第2話 デューク、『白猫さん』になる(前編)

「やっと着たかぁ〜」



その建物を見上げて少年はつぶやく。



ここは辺境の街ローナイト。中規模ダンジョン【バゼアル】の近くにある中規模の街である。


冒険者の街として栄え、宿屋や食堂が多くそれに伴い商人ギルドによって運営されている野菜や肉の市場がある。また、冒険者ギルドから卸される品を売る店や武器防具、魔法や薬なども活発に取引されている。



少年の名はデューク。


歳は15歳、黒髪で目は茶色。身長は150センチと小柄で童顔だ。


ローナイトより北西に80キロ程離れた場所にあるゼリフ村出身だ。父母を二歳の頃に亡くし、教会の孤児院で育った。


幼い頃から【キューブ】を使って村の手伝いをしてきたデュークは村人達から好かれており、15歳になったらローナイトに行かせる為に村人達がお金を少しづつ貯めていた。


『ボックス』の能力者のほとんどはギルド『白猫急便』で運び屋の仕事をするようになる為だ。


そして15歳のデュークは村人達から盛大に見送られローナイトにやって来たのだ。


そして彼の見上げているその建物こそがギルド『白猫急便』ローナイト支部である。



中に入ると何人かの『白猫さん』が居た。


何故分かるのか?それは彼らが背中に背負った盾に白猫のマークがついているからである。



「坊や、何しに来たの?」と受付のお姉さんが声を掛けてきた。


「ゼリフ村から来ましたデュークです!お世話になりますっ!!」


すると「ああ、話は聞いてますよ。こちらへどうぞ」と奥の部屋に案内された。



奥の部屋には大きな水晶玉が置いてあり、そこに黒いベールを被った女性が座っていた。


「新しい【キューブ】持ちがやって来ましたよ〜」と受付のお姉さん。


「おや、随分と小さいお兄ちゃんだね。コチラにいらっしゃいな」


案内されるがままに水晶玉の前に座る。


「それじゃあ早速見せて貰おうか…この水晶に手を当てて」


デュークが水晶に手を当てると水晶が光り出す…色は紫色だ。


「ほう…紫色とは珍しい。何かこの子は持ってるようだね」


黒いベールの女性が言うと受付のお姉さんが「どうしますか?養成所のオーグス所長に報告しますか?」


「いや、オーグスの前にライアンを呼んでおくれ。彼に視て貰うのが先だ」


「只今お呼びします。少々お待ちください」と出て行った。



デュークは(何か有ったのかな…参ったな…)などと考えていたがそれを感じたのか黒いベールの女性が


「心配しなくても良いよ。ちょっと変わった色なのでね調べるだけさ」とデュークに言った。



しばらく待つと「お待たせしました。」と背の高い銀髪の男がやって来た。彼の目は美しい金色でじぃーっと見てしまった。


「ライアン、久々の紫が出たよ。視ておくれな」


「では早速。坊や、ここに座って」と後ろの席を指差した。


デュークは緊張しながらライアンの向かい側に座る。


「じゃあ、私の眼をよーく見て…」とデュークに促す。


デュークはライアンの金色の目に吸い込まれる様に見る。


するとライアンは「おっ…コレは…」と言ったまま視線を外し考え込んでしまった。


(何かマズイ事になったのかな…)


デュークはどうしたら良いのか分からなくなり更に緊張して来た。


ライアンは黒いベールの女性に何事か耳打ちした後に「副長に相談して来ます。坊やはもう少しここで待っててね」とデュークに言った。


ライアンが出て行った後で黒いベールの女性が「これは面白くなってきたね…」と少し笑っているのを見てデュークは生きた心地がしなかった。


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