第11話 デューク、初めて海を見る。

ダンジョンを出たデュークはレイナに連れられてカーグンの街に到着していた。



【港街カーグン】


海洋モンスターを狩る為の前線基地だ。


凄腕の漁師達が海洋モンスターを狩り、海洋資源を他の街に供給している。


また、海に面した港街ならではの風情が人気で観光地としての側面もある。



この世界では危険な海洋モンスターが沢山いるので船での貿易は不可能である。



その為に陸路貿易しか手段が無い。ギルド『白猫急便』が物流を一手に引き受けているのはそういった事情がある為だ。




「でっかいなあ!!」


デュークは森の奥の小さな村で育ったので、海を見るのが初めてである。



「塩っぱい!?何で水が塩っぱいんだ??」


デュークは目を大きくしてビックリしている。



「海の水は湖や川の水と違って塩っぱいんだ、塩も海の水を使って生産してるんだよ」



「へぇ~塩って海の水で作るのかあ」


デュークはしきりに感心する。


「メタ!こっち来ないの~??」



メタはデュークが呼んでも海に近付こうとしない。どうやら海が苦手のようだ。



小さな魔魚は市場で取引されて屋台などで売られるのがほとんどで、大物は冒険者ギルドで解体されて商人ギルドや店舗に流れるらしい。とレイナが教えてくれた。



「コレなんですか?」


デュークが屋台のオヤジに聞くと



「アンチャン知らねーのか?コレは名物のキヨキヨ焼きだよ!秘伝のタレで焼いてんだ。美味しいぞぉ〜」



レイナを見ると苦笑しながら


「じゃあ3本頂戴」


と買ってくれた。



キヨキヨは見た目は目が飛び出たイワナみたいな感じでキモいのだが味はピカイチで観光客にも大人気なのだ。



「ウマーーーー!!こんな美味い魚食べた事ないですううう」


と半べそのデューク。


村では質素な生活をして来てるのでコレはご馳走である。



レイナはガオにも1匹食べさせた。


ちょっと足りなそうだが「後で肉だからね!」と言われると納得したようである。



「さて、冒険者ギルドで獲物を売ってこようか。お前達の鑑定も兼ねてな」



レイナとデュークはカーグンの冒険者ギルドに行く事にした。



カーグンの冒険者ギルドは基本的に漁師が多い。大きな海洋モンスターは基本冒険者ギルドで解体されて商人ギルドなどに流される為だ。



「買い取りを頼みたい」


レイナは冒険者ギルドの登録カードを見せる。『白猫』のカードでも買い取りしてくれるのだが値段が安くなる。冒険者特権って奴だ。



「おや、『白猫』のレイナさんですね。お久しぶりです」


受付の女性がにっこり微笑む。


「倉庫にどうぞ。丁度ギルマスも居ますよ」



倉庫に入ると見たことの無いデカさの魚が捌かれていた。



「お久しぶりですランドウさん。随分と大物ですね」



「おお!レイナか!元気にしてたか!」


ランドウは2メーターを超えた大きな身体をした男である。長髪の黒髪を後ろで束ねている。


「おや、この坊やは?…おい!肩に乗せてんのメタルスライムじゃねーか??」


ランドウが驚いている。無理も無いメタルスライムのテイムするのは不可能に近いのだから。



「アタシの弟子で名前はデューク。テイムしたメタルスライムはメタって言います」


とレイナが紹介する。



「おう!デュークな。俺がこの街の冒険者ギルドのギルマスやってるランドウだ。ヨロシクな」



「初めまして!デュークです。よろしくお願いします!」


デュークは緊張気味だ。



「しかし…師匠が師匠なら弟子も弟子…センスが無え名前だな」



「面目無い…」


レイナは素直に謝る。



「?」


デュークは気付いていない様だ。




「何か獲物か?向こうのはもう直ぐ終わるからよ。とりあえず見せてみろ」



レイナは【キューブ】から獲物を出した。


「デューク、お前のもな」



デュークも獲物を出す。



「レ、レッドボアじゃねえか!何処でこんなもん狩って来た?」


ランドウや解体していたギルメン達も驚いている。



「【ディスティニー】で狩って来ました。デュークの修行で潜ってたんです」



「何ぃ!!【ディスティニー】だと!お前ら良く無事で帰ってきたな!最近【ディスティニー】では行方不明が多くてな…行く奴は少ないんだぜ!」


ランドウは驚いていた。



「確かに…レッドボアを倒して流石にヤバいと思って切り上げましたよ」



「それで正解だ。後で詳しい話が聞きたいが良いかい?頼みたい事もあるしな」



「ええ、報告しようと思ってたので。後、デュークのレベル鑑定をお願いしたいの、メタと一緒にね」



「それは丁度良いや!直ぐに用意させよう。生きてるメタルスライムの鑑定なんて初めてだぜ!」


ランドウは興奮気味だ。


「デューク!メタ連れてコッチに来な!鑑定だレベル鑑定!」



デュークはメタとレベル鑑定の為に別室に連れて来られた。部屋には大きな水晶玉が置いてある。ペインの部屋に似ている。



「待たせたね、鑑定士のシゲミツだ。宜しくね」



「デュークです!よろしくお願いします!」



「元気が良いね~緊張せずにリラックスしてね」


鑑定士のシゲミツも長髪の黒髪だ。目が金色なのはライアンに似ている。


「この水晶に触ったら…目を閉じて…」



デューク



職業 ボックステイマー


レベル 18


HP 125


MP 0


攻撃力 1


防御力 454


体力 52


腕力 1


魔力 0


素早さ 353



キューブ レベル5A



《スキル 狩人の眼》


《スキル 野生の勘》


《ユニークスキル 移し身の聖盾》


《ユニークスキル 状態異常無効化》



メタの能力に影響されている為に防御力と素早さが通常のレベルより倍の値になっている。



移し身の聖盾はテイマー独自のユニークスキルでテイムした魔獣の防御力値を半分借りる事が出来るスキル。



状態異常無効化はかなりダンジョンでは使える能力だ。



「じゃあ次はメタルスライムだね。そのままじっとさせててね」



メタ



種族 スライム系メタルスライム


レベル 14


HP 19


MP 132


攻撃力 2


防御力 3853


体力 32


腕力 2


魔力 86


素早さ 1684



魔法 ファイヤーボール



《ユニークスキル 鉄の意志》


《スキル 魔法防御》


《スキル 狩人の眼》


《スキル 野生の勘》


《スキル 超弾性変形》


《スキル 魔石溶解》


《スキル 跳弾》


《ユニークスキル 魔鉄の弾丸》


《エクストラスキル 瞬歩》


《エクストラスキル 鋼の守護者》


《ユニークスキル 状態異常無効化》



超弾性変形はゴムの性質を倍加させた能力で相手の物理的攻撃力を4分の1に分散させる。



魔鉄の弾丸は攻撃力スキルで相手に体当りして攻撃する攻撃力として素早さの2倍の値がプラスされる。



瞬歩は速度を5倍に上げるスキルであるが使用は戦闘中に限られる。



鋼の守護者はテイマーを守る為に敵を攻撃する時に限り、防御力値を戦闘力に乗算出来る能力。




(オイオイマジかよ…いくら何でもチート過ぎるだろ…)


シゲミツはメタルスライムのスキルを見て驚いていた。


(メタルスライムで隠れちゃいるがデュークも結構エグいぜ…)



「おう!どうだ?鑑定の方は?」


ランドウがレイナを連れて来た。どうやら話は終わったようだ。



「これが鑑定結果です。」



シゲミツから受け取った紙を見てランドウとレイナは呆然としていた。





レイナとデュークは冒険者ギルドを出て『白猫』のカーグン支部に向かっていた。


ローナイト支部に手紙を届けて貰うのと、冒険者ギルドの依頼を報告する為である。



「どんな依頼を受けたのですか??」


デュークがレイナに聞いて来た。



「あのデカイ魚を届ける仕事だよ。ローナイトまでね」



「えっ!じゃあローナイトに帰れるんですね!ヤッター!!」


デュークは大喜びしている。



「ただ、冒険者ギルドに頼んでる解体が3日ほどかかるから、それまではカーグンでのんびりするよ」



「じゃあお土産買っていけますね!」



「明日にでも店に行こう…あっ、そうだ朝市も有るから早起きしなよ。屋台で朝飯食うよ!」



「はーい!屋台かぁ~楽しみ〜」



などと話してる内に『白猫』のカーグン支部に到着した。受付に行くと他の『白猫さん』達がザワつく。



「アレって【紅い暴風】のレイナさんだろ?」


「ディープレッドジャガー初めて見た〜スゲェ迫力!」


「後ろの坊やが肩に乗せてんのメタルスライムじゃねーか??」


などと結構な騒ぎになった。



「レイナさん、ギルマスの部屋にどうぞ」



部屋に入ると小柄だが恰幅の良い老人が居た。


「レイナ、良く来たのう。一年振りかな?」



「そうですね、お久しぶりですハクレイギルマス」



「初めまして!デュークです」



「おっ、新しい弟子を取ったと聞いてたが、彼がそうか。初めまして、ココのギルマスやってるハクレイじゃ」


ハクレイはニコニコしながら挨拶をする。


「しかし、テイムしたのがメタルスライムとは…流石はレイナの弟子ってとこかのう?アハハ」



「イヤイヤ、コレはアタシのせいじゃないですから!」



「アハハ、ところで今日は挨拶だけかい?」



「実は冒険者ギルドにデュークとメタのレベル鑑定行ったので結果を至急ローナイトに送ってもらおうと。それとランドウさんから仕事の依頼を受けたのでその登録で来たのです」



「そうかそうか、流石は凄腕レイナ。ランドウから仕事を取ってきたか」



「偶然ですよぉ〜」



「まあまあ謙遜するな、弟子の修行中でもキチンと営業する。他のメンバーに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわい」


とハクレイは大喜びしてる。


「コレに書けばワシが登録して置くわい。アッチに行くと色々大変だからのう」



「流石ハクレイさま!今すぐ書きますから」



レイナは『白猫』では有名人である。だからギルドに立ち寄るとひと騒ぎ起きるのだ。


それを見越してのハクレイの気遣いなのである。



「デューク、レイナの言う事を良く聞いて精進するんじゃよ。分かったかい?」



「はい!精進して必ず一人前の『白猫』になります」


デュークは改めて『白猫』になるという決意を新たにしていた。



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