはお茶を飲みながら挨拶する。



「あ~ガイルくんはいつもの事だよ。気にしない気にしない~アハハ」



ココはアレスお気に入りのカフェである。仕事に嫌気が差すと直ぐに此処でお茶を飲みに(サボりに)来るのだ。



「あの…ギルマス…」



「レイナの事かい?今は北の迷宮を探し始めたらしいよ。西の迷宮は駄目だったらしい」



「そうですか…」



あれからレイナはイレイザ救出作戦の隊長として虱潰しに捜した。するとイレイザとすれ違ったという商人から、その前にチャハラミ族の狩人を見掛けたとの証言を得てその狩人を突き止めた。そしてその狩人よりイレイザが黒い雲に引きずり込まれたと目撃情報を取った。これによりイレイザは『ダークアウト』に巻き込まれた可能性が高いと判断された。


本来『ダークアウト』はダンジョン内でごく稀に発生する魔法陣の罠の一つで、巻き込まれると『迷宮』の何処かに飛ばされる。場所はランダムで21箇所の『迷宮』の何処かという事になる。何故フィールドのしかも街道のど真ん中で『ダークアウト』が出現したのかは謎であったが、『迷宮』に飛ばされた事が判明した為、総長パトリックが冒険者ギルド本部に依頼してバリバリの迷宮攻略組のパーティーにレイナを加えて捜索する契約を結んだ。レイナを加えたのはガオとユニの二頭は師弟の結び付きが有る事で距離の限界は有るものの気配を感じれる為である。そして『迷宮』を捜索し続けているのである。



「早く見つかると良いなあ…」


デュークが呟く。



「そうだね。レイナの弟子達がホントに頑張ってるし…もちろんデュークも含めてね」



二人の抜けた穴をレイナの弟子達で穴埋めしている。特に弟子のフィールドテイマーはかなり無理をして頑張っているのだ。デュークはダンジョンテイマーなので直接的な穴埋めでは無いのだが、売上的にはかなりの貢献度が有り、少し前には総長パトリックから直々の礼状が届くほどであった。



「ボクなんて大したこと無いですよ」


と手を振りながら謙遜するデューク。



「あのパトリックから礼状なんて私でも貰った事が無いんだよ!デュークは良くやってる。だから私は堂々とサボ…いや、茶が飲めるんだ」


とアレスは何故だか自慢気だ。



「やはりここに居ましたか…もう戻らないとそろそろガイル副長がヤバいですよ」


と呆れ顔のライアンがやって来た。ライアンは「よっ!」とデュークに手を上げる。



「あ~ライアン来たって事はマジヤバな様だね…明日は潜るのだろう?気をつけるのだよデューク。じゃあね~」


アレスはライアンに小言を言われながら連行された…戻ったらガイルが烈火の如く怒る姿が目に浮かぶ…



「さて!明日は久しぶりのソロだよ!」


メタに声を掛けるとメタも嬉しそうである。ソロだと魔石が全部メタの物という事もあるがやっぱりデュークと潜るのが好きなのだ。



そして次の日にダンジョン内で事件が起こるのである。



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