コソコソ

「ねぇ、あれがツイッターでまわってきた…」

「じ、実物の方がすごっ!」

「本当に王子だわ…」



何やら、コソコソと聞こえてくる。

「翔?なんか、異常に人がいるような気がするけど?こんなもんなの?」

 

僕より、背が高い翔は、僕が顔を少し見上げる形になる。



一瞬。翔の顔がしかめられた気がした。少ししか見えないため、定かではない。



だが、フッとこちらに向けた顔は、ニヤニヤした顔だった。

「俺的には、王子よかお姫様の方が気になるぜぃ!!」


僕は、さとすように微笑む。

「はいはい。静かにしよっか??」



そして、人が流れていく先に進もうと視線を前へ向けた。



____その時。丁度、人の群れが割れた一瞬だった。




僕は、王子様を見つけた。





誰に言われなくても、噂のことを知らなくても、ぱっと頭の中で、王子様と変換されるような容貌だった。


それほどまでに、噂通りの王子様ぴったりの顔が、こちらを見ていた。



…ような気がした。



「結人?先行くぞー?」


人の波に捕らわれ、遅れていた僕を気遣うように声をかけられた。翔は、王子に微塵みじんの興味も無いらしく、ズンズン進んでいく。


僕も、特に気にすることなく校舎の方へ向かっていった。




____翔には言わなかったが、




僕は、王子の面影をどこかで見たことがある。




記憶が欠落しているかのように、思い出すことができない。


昔のことなんて、良い記憶が無ければ、さほど覚えていないものだ。


それに、次の瞬間には王子のことなど、忘れていた。

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