第19話 魔王と御剣の妹・追手
目が覚めたら、体の上がやけに温かい。
「うぅん……」
ああ、そうか。
あの後ハルコケイってのと宿屋に泊ったンだったな。
外が騒ぎになってるかもしンねぇし、見張られてても厄介だかンな。
早朝には出たかったンだが……寝過ごしたか。
つか、なンでこいつ私の上で寝てんだ、暑苦しい。
そのでっかい重りは私に対するあてつけかコノヤロウ。
「お姉様の厚い胸板、素敵ですぅ~……」
オーケー、その分厚い脂肪の塊を今握りつぶしてやンよ!今生の別れは済ませたかよ!?
ぎゅぅぅぅぅぅっ!!
「ぎにゃぁぁぁぁっ!?」
宿屋に悲鳴が木霊した。
やかましい奴だな。
「うぅ、酷いですお姉様。やるなら起きてる時にして欲しいですぅ……」
起きてる時なら良いのかよ。
はぁ、変な奴助けちまったなぁ。
「起きたなら、さっさと支度しな。出っからよ」
「外、大丈夫でしょうかお姉様……」
昨日の馬車の仲間が捜索してるかもしンねぇって事だろ、分かってンよ。
「堂々としてな。連中はお前を見つけても、なンもできねぇよ、街中ではな」
「そ、それはそうかもしれませんけど、それ、外に出たら捕まるって事じゃ……!?」
「ああン?お前は誰と一緒に居ると思ってンの?」
「お姉様です!けど、流石にお姉様だって、大勢に囲まれちゃったら、多勢に無勢じゃありませんか?」
レベル30程度の、あんな味噌っかすなステの奴らに、私が負けるとは思えないンよな。
マレッジって奴のステ基準だけど。
私の方が数十倍強かったし。
異世界補正ってすげぇ。
「あー……、確かにここにお荷物がいンからな。お前、ちょっとステ見せてみろ」
「いやぁん!お姉様、私の事が知りたいだなんて、嬉しいです!」
「違げぇよ!お前のステが分からなかったら、どこまで任せれるか分かンねぇからだよ!」
こいつの相手、すげぇ疲れるンだけど。
見た目は清楚なのに、なンでこんなに疲れる性格してンだよ。
「お姉様に覗かれるぅ!」
叩き潰してやろうか、ああン!?
まぁ、ちゃんと『ステータスオープン』と言ったから、良いけどさ。
ハルコ=ケイ♀(1001歳)
職業 巫女
称号 退魔乙女
魔狐族(希少種)
Lv.89
HP 3265/4765 成長レベルC
MP 9000/9000 成長レベルA
こうげき力 1123
しゅび力 1001
ちから 1123 成長レベルD
まりょく 9944 成長レベルA+
たいりょく 1001 成長レベルE
すばやさ 1915 成長レベルC
きようさ 2298 成長レベルC
みりょく 600
スキル一覧
退魔術式『火遁』 退魔術式『水遁』 退魔術式『治癒方陣』 『隠蔽』
嘘だろ、こいつ強いじゃねぇか。
レベルもあンだろうけど、現時点で私よりまりょくは上だ。
なんでこんな強いくせに、捕まったンだ?
いや、それよりも、だ。
「テメェ、歳を鯖読(さばよ)ンでンじゃねぇぞ!?」
「ひぃぃん!?お姉様には視えてるんですかぁ!?」
「100の横に1があンじゃねぇか!ババアってレベルじゃねぇかンな!?」
「じ、実は私達の種族は、1000歳で10歳なんで……」
「無理があンからな!!」
「ひんひん……!」
はぁ、こいつの相手はマジで疲れンだけど。
まぁ良い、こいつが戦力になりそうなのは朗報だ。
性格は置いといて。
HPが減ってるのは、さっきのアレでか?
まぁどうでも良いンだけど……。
「アンタ、なんでそんなに強いのに捕まったンだよ」
「むぅ、お姉様……」
「あンだよ?」
「私の事を根掘り葉掘り聞くのに、一度も私の事を名前で呼んでくれないです!」
「あン?そんな事どうでも……」
「良くないです!私、お姉様に生で呼んで欲しいです!」
生でってなンだよ。
「あ、名前で、です。噛んじゃいました」
いや噛んじゃいねぇだろ。
はぁ、まぁ良いか。
「ケイ、これで良ンか?」
ハルコよりケイのが短いかンな。
「はいっ!お姉様!」
なンでこいつは、そんな事でいちいち一喜一憂すンだか。
でも、そういや似てるな……兄ちゃんも、私のする事にいちいち喜ンだり凹ンだりしてた。
思い出して、少しクスッと笑ってしまう。
「!!お姉様が、笑った!?す、素敵……!!」
「ハァ!?なんなンだよ、気持ち悪い事言うンじゃねぇよ!?」
「だってお姉様、ずっとムスッとした感じで……その表情もとっても素敵なんですけど……!でもでも、そんな表情から、今天使みたいに可愛い笑顔がっ!はうぅぅぅ!私、一生憑いて行きます!」
「魔大陸までだろ!家族のとこに帰るンだろ!?」
「それはそれ、これはこれですー!」
……大丈夫か、こいつ。
とりあえず、ケイが強い事は分かったし、堂々と街を出る事にする。
案の定、私達の事を目ざとく見つけた奴らが、少し離れた位置から追いかけてくる。
街の中に入るのは通行証が要るみたいだが、出るのは特に何も要らないみたいだな、助かる。
ただ、門番がケイを見て驚いた顔をしていたから、こいつは昨夜の奴かもしンねぇな。
ぶっ倒しても良いンだけど、どうせ下っ端だろーし、トカゲのしっぽ切りをしても仕方ねぇ。
ケイはビクビクしながら、私の腕にしがみつきながら歩いている。
その胸を押し付けンじゃねぇ!!
このイライラを、こいつらにぶつけてやンか。
街からある程度離れた所で、囲まれたンでな。
「よぉ美人のねぇちゃん。そいつを返してもらおうか?」
「あン?人はもちもンじゃねぇだろ。テメェらの元にこいつが戻るって言うなら、私は何も言わねぇよ?」
そう言って、私の腕にしがみついているケイを見る。
「い、嫌です!私は、貴方達の元になんて行きません!」
そうはっきりと、拒絶の意を示した。
なら、私がする事は一つだ。
ケイの手を振りほどく。
「しょうがねぇ、手荒な真似はしたぶふぉっ!?」
「「「なっ!?」」」
しゃべってる奴に、飛び蹴りを放つ。
こういう奴らのお決まりの文句を、律儀に聞いてる馬鹿がどこにいンだよ。
さて、次!
「て、テメェ!ぐはぁっ!!」
「こっごふぅっ!!」
右に居る奴を右ストレートでぶっ飛ばして、左に居る奴をそのまま蹴飛ばした。
飛ばされた奴が近くに居た奴にぶつかって、ドミノみたいに倒れていく。
当たらなかった奴に瞬時に近寄って、顔を殴り飛ばす。
「ぐはぁっ!!」
そして、全員地面に転がった。
「だっせぇ」
そう言い捨てる。
こいつら弱すぎだろ。
「す、凄すぎますお姉様……!」
目を輝かせてるとこ悪いけど、ここからはちょっと良い子にはお見せできないンだよな。
私は転がっている奴らの腕と脚の関節を外していく。
「ぎゃぁぁっ!?」
「いでぇっ!!」
「がぁぁっ!な、なにしやがる!!」
いやだって、動けたら面倒じゃン?
私は中学生の時に男に襲われてから、こういう護身術を一生懸命覚えたンだよね。
スタンガンだって常備してたし。
今も実は持ってンだけど、使えるかこいつで試してみるか。
出力最大っと。
ポチッとな。
バヂバヂバヂバヂ!!
「ぎゃっ!」
おお、効いた。
失神したよ。
それを見た周りの奴らが、怯えた顔に変わる。
こーいう奴らはいつもそうだ。
相手が弱いと思ったら、調子に乗ってやがるくせに、自分の方が不利と分かったら、すぐに逃げ出す。
反吐がでンだよ。
「おい、こいつみたいにすぐ意識を失えると思うなよ?今からテメェらは私の実験台だ。色々、付き合ってもらうかンな?」
その言葉に、こいつらの顔が青くなった。
テメェらが狩られる側になった気分はどうだよ?
こっちが弱かったら、テメェらは私達に好き勝手したんだろ?
だから、私は容赦しねぇ。
死ぬより辛い事が、この世の中にはあるって事を、教えてやンよ。
「お、お姉様?」
ケイが不安そうに呼ぶから、言っておく。
「少し離れて休ンでな。こいつら始末したら、呼びに行くかンな」
「分かりました。その、置いて行かないでくださいね、お姉様」
ああ、それを不安に思ったンか。
「安心しな。私はケイを魔大陸へ連れてくって約束したかンな。私も、約束は破らないンだよ」
その言葉を聞いて、安心したのか離れていくケイを見送る。
そして、こいつらへと笑いかける。
「さぁ、ショータイムのお時間だ。せいぜい、良い声で鳴くンだな?」
人通りの無い通りで、男共の断末魔の声が鳴り響いた。
おっ、こいつらのお蔭でレベルが上がった。
クズでも役に立つもンだな?
御剣 玲於奈 女(16歳)
職業 勇者 聖女(暴)
称号 戦乙女
Lv.31
HP 27000/27000 成長レベルS
MP 27000/27000 成長レベルS
こうげき力 34000
しゅび力 27000
ちから 34000 成長レベルS+
まりょく 34000 成長レベルS+
たいりょく 27000 成長レベルS
すばやさ 34500 成長レベルS+
きようさ 35000 成長レベルS+
みりょく 777
スキル一覧
『鑑定』 『鑑定妨害』 『鑑定詐称』
『ギガストラッシュ』(固有技)(剣必須)
『雷属性魔法』
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