第1章 後日譚

誰かの悶々~1人目

ふわっ。


王子と呼ばれる彼が出したハンカチから、日常生活で嗅ぐことの無い匂いがした。


普通なら王子のハンカチと言えば、バラとか石鹸の香りとかするかもしれない。


――あれは…睡眠作用のある薬品。そして…



…媚薬。も含まれてそうだな、きっと。

そーゆー系は、あんま嗅いだことないから分かんないけど。



薬物に感覚を刺激されてきた俺の鼻は誤魔化すことなんてできない。


…恐ろしい人がいたものだ。

そして、そいつは同じ学校。さらには、同じクラスなんて。



あーあ、かわいそうに。

ぶっ倒れたあの子大丈夫かなぁ。か弱そうだったし。

まあ、臭いは微かだったから、あんまり強い作用はないと思うけど。



───と思うのは上っ面だけで、心底では興奮していた。

この非日常をぶち壊す、普通の人間なら発しない香りを纏う王子、

いや、



異常者に。

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