第20話 魔王とレベルアップ
前回の地下10階のワープポイントに移動した。
荷物もそのままだ。
エターナルフォースブリザードソードを手に取り、次の階層へ。
1階から10階までは、全部大体が草原で、所々に木が生い茂ってるって感じだったのだが……。
「これ、浜辺、か?この世界にも、海ってあるのミレイユ?」
「うむ、妾は行った事は無いのじゃが、教わってはいるぞ」
成程。
もしかして魔王ダンジョンは、外にあまり行かない自分の為に、景色を色々と創っているんだろうか。
ここまでの道のりも、ピクニックみたいな気分で行けたんだよな。
魔物も、ウサギみたいな可愛いらしい魔物だったし。
と思って浜辺を見渡すが、魔物の影すら見えない。
「なぁ、もしかして、これ海の中に入らないとダメ、とか?」
「どうじゃろうな。しかし、次の階はすぐそこにあるぞ?」
「え?」
ミレイユが指差す方向には、下へ降りる階段があった。
何の為に存在するの、ここ。
「魔物も見当たらないし、降りるか?」
「そうじゃ……む?テリー、あれはなんじゃ?」
言われて見るけど、別に何も……あー!
「蟹だっ!」
「カニ?カニとはもっと、小さいのではないか?」
「ああ、小さい蟹もいるんだけど、食用の大きな蟹もいるんだよ。ちょっと『鑑定』してみるか』
ズワイガニ♂(??歳)
ケセンガニ科
Lv.302
HP 18/18
MP 5/5
こうげき力 300
しゅび力 52000
ちから 300
まりょく 11
たいりょく 52000
すばやさ 45000
きようさ 1
みりょく 31
能力値を見て、俺は震える。
「ば、馬鹿な……!」
「ど、どうしたのじゃテリー?なんぞおかしい所があったか!?」
「俺の……俺のみりょくが、蟹に負けるだとおおおおっ!?」
「……」
「なんていう事だ……あんな蟹に、俺がみりょくで劣るというのかっ……!」
「その、なんじゃ。妾はテリーの方が良いぞ?」
「ああ、ありがとう……」
泣いてない、泣いてないよ。
「ってか、なんてしゅび力だよ。あれじゃ武器無しだと、俺の攻撃は通らないな。それに、すばやさも段違いだ。はぐれメ○ルもビックリだよ」
あの見た目で素早い動きとか、見た目怖いよ。
「じゃがテリー、蟹は横にしか移動できぬと聞いたぞ?」
「ああ、そういう事か。よし、挟むぞミレイユ!」
「うむ!」
俺達は蟹を両端から追いつめる。
しかし、俺達の予想をこの蟹は超えた!
「飛ん、だっ!?」
「ぬわー!?」
「ミレイユ!?」
蟹が、ミレイユにダイブした。
倒れるミレイユ。
その顔には蟹が。
HPが気になったので見たが、ダメージは受けていなかった、良かった。
まぁ普通に考えて、こうげき力300程度ならミレイユはダメージを受けないけど……。
俺の近くに居ると回復するから、1受けてたとしても大丈夫だし。
「むぐむごー!?(助けぬかー!)」
あっと、蟹を引き剥がさないと!
「こんのっ!!」
「もがー!?」
なんだ、ミレイユの顔に引っ付いて離れないぞ!?
良く見たら、ミレイユの首に、その長い脚が全て巻き付いていた。
これ、異世界の概念が無かったら、滅茶苦茶痛そうに見える……。
あんまり強くしたら、ミレイユにダメージいきそうだし、どうしよう。
「えっと、ミレイユ。そのまま一旦帰って、スラリンに取ってもらわないか?俺だと、ミレイユごと倒しちゃいそうで怖い」
だから正直にいう事にした。
ミレイユも首を縦に振った。
うん、蟹が上下に動いて吹き出しそうだ。
途中で蟹が落ちたら儲けものと思ったんだが、なんとこの蟹、ずっとミレイユの顔に引っ付いたままだった。
「あの、ミレイユ様?なにを、してるんです~?」
スラリンがそう言うのも無理は無かった。
事情を説明したら、スラリンが蟹を包み込み、窒息させた。
まだ裏返ってピクピクしてたんだけど……。
「さぁミツルギ様、そのハラワタを、打つべし!打つべし!です~♪」
スラリンにファイティングポーズでシュッシュッ!とシャドーボクシングされたので、一発殴ってみた。
『簡易鑑定』で見てみたら、HPは1だけ減ってた。
つまり、後17回殴れと?この、無抵抗のピクピクしてる蟹、を?
ミレイユとスラリンを見たら、うんうんと頷いている。
や、やるしかないのかっ!
「う、うおおおおおっ!!」
心を無にして、打つべし!打つべし!!
計17回、殴る事で、蟹は消えた。
ああ、罪悪感が凄い……!!
でも、おかげでかなりレベルアップできた。
御剣 照矢 男(18歳)
職業 勇者
Lv.160
HP 250000/250000 成長レベルS+
MP 8000/8000 成長レベルB
こうげき力 39000
しゅび力 36800
ちから 39000 成長レベルSS
まりょく 17000 成長レベルA
たいりょく 36800 成長レベルS+
すばやさ 35500 成長レベルS
きようさ 37000 成長レベルS
みりょく 30
みりょくは、上がらないんだな。
蟹に、1負けてる俺のみりょくは……。
どういう判断なんだよ、みりょくって!?
葛藤してたら、ミレイユから話しかけられた
「次から妾は離れておくでな。行くぞテリー」
そう微笑んでくれるミレイユに、俺はやる気を取り戻した。
「そだな、行くかっ!」
「うむ!」
「行ってらっしゃいませ~♪」
今思ったけど、魔王ダンジョンの魔物は、外に出れるんだな。
配下ってわけじゃないからか?
まぁ、深く考えても仕方ないな。
逃げ回る蟹に苦戦しながらも、エターナルフォースブリザードソードのおかげで、当たれば一撃だ。
何匹も倒し、蟹のレベルに追いついてから、階段を進んで行った。
途中、海が赤くて驚いたけど、空が夕焼けなだけだった。
そんな所まで再現してるのかよって驚きを超えて感心してしまったけど、ミレイユは嬉しそうに眺めていたから、良いかと思った。
そして20階、なんの変哲もない浜辺を、ただ横切っただけ。
海の中に入れば、まだ何かあったかもしれないけど……とりあえず、先へ進んだ。
ここまでで分かった事は、10階単位でダンジョンの構造と魔物が変わる。
1階から10階は草原、魔物は小動物。
10階から20階は浜辺で、魔物は蟹や貝。
10階までと違って、宝箱は一切無かった。
レベルも大体統一されていて、10階までは100前後、20階までは300前後だった。
とりあえずは、敵のレベルまで追いついてから、次の階層に進むようにしようとミレイユと話した。
今日はまだ時間もあったので、そのまま30階にも進んだ。
そこには車があった。
なんだこれ、車って。
乗れって事?
「なぁミレイユ、これ……」
「乗れって事じゃろうなぁ」
「ですよね……」
オープンカーって言うんだろうか?屋根のついてない車。
つーか、タイヤが無い。
これ走るのか?
色々と不思議だけど、運転席に座る。
ミレイユも助手席に座った。
「俺、車の免許持ってないんだけど……」
「免許ってなんじゃ?」
あー、この世界にはそういうのないのか。
簡単に、俺が知ってる事をミレイユに説明する。
「成程、そういう制度もあるんじゃな。テリーの世界は、進んでおるのぅ」
なんか感心されてしまった。
まぁ、魔法とかステータスが見れないとかあるけど、その分文明レベルは高いと思う。
「ま、習うより慣れろと言うじゃろ、試しにやってみよテリー」
そうだな、うだうだ悩んだって仕方ない。
本来なら車のキーを差し込む所に、ボタンがあった。
とりあえず押してみる。
ブォンッ!
音と共に、エンジンが掛かったというか、少し車が空に浮いた。
おお、ファンタジー!!
俺が喜んでいると、ミレイユが隣で笑いだした。
「お主、子供のようじゃのう」
5歳のミレイユに子供と言われるなんてっ!!
でも仕方ない、今俺は凄いドキドキしてるんだから。
足元には、二つ踏むペダルがある。
多分、アクセルとブレーキだろう。
左がブレーキだよな……?
そう思って、左のペダルを踏んでみたら何も起こらなかった。
つまりは、右がアクセルで合ってるって事だな。
ゆっくりと右のペダルを踏んでいく。
すると、ゆっくりと車が動き出した。
「おお!動いておる!動いておるぞテリー!」
人に子供とか言っておいて、ミレイユも十分はしゃいでいる。
でも、それを言うのは野暮ってもんだよな!
そのまま車を走らせる。
道は一本道、俺達は束の間のドライブを楽しんだ。
御剣 照矢 男(18歳)
職業 勇者
Lv.300
HP 440000/440000 成長レベルS+
MP 13000/13000 成長レベルB
こうげき力 59000
しゅび力 56800
ちから 59000 成長レベルSS
まりょく 37000 成長レベルA
たいりょく 56800 成長レベルS+
すばやさ 55500 成長レベルS
きようさ 57000 成長レベルS
みりょく 30
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