第16話 デューク、師匠と別れる(後編)

仮眠を終えると直ぐにフロアボスの攻略である。


26階のフロアボスはミノタウロスだが此処のミノタウロスは倍近い大きさで角が4本ある大物だった。



「デュークとメタでやってみな」


レイナは後ろで盾を構える。



「メタ!行くよ!ファイヤーボール!」


ミノタウロスの顔面にファイヤーボールを食らわす。


「跳弾!」


メタは超加速して横の壁にぶつかり跳ね返る。ミノタウロスの横っ面に思い切りブチかます。超高速のまま壁に跳ね返りながらミノタウロスの顔面に何発もブチかまして行く。



するとミノタウロスはゆっくり倒れてゆく。デュークとメタの勝利である。



「大分息が合ってきたね。その調子だよ」



「ヨシ!メタやったね!」



「次行くよ!」



その後もレイナはデュークとメタに攻撃を任せながら魔獣の弱点や攻撃のタイミングなどをアドバイスをしてゆく。



「此処のフロアボスはオークソルジャーのデカいヤツだよ。弱点は鼻だね」



「メタ!跳弾で狙って!」



メタの超加速からの跳弾が鼻に炸裂。オークの動きが止まると間髪入れずに後頭部にブチかます。その衝撃で頭蓋骨が割れて中身が飛び出す。



「ヨシ、メタ戻れ!」


メタはデュークの足元に戻る。




30階のフロアボスはコカトリスであった。


本来ならばかなりの強敵で毒を飛ばしての攻撃がかなり厄介である。その為に冒険者は毒消しをかなりの本数用意してから挑む相手である。


だがスキルに状態異常無効化を持つデュークとメタはコカトリスにとって天敵と言えるだろう。


勝負は一撃で終了。


コカトリスの首の骨を圧し折っての勝利である。



30階層の魔獣はかなりのレベルで硬くて筋力が強い。デュークとメタは苦戦する。



メタは苦戦する中でスキルを獲得していた。



《スキル 魔鉄の氷柱》を獲得しました。



氷柱の形に変化して硬い魔獣の外皮を貫くスキルである。



「中々良いスキルを手に入れたね!!」



メタも褒められてまんざらじゃなさそうだ。



31階や32階のフロアボスを串刺しにして勝利。


33階のフロアボスは粘膜を使い攻撃を巧みに滑らせる。メタはファイヤーボールを使い粘膜を蒸発させて串刺しにした。



34階のフロアボスはゴーレムである。


メタはこのゴーレムにかなり苦戦する事になる。


まずメタの攻撃は全てゴーレムの硬い身体には通じない。まさしくメタの天敵だ。



デュークは盾を構えてゴーレムのパンチを受け止める。身体は軋むが何とか耐え切る。



「諦めるな!メタ!」



するとメタのスキルが発生する。



《ユニークスキル 魔炎の貫通弾》を獲得しました。



メタの身体の温度が急上昇、鉄を熱した様に光る。そのまま超加速の体当り。するとそのままゴーレムの身体を貫通する!


ゴーレムのコアを破壊した様で身体が崩れ落ちた。



「やった…ゴーレムを倒せた…」



「つ、次に行かなきゃ…早く…」



とデュークの手をレイナが掴んだ。デュークが振り向くと静かにレイナが言った。



「デューク、時間切れだ…地上に戻るよ」


レイナは寂しげに微笑む。



「今まで、あ、ありかとうごじゃいまし…ううう…」


デュークは泣きながら崩れ落ちた。





城門の入口にはレイナの見送りに、デューク、ガイル、ライアン、そして珍しく部屋から出たペインも居る。



ゼノには挨拶に行っていた。


昔を思い出すから見送りは勘弁なと笑って言っていた。



「レイナさん、ううう…」



「デューク、今まで教えた通りにやるんだよ。分からない事は副長やライアンにお聞き」


デュークは頷いている。


ガオはデュークに念入りに頭を押し付けている。大好きなデュークにサヨナラの挨拶だ。


「ガオも元気でね…ううう」


メタがぴょんぴょん跳ねている。ちょっと寂しそうだ。


ガオがメタに顔を近付た…サヨナラを伝えてるのだろう。



「副長、後は頼むね」



「おう、任せとけ。ライアンも付いてる」



「お任せを…」とライアン。



「じゃあイレイザの事は任せたよ」



「ペイン姐さん…任せて。必ず見つけるから」



レイナはこの後、イレイザ救出の壮大な冒険に出る事になるのだが、それはまた別のお話。



「じゃあね!!皆んな元気でね!デューク頑張るんだよ!」


レイナとガオは一気に加速する。振り向かずそのまま遠くなって行った。



「レイナさーーん!!ううう…」


デュークは涙がとまらない。



「もう泣くんじゃねえよ。また必ず会えるからよ」とガイルが頭をクシャクシャに撫でながら慰める。



すると急に後ろから声がした。


「そうだね。レイナなら必ず帰ってくるさ。何せあの子は『白猫』でも五本の指に入る、超優秀なフィールドテイマーだからね!」



皆がその声にビックリしたように振り向いた。



「ち、ちょ、ちょっと!!何やってんすか??」


ガイルが驚きながら言った。



「アンタ…帰ってたのかい…」


ペインも目を丸くして驚いている。



「うん、実は君等が此処に集まるちょっと前に帰ってきてたのだけどね…」



「イヤイヤ…レイナさんに挨拶くらいはしましょうよ…」


と呆れたようにライアンが言う。



「いやあ、流石にレイナには会わせる顔が無いと言うか…会ったら何されるか分からないからね!アハハ!」



「アンタってヤツは…」


ペインは呆れ顔で呟いた。



そして、ポカーンと成り行きを見ていたデュークにその男が言った。



「君がデュークだね?噂はよーく聞いているよ」


そしてデュークの両肩に手を置いて静かに言った。


「初めましてデューク。私がローナイト支部ギルドマスターのアレスだよ。宜しくね」


こうしてデュークはようやく初めてギルマスの顔を見たのである。



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