第26話 魔王と御剣の妹・成長

「そらよっ!」


「グオオオオンッ……」


 巨体が倒れ、倒した事を確認する。


「流石御剣さんだな!」


「玲於奈ちゃん、凄いよ本当に!」


「別に……」


 大した事してねぇ。

 つか、私は他の『勇者』と『聖女』を舐めていたかもしンねぇ。

 初期ステが私より低いから、どうせ強くなンねぇだろって。

 けど、それは違った。

 確かに、槇村パイセンだけだったり、味醂だけだったなら、大した事は無い(私からしたら)けど、こいつらが『合わさる』と化ける。

 まず、『勇者』の槇村パイセンは、固有スキル『投球』があった。

 これは、その辺の石ころでも良ンだけど、投げる事で凄まじい威力の弾丸になる。

 魔物のしゅび力が、槇村パイセンのこうげき力より大分上だったのに、貫通したのがその証拠だ。

 ンで、『聖女』の味醂。

 正直、コイツが一番凄いかもしれねぇ。

 『聖女』らしく、味方の補助に長けていた。

 『回復』だけじゃなく、こっちのステータスにバフ(いわゆるステータスの上昇効果)を掛けられる。

 『バイキルトン』なんつー、私もよくやったゲームの名前に酷似した『魔法』を使われた時は、吹き出しちまった。

 味醂も恥ずかしそうだったから、恐らく似たような心境だったろう、最初は。

 しかし、それを掛けられたこっちのステータスはヤバかった。

 プラスじゃなく、倍になるようだった。

 それは槇村パイセンと私のこうげき力の上昇値が違った事から判断できた。

 つまりは、味方が強ければ強いほど、その効果は上がるってこった。

 あ、私も仮にも聖女なンだから、そういうの覚えれねぇのかなって思ったら、覚えれた。

 『バーサーク』(固有技)(自)っての。

 かっこして自とか書いてあっから、自分にだけみたいだが、試してみたらこうげき力が三倍、すばやさが二倍、しゅび力が半分になった。

 MPも固定値じゃなく、割合いで減るみてぇだけど、かなり強力な『スキル』だと思う。

 槇村兄妹も、最初こそ苦戦をしながらだったが、今では私が居なくても、魔物を倒せている。

 経験値の事で気付いた事と言えば、倒さなくても経験値は入るようだった。

 味醂が『魔法』を唱え、槇村パイセンに補助を掛けてから魔物を仕留めると、槇村パイセンだけじゃなく、味醂にも経験値が入っていたようで、レベルが上がっていたからだ。

 ここの魔物はレベルの上下が激しい。

 あのレベル91の魔物も、下の方のレベルだったみたいで、平気で500とか出てきた時は、流石に逃げ出した。

 今なら余裕で瞬コロだけどな。

 ちなみに、兵士の諸君には邪魔なので入口に戻ってもらった。

 何か言おうとしたが、邪魔、来ても守らねぇかンな!とはっきり言ってやったら、口を噤んだ。

 しかし、気になる事が一つあった。


「ケイ、敵の方がレベル高けぇってのに、なんでケイはレベル上がらねぇんだ?」


「あ、あはは、なんででしょうね……」


 そう言うケイも困った表情をしていたが、こればかりは分かンねぇしな。

 ケイのレベルは89だ。

 この魔の森で出会った魔物は、大体10から700前後。

 倒しゃーあがンだろと思って、何度かケイにもトドメささせたンだけどな。

 なンでか上がりゃしねぇ。

 後正直、最初に行くにしてはリスキーすぎると思ったンだけど、入り口付近なら、大体10前後の魔物が多いと聞いていたそうだ。

 あの熊は珍しかったンだと兵士の人が言ってた。

 ちなみに、これが今の私のステで、割と強いンじゃね?



御剣 玲於奈 女(16歳)


職業 勇者(暴) 聖女?(暴)


称号 戦乙女(強)


Lv.650


HP    1,225,000/1,227,000  成長レベルS


MP    807,000/1,227,000   成長レベルS


こうげき力 334,000   


しゅび力  327,000   


ちから   334,000    成長レベルS+


まりょく  334,000    成長レベルS+


たいりょく 327,000    成長レベルS


すばやさ  334,500    成長レベルS+


きようさ  335,000    成長レベルS+


みりょく  777



スキル一覧


『鑑定』 『鑑定妨害』 『鑑定詐称』


『ギガストラッシュ』(固有技)(剣必須)


『バーサーク』(固有技)(自)


『雷属性魔法』



 なんか、称号に強ってついてンし、職業に至っては聖女にクエッションマークがついてンだけど。

 これもう少ししたら、聖女なくなンじゃね?

 女神もついに疑問視してね?

 後、ケイが言うには、この称号は経験値の補正もあるらしく、レベルが上がりやすいんだそうだ。

 だから、他の二人よりも私はレベルがかなり高い。

 ま、同じくらいに二人には見せてっけどな、『鑑定詐称』で。

 数値は異様に上がってンよな。

 綺麗な数値で見やすくて助かるけど。

 ちなみに、槇村パイセンでこうだ。



槇村 重雄 男(18歳)


職業 勇者


称号 武士


Lv.401

HP    300000/300000  成長レベルA

MP    10300/10300   成長レベルC

こうげき力 243000   

しゅび力  32800

ちから   243000    成長レベルA+

まりょく  10300    成長レベルC

たいりょく 32800    成長レベルA

すばやさ  32500    成長レベルA

きようさ  33000    成長レベルA+

みりょく  50       


スキル一覧


『鑑定』


『投球』(固有技)(物必須)


『魔王特攻』(パッシヴスキル)



 『鑑定』のレベルが上がったからか分かンねぇけど、いつのまにか成長レベルやスキルも視れるようになった。

 気になンのは、私にはない『魔王特攻』(パッシヴスキル)だな。

 これがもし、異世界に召喚された『勇者』特有のものなら、なんで私にはねぇンだ?

 色々と分からねぇトコがまだあンな。

 称号が武士だからか、ちからの上がりが他とダンチだ。

 けど、このままなら私のしゅび力を突破できねンだけど……味醂の補助が入れば話が違ってくる。

 243000の二倍は486000だ、私のしゅび力数値を超える。

 今は敵ってわけじゃねぇけど……どうなるかはわかンねぇかンな、用心するに越したことはねぇ。


「そろそろいっか。槇村パイセン、味醂、私らはこれくらいで先へ行く事にすっから」


「「え!?」」


 二人が驚いた顔をする。

 なンだ、このまま一緒に街へ戻ると思ったン?


「私は兄ちゃんを探してるのと、もう一つ約束があってね。だから、街には一緒に戻らねぇよ」


 そう言ったら、二人はしょうがないなって顔をした。

 兄弟だかンか?よく似てる気がする。


「そっか、ありがとう御剣さん。あの御剣が……ええと照矢が、あんなに溺愛してるくらいだから、どんなお嬢様なんだろうって思ってたけど……想像以上にしっかりしていて、驚いたよ。それと、想像以上の美人さんだった」


「もうお兄ちゃん!ごめんね玲於奈ちゃん、失礼な兄で。お兄さん、見つかると良いね!私達がもし会えたら、絶対に玲於奈ちゃんの事伝えるからね!」


 そう言ってくれる二人に、私は微笑んだ。


「ン、あンがと」


「「!?」」


 なんでそこで、信じられない者を見たって顔すンの?


「こ、これは御剣が溺愛するわけだな……」


「凄い!普段ツンツンしてる人の笑顔って、こんなに破壊力があるの!?私、同じ女なのにドキドキが止まらないよ……!」


 ……なんか阿呆な事を言ってるこいつらは無視すっか。


「行くよケイ」


「あ、待ってくださいお姉様!それではお二方、ごきげんよう」


「ああ、御剣さんを、よろしくなハルコさん」


「ご武運をお祈りしますね、ハルコさん。玲於奈ちゃんを頼みます!」


「はい!」


 兄ちゃん、この世界に居るのなら、絶対に探しだすかンな!

 こうして私達は魔の森を抜け、次の国であるドロワーズへと向かった。

 その国を抜ければ、魔大陸の入り口まであと少しだ。

 聖ユーラシア大陸の西南西、魔大陸とは正反対に位置する聖王国リュードから、ひたすらまっすぐに魔大陸へ向かって直進コースで進んできた。

 道沿いにある国は残す所あと二つ。

 はやる気持ちを抑え、ケイに乗って進む。


「なんか遅せぇぞケイ、手ぇ抜いてやがンな?」


 そう思って背をつねる。 


「ひぃんっ!?さっきと同じですー!?お姉様のレベルが上がったからですよぉ!!」


 そういうもンか。

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