第8話 デューク、テイムする。

ゲェエエエエエ!!


デュークは盛大に吐いている。


ガオに乗って2ヶ月…色々な場所に行ったのだが、最初の日からいわゆる乗り物酔いで大変だった。



「ったく、だらしないねえ。こんなので吐きまくってさ」


とレイナが呆れ顔だ。


「スミマセ…ゲェエエエエエ!!」



「うわあああ!!引っかけんじゃないよ!!」


とレイナ。今までこれ程乗り物酔いになる弟子は居なかった。


「ううう…すびません…」デュークが謝りながら吐いている。



「うーん、しかし困ったね…」


レイナが困っているのは乗り物酔いだけでは無い。


ローナイトを出てから2ヶ月、シルバーウルフやダークウルフと言ったウルフ系をバンバン倒してきたのだが、デュークは全くテイム出来なかった。


前はこんな事は無くみんな四足のテイムに成功していて、中にはレアなユニコーン系のテイムにも成功した事があった。



(どうもこの子は何かが違う気がするね…)



レイナはユニコーン系にターゲットを絞るべく頭をひねっていたがユニコーン系はそう簡単に現れない。


(これなら一回ワイバーンへダメ元で行くって手も有りかな…)


ワイバーンは空を飛ぶので倒すのは難しい面も有るのだけど、レベルは低めなので倒せない敵ではない。


しかもワイバーンのいる場所の把握が出来ていたので、そちらも候補に入れようかと考えていた。



「デューク!他に行くからちょっと物資調達して来るよ。しばらくココで待ってて。すぐ帰るよ!」



「分かりましたあ~。待ってま〜す」



レイナは急いで物資を調達に行った。



デュークはやっと落ち着いて来た。


(何でこんなに駄目なのだろう…)



情けなかった。他のメンバーは1ヶ月掛からずにテイム出来たと聞いていたので、自分もそのくらいでテイム出来るものと思っていた。だがいつまで経ってもテイム出来無い。



(そもそもテイム出来る能力が有るのかな??)


などと自分に疑いの目を向けるまで落ち込んでいた。


とりあえずレイナが帰るまで自分の身を守る為に大きい木の下に行こうと移動した時だった。



「痛っ!!」



思わず声を出した。デュークが歩いた時に何か硬い物に足を引っ掛けて転んだのである。


(何だよ~凄く硬いんですけど~)


デュークは引っ掛けた足元を見た。


すると其処には鉛の様な色の石が有りそれに躓いた様だ。


痛い足を見ているとデュークが引っ掛けた石が突然動き出した!



(何だ??石じゃないのか??)



デュークは身構える。するとその石がデュークに向かってきた!!



(石じゃ無い!コレは…ス、スライム??)



石かと思っていたのは鉛色のスライム…メタルスライムだったのだ!



(メ、メタルスライム??何でこんなのが居るんだ??)



メタルスライムはレアな魔獣である。


普通に居るスライムと違い出逢う確率が恐ろしく低い。更に逃げ足が凄まじく速い為に倒す事も困難な魔獣だ。


だがそのメタルスライムは何かが違っていた。



(お、怒ってる??)



メタルスライムは間違いなく怒っていた。


気分良く寝ていたのを蹴飛ばされたのだ。普通ならばびっくりして一目散に逃げ出すのだけど、何故だかこの時だけは腸が煮えくり返る位に怒っていた。



デュークは盾を構えて防御態勢に入る。


メタルスライムとの戦闘に突入した。


メタルスライムの攻撃は難なく防御出来たのでデュークはひたすら防御に徹した。メタルスライムはすぐ逃げると踏んでいたのてある。しかしこのメタルスライムはしつこく攻撃して来た。



(コイツ何なんだよ!まだ逃げないのかよ!)



デュークも段々とイライラして来た。


そのうちメタルスライムがファイヤーボールを撃って来たのをキッカケにデュークもキレた。



(クソっ!やってやるぞ!!コノヤロー!!)



レイナに習った盾での唯一の攻撃方法、シールドアタックのカウンターである。相手の攻撃に合わせてカウンターを撃つ。攻撃力の無い『ボックス』が最悪の事態に使う攻撃である。デュークはメタルスライムの攻撃に合わせてカウンターを食らわす。しかしメタルスライムは硬いので10数回に1回しかダメージにならない。



(コノヤロー!!コノヤロー!!)



お互いにキレてるので逃げる選択肢が無かったので攻撃は80回以上続いた。


すると遂にメタルスライムが倒れる。と同時にデュークのレベルが途轍もなく上がっていく。メタルスライムの経験値は半端無い。



(やったあ…やっと倒したあ…)



すると倒したはずのメタルスライムがデュークの方を見ている。



(ん?何見てるんだろう?)



デュークは警戒している。だかメタルスライムは離れようとしない。デュークも流石に根負けしてしまった。



「おい、怪我してるのか?コッチ来いよ」



メタルスライムはデュークの前にやって来る。流石にさっき出していた怒りの感情は無かった。持っていた低級ポーションをかけてやる。するとメタルスライムはとても喜んだ。



(良かった、喜んでる)



するとメタルスライムがデュークの前に来て、触手を差し出す。



「何だよ?仲直りか?良いよ仲直りしよう」



デュークが触手に触る。


感の良い人はもうお気付きだろう。


デュークはメタルスライムをテイムしてしまった。


そしてその後にレイナが帰って来た。



「デューク~帰ったよ〜」



レイナはデュークの足元に居る鉛色のスライムを凝視した!



「デューク!!足元!!」



「あっ、レイナさんお帰りなさい」



「デューク!!それ!!」



「あっ、メタルスライムですよ。さっきやっつけました!!」と得意気なデューク。



「はぁ????やっつけましたって…嗚呼あああ!!!」



「レイナさん!!どうしたんですか???」



「テ、テイムしてんじゃないのよおおおおおお!!」



「えっ?エエエエエエエエエ!!!!!」



こんなコントの様なやりとりだったがデュークは無事にメタルスライムをテイムした。



メタルスライム(レベル4)


スライム系で最高級の硬度と速度を持つ。攻撃力は低いがファイヤーボールを使う。



レイナは放心状態だった。


自分が居ない間に弟子がテイムしてしまうと言う失態。しかも四足どころか足の無いスライムとかどうなってるんですかと言いたいくらいの衝撃である。しかも滅多に出会わないし倒せない超の付くレアなモンスターのメタルスライムだったのが更にレイナを悩ませる。



(どうしたら良いのか…)



レイナが頭を抱えて悩んでる最中、デュークはテイムしたメタルスライムと遊んでいた。その能天気な感じも更にレイナを悩ませる。そのうちにデュークがメタルスライムにこう言った。



「そうだ!名前つけなきゃあなあ~何が良い??」



「うーん…メタルスライムだから…メタちゃんにしよう!!」



メタルスライムは不満げだが何か諦めたようだ。



(センス無えな…こんなトコだけ受け継ぐとか…)



確かに師匠と同じくネーミングセンスは無いようである。






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