終~誰かのある日の昼下がりに~
「ねぇ、由良くん。良けれb」
と、王子が言いかけた時。
「おーいっ!結斗っ?」
ドタバタと保健室へ駆け込んで来たのは、
翔だった。
「あっ、翔!」
僕を見た翔は、ハタと静止する。その顔は非常に驚いた表情をしていた。
あっと思い、ハッとする。
僕は、半裸だった。
「ほーら、由良くん?いろいろ終わったし、服、着よっか?」
と、すごい笑顔で話しかけるのは王子である。
「っは?え、結斗…いろいろって」
と、呆然とする翔。
そして、王子を見る。
僕には翔がどんな顔で王子を見ていたのか分からなかった。
「え?いや、違って!ただ、僕は、怪我を有無を確認してもらっただけだよ!」
何故か焦る僕。
「ああ、なんだ、そういうことね。」
翔はホッとしたように言った。僕はそそくさと体操服を着る。
翔はジロっと王子を見ると、
「…へぇー、王子って面倒見がいいんだねぇ~。性格まで素敵なんてねぇ~?」
と、翔が茶化すように言う。
……まったく、翔は性格さえどうにかすれば、モテるのに……
そんな挑発をさらりと受け流す王子。
「クスクスっ。王子だなんて大袈裟だよ。面倒見がいいとかじゃなくて、
___ただぐうぜん、あの時、彼の近くにいたからだよ?」
と、笑顔でしれっと答える。
翔は、王子を見て何か呟く。その呟きは僕の位置からは聞こえない。
そして僕の方へ顔を向ける翔。
「もうすぐ、保健室の先生が来るけど…見てもらうか?」
「いや、もう元気だよ。」
と、ベットから立つと、ふらっとする。
「おおっとっ」
と、サッと翔に支えられる。
「熱中症なんだから、ゆっくり動いた方がいいぞ」
…やはり、
周りからしたら熱中症と見なされているのか…。
納得する頭の片隅では、どこか腑に落ちないところがある。
でも、思い出すなと危険信号が発される。
ま…いっか!
「もう、下校時刻だから、ほれ、鞄持ってきたから帰ろーぜ!」
「ありがとう!」
この男は、性格は、まぁ良くないが、自分の好いている人には、とてつもなく優しい。
僕は、あっと気づき王子を見る。
「園宮くんは、どうするの?」
ボーッと僕の方を見ていた彼は、はっと気づき、
「じゃあ僕は、結斗くんが元気になったことを先生方に伝えておくよ。
…それじゃ、またね」
にこやかに手を振られた。
ふむ………やっぱり、気遣いまでできるのか…まるで翔と大違いだ…。
何かを察した翔は、くるりと振り向く。
「結斗ー?今失礼なこと考えてたー?」
「えっ!ち、違うよっ!!」
いつも通り、僕らは帰路に着いた。
そう、思えばこの時から
とうの昔に止められた
2つの時の歯車は、ゆっくり、軋きしみながら動いていった。
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