第9話 デューク、ダンジョンに潜る(前編)

レイナは夕食を取る事にした。


一度リセットしてから考え直す為だ。



ギルマスとレイナの目論見はデュークにウルフ系等の魔獣をテイムしてもらい、フィールド要員として街と街の物流ネットワークを担って貰うはずだった。


しかし、メタルスライムをテイムした以上はフィールドでは無くダンジョン要員になるしか道は無い。


そうなるとレイナ自身も覚悟を決める必要があった。


過去と決別する覚悟である。




「デューク、夕食だぞー」


簡単な角兎の干し肉のスープとパンである。



「頂きます!!」


デュークはスープの肉を噛みながら言った。


「メタちゃん食べないのー??」


メタは一切反応しない興味が無い様子だ。



「ガオも飯だよ!!」


ガオは生肉そのままである。



レイナは夕食食べながらデュークに言う。


「デューク、明日からダンジョンへ潜るよ」



「ダ、ダンジョンですか??」



「メタルスライムをテイムした以上フィールドでの修行は無駄だ。明日からはダンジョン修行へ切り替えるよ。いいね?」



「は、はい…が、頑張ります」と自信なさげだ。



(まあ、その反応だろうなぁ…)


レイナは心の中でそう思った。デュークには一見向いて無さそうに見える。


だが、やってみないと分からない。化ける可能性もあるからだ。



(ダンジョンかぁ…僕に出来るのかな…)


デュークは全く自信が持てなかった。それで無くともウルフをテイム出来ず、乗り物酔いも酷くて自信を失ってるところに来てダンジョンだからだ。


と考えているとメタが突然デュークの前に出て来てぴょんぴょん飛び跳ねる。


オレに任せろと言わんばかりだ。



こうして明日からダンジョンに潜る事になった。




メタをテイムした所からそう遠くない場所に中規模ダンジョン【ディスティニー】があった。中規模だと大体60階層程のダンジョンを指す。


レイナはガオに乗って一気に20階を目指す事にした。低層階はレベル上げもイマイチだし初心者冒険者が邪魔なのだ。



覚悟を決めたレイナは呪縛を振り払うように言った。


「デューク、ガオで一気に降りるよ。後ろに乗って!」



「は、はい…」


まだ自信なさげなデュークの頭の上にメタが乗る。メタは何故か自信あり気だ。



「行くよ!ガオ!」とレイナが言うとガオが加速した。



冒険者達は驚いていた。テイマーが珍しいのに『白猫』のマークの盾を持っていたからだ。



9階まではガオの途轍もない攻撃力でフロアボスを一撃で倒していく。


レベルアップして行くデューク。



10階のフロアボスはミノタウロスが5体と少々厄介な魔獣である。



「デュークは降りて後ろで待機。防御は忘れないで!」



「は、はい!!」とデュークは盾を構えてブロック状態になる。



ガオはレイナを乗せたまま先程以上のスピードでミノタウロスに襲いかかる。


攻撃をガオが加えながらミノタウロスの攻撃をレイナが盾で防ぐ連係プレーで先ずは2体倒す。


が残りの3体の内の1体が違う動きをした。デュークに突進したのである。



「ちっ!デューク持ちこたえろ!!」



デュークは盾を構えて防御姿勢。ミノタウロスの攻撃に備える。とその時にメタが不意に消えた…その瞬間ミノタウロスが横に吹き飛ぶ!


メタがダンジョンの壁に当たった反動を利用してミノタウロスの横っ面に体当りしたのだ。しかも超高速で…


更にメタはファイヤーボールを顔面に連射して動きを止め、更に加速…ミノタウロスの後頭部に体当りが直撃。


血だるまのミノタウロスはそのまま倒れてピクリとも動かなくなった。



デュークの頭に戻ったメタはどんなもんだい!とばかりに胸?を張った。



(オイオイ…随分エグい攻撃しやがるな、あのメタ公は)


レイナは目を見張った。



後は2体のミノタウロスをガオが蹂躙。


フロアボスを攻略した。



「メタちゃん凄いよ!良くやったね!」とデュークは嬉しそう。褒められたメタも嬉しそうに飛び跳ねる。



「メタはレベルアップして攻撃力が上がってたんだね。街に行ったらスキルを見てもらおう」



デュークがドロップアイテムの魔石を回収しているとメタがやって来た。魔石を欲しそうにしている。



「レイナさん、メタが魔石を欲しがってるんですけど…」



「魔石?ああ、一個ぐらい構わないよ。しかし何だろうね?」



するとメタは魔石を取り込んでゆく…どうやらメタの餌は魔石らしい…



(コレは驚いたな…ひょっとするとアリかも知れないな)とレイナは考え直すことにした。



デュークは少し自信を持った。メタとならやっていけるかも知れないと。



「よし、先に進むよ!これからがホントのダンジョンだよ!」


レイナは浮かれる2人に激を飛ばした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る