第15話 デューク、師匠と別れる(前編)

時を遡り…


レイナとデュークがカーグンに到着した日…



帝都の西側にある大都市『テゾーロ』から南の大都市『シグナシオン』に向かって荷物を運んでいたイレイザは最初の中継地である城塞都市『コールム』に後3日の所まで来ていた。



(順調順調!これなら予定通りね)



しかし、突然周りの雰囲気が変わる…イレイザは急停止した。



(急に何なの…物凄い魔気…)


イレイザは警戒態勢を取った!



すると前方に黒い雲が現れる。



(何これ…コレってまさか…あり得ない!)



イレイザは引き返そうとするが引きつけられていく!



(クッ…逃げられない!!)



ユニコーンの【ユニ】が雷撃を食らわすが全く歯が立たない!



(そんな…ダメージ無しって?)



そしてそのまま黒い雲に成す術なくイレイザとユニは引きずり込まれたのである。






「お前の弟子??初耳だぜ…あの『雷鳴のイレイザ』が?」


ガイルが驚く。



「イレイザはアタシの3番目の弟子よ」



雷鳴のイレイザ



レイナの弟子でユニコーンの【ユニ】をテイムしたフィールドテイマーである。ユニコーンはスピードと攻撃力に優れ魔法にも強い。雷魔法は威力が物凄い。今は西側の物流の中心メンバーである。



「コールムには到着してない事から捜索隊を編成してテゾーロまで隈無く探したが、全く手掛かり無し。魔獣や盗賊団との戦闘の跡も無し」


ガイルは続けた。


「結局、イレイザの姿は煙の様に消えたって事に。そうなるとイレイザ自身が逃げたのかって事も依頼人から囁かれ始めた訳さ」



「イレイザはそんな事しない!あの娘はアタシの弟子の中でも一番のクソ真面目だよ!ある訳無いでしょ!!」



「落ち着きな!師匠がそんなんでどうすんだい!!」


部屋に入って来たペインに諌められる。



「姐さん…」


レイナは手で顔を覆う。



「しかし妙な話だね…アタシの水晶玉にも何も映らない。もしイレイザが逃げたのなら間違いなく映るはずだからね」


ペインの水晶には『白猫』のメンバー全員の【キューブ】の型が登録されており、どこに居るかも分かるようになっている。



「妨害の魔法陣が仕掛けられてる場所か…ダンジョンか…」





するとライアンが部屋に飛び込んで来た。


「帝都のパトリック総長から緊急連絡です」



ガイルは紙を受け取るとレイナに見せる。


「二日後にレイナの教育用員の任を解き、イレイザ捜索隊の隊長として捜索を命ずる…だとよ」



「えっ、じゃあレイナさんは…」



「デューク…修行の旅はココまでだよ」


レイナはデュークに言った。





二日後に…この文言を入れたのは総長パトリックとギルマスの温情である。


レイナにデュークの師匠として最後の修行の猶予を与えたのだ。



「デューク、後2日みっちり教えるからね!ついて来るんだよ!」



「はい!」デュークは目を真っ赤にしながら返事をした。



そのままダンジョン【バゼアル】に潜って行く。


レイナはもう過去の呪縛も何もかも振り切っていた。今の弟子であるデューク、昔の弟子であるイレイザ…両方共天秤にかけられないかけがえの無い愛弟子…


デュークがこの先ダンジョンテイマーとして生きていける様に全てを叩き込む。その事にだけこの2日間だけは集中する。



「良いかい?ドロップアイテムや魔獣の預かりの場合は基本冒険者のパーティーには入らないから安全な場所で防御だよ。タゲられない様にね」



「何故ソロ状態なのですか?」



「冒険者の経験値を減らさない為だよ。パーティーに入ればその分経験値が取られるからね」



「ナルホド…じゃあ一人で守らないとですね」



「危険になったら直ぐに冒険者を呼ぶ事。冒険者は必ず助ける。預かり物を守る為と、『白猫』を殺されたとなればその冒険者は一生『白猫』を雇えない」




更に奥に進みながら魔獣毎の防御のやり方、位置取りの場所、使役モンスターの効果的な使い方などを次々と教える。



「本当に危険な時以外は基本メタに攻撃させない事。獲物は冒険者に狩らせるんだ」



「メタは硬いし速いから囮役を引き受けると喜ばれるかもね。但し別料金だよ」





20階を超ると中層になる。魔獣のレベルが一気に上がる。



「変わってなければ37階のフロアボスがギガントレッドボアよ」



「えっ、この前のは15階に居ましたよね??」



「だからヤバいと思ったのさ。あのまま行ってたら20階にとんでも無いのが居たかもね」



「だから良いかい?このダンジョンのフロアボスやフロアの魔獣を覚えている事。少しでも変わっていたら直ぐに逃げな」




1日目はダンジョンの26階セーフティボイントで休む。


ココはモンスターが来ないので仮眠も取れる。


カーグンで仕入れた魚を焼きながら食事をした。



「イレイザさん…無事だと良いですね…」



「そうだね…まあタフな娘だし、きっと大丈夫よ」



「レイナさんも気をつけて下さい…ホントに…」



「アタシとガオは大丈夫さ!デュークも知ってるだろ?」



「そうですね!ガオも頑張ってね!」


デュークを気に入ってるガオは頭を擦り付ける。



「そろそろ仮眠だよ。起きたら更に潜るからね」



「おやすみなさい」



デュークとレイナは静かに仮眠を取った。




その後…ガオとメタが何かを意思疎通してた。


レイナとデュークが寝た後にコッソリと2匹で意思疎通するのは日課になっていた。


また色々とガオがメタに教えてる…此処にも師弟の関係が出来ていたのだ。



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