第7話 魔王の配下
ミレイユが何かを唱えると、地下への階段が出現した。
その階段をミレイユと共に降りて行こうとしたら、スラリンが階段の上で止まっているのが見えた。
「どうしたんだスラリン?早く行こうぜ!」
「すみません~……私は、行けないんですぅ~……」
そう、悲しそうな表情で微笑んだ。
「どうして……」
「その場所は、魔王様専用の修練場なんです~。私達魔物は、立ち入りを許可されていませんからぁ~……」
そういう、事か。
「ミレイユ、その許可って、ミレイユがしたら行けるんじゃないか?」
「いや、それは無理じゃ。そういう場所として、創られておるからな。妾の配下は絶対に扉をくぐれぬじゃろう」
そうか……スラリンの力を、当てにしていなかったといえば嘘になる。
ならなおさら、気を引き締めないとな。
「分かった。スラリン、ミレイユは絶対に俺が守る。だから、任せてくれ!行ってくる!」
そう手を振って、俺は階段を下りていく。
ミレイユも振り返らず、俺に続く。
スラリンは、俺達の姿が見えなくなるまで、見送ってくれていた気がする。
☆☆☆☆☆
「魔王様は行かれたかスラリン」
「はい~」
「本当に勇者を召喚してしまわれるとは、流石は魔王様だな……」
「ですねぇ~」
「しかし、何故魔王様は、勇者をこの世界に留めようとせぬのだ?人間達のように、召喚して後はこの世界で生きよとするのが、代償も無く楽であろうに」
「デュラハンさん」
スラリンの目が、刃物のように鋭くなる。
それを見たデュラハンは、一歩身を引いた。
「ミレイユ様は、お優しいお方です~。下等な人間共と、一緒にしないでくださいね~?次言ったら、その首狩りますから~。あ、もうすでに首は無かったですね~」
「あ、ああ。すまない。私は他の者達に、説明をしてこよう」
「は~い、お願いしますね~」
デュラハンは、そそくさとその場を離れる。
魔物にはランクがある。
それは、人間達によって危険度でつけられたランクではなく、元々の階級である。
まずは兵隊。その兵隊の中にも、二等兵、一等兵、上等兵という位がある。
大半が、ここに位置する。人間の軍隊と同じようなものだ。
そこから、貴族のような階級に別れる。
伯爵位、侯爵位、公位、大公位と位は変わり、公位ともなると、勇者でも一人では苦戦するレベルだ。
悪魔公(デーモンロード)と呼ばれる存在も、この公位である。
そして、その大公位よりも更に上に皇帝(エンパイア)の位がある。
これは王族しかなれず、凄まじい力を誇る、もはや魔物というよりは魔神である。
人間達からは、災厄と呼ばれ恐れられる存在だ。
それと同列に、支配者(ドミネーター)という位が存在し、ミレイユはこの位を有している。
スラリンから離れたデュラハンは、腕に抱えた頭から、汗が噴き出ているのを感じていた。
不敬な一言で、殺されるかもしれないと思ったのだ。
デュラハンは侯爵位の魔物で、この世界の人間ならば、大人数を相手にしても勝てる強さを誇る。
しかし、そんなデュラハンでも、スラリンに掛かれば秒殺されてしまうのだ。
『鑑定』は、自身の方が上位者である場合、偽の情報を見せる事も出来る。
スラリンは、自分の本当の情報を、照矢に見せてはいなかったのだ。
そう、それはミレイユにすら見せてはいない。
ローズ(スラリン)♀(13594歳)
称号:ジェネラルテンペスト
皇帝位
Lv.111,132,000
HP 356,200,000,000/401,256,000,000
MP 45,567,000,000/45,567,000,000
こうげき力 57,121,000,000
しゅび力 96,888,000,000
ちから 57,121,000,000
まりょく 45,567,000,000
たいりょく 96,888,000,000
すばやさ 55,990,000,000
きようさ 80,761,000,000
みりょく 999
下6ケタを、隠蔽(いんぺい)していたのだ。
その強さは、歴代の魔王すらも軽く上回る。
彼女は本来の自分を隠し、ミレイユに仕えていた。
魔王よりはるか昔から生きてきた存在は、今も世界を傍観している。
代が変われども、魔王に仕えてきたのだ。
勇者達によって魔王の命が失われる時も、時の流れには逆らわず、ただ見守っていた。
「スラリン……後の妾を……頼む……お主なら、任せられる……」
そう、必ず言ってくれる魔王の為に。
永遠の命を、自身とは違う形で成す親友。
「分かりました……様、また、お会いしましょう。私の、親友」
「!!お主……ふふ、そうじゃな……」
最後の最後で、記憶の封を解く。
魔王は最後に、ローズの事を想い出し、また忘れるのだ。
ローズはその後、親友を殺した勇者達を皆殺しにする。
いつもの事だ。
次の、魔王の為に。
「人間なんて、信じられませんからねぇ~。裏切るなんて当たり前ですからぁ~。まぁ……ミツルギ様は、少し見込みがありそうですけどねぇ~。いつもとは違う展開で、楽しみではありますね~」
そう言い残し、ローズ、もといスラリンはその場を後にした。
☆☆☆☆☆
「ここが、入口の扉か」
目の前に、俺の身長の10倍くらいの大きな扉がある。
「うむ、妾が触れれば、開くようになっているはずじゃ」
ミレイユが扉に近づき、右手で触れた。
すると、扉がギギギギギ……という音を立てて、開いていく。
そこには、通路ではなく、見晴らしのいい草原が広がっていた。
「なぁ、ここ城の地下だよな?なんで草原があるんだ?」
「妾も知らぬ。ここは魔王のレベル上げダンジョンじゃぞ?侵入者を防ぐ為の仕掛けではなく、レベルを上げるダンジョンなのじゃからな」
ああ、俺はてっきり、苦労して戦いながらダンジョンを進んでいくのをイメージしてたんだけど、考えてみればそうか。
自身の為のダンジョンだ。
簡単なのにするよな。
メ○ルスライムとか、はぐれメ○ル的な敵がわんさかいるんだろうか。
○○は逃げ出した!ってログが連続で流れて、攻撃する前に戦闘が終わるあの悲しさよ。
そう思ってダンジョンを眺めていたら、白いまん丸いウサギがピョコピョコと走り回ってるのを見つける。
うわ、滅茶苦茶可愛い。
なんだあれ、あれを倒すのか?
そう思ってミレイユの方を見る。
「基本的に、このダンジョンに味方はおらぬはずじゃぞ」
ミレイユもそう言う。
つまり、あの可愛い生き物を、倒せと。
俺、動物を攻撃するの、嫌なんだけど……。
なんていうの?こう、見るからに魔物!て感じの奴なら、攻撃できるんだけど……。
後、俺素手なんだけど。
「見ろテリー。あそこに宝箱があるぞ」
マジかよ。
ミレイユの指差す方を見れば、本当にあった。
赤い、大きな宝箱が。
ミレイユと共に近づいて、開けてみる。
「剣、だな」
「剣じゃな」
一応、『鑑定』してみるか。
「『鑑定』」
名称:エターナルフォースブリザードソード
説明:一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させ、相手は死ぬ……と良いなという願いからつけられた名前の剣。もちろんそんな効果は無い。
効果:攻撃力に+10,000,000の補正。注意※このダンジョン内のみ。
「ヌルゲーかっ!!」
俺は叫んだ。
入ってすぐの宝箱に、最強の剣が入ってるとか、日本人舐めんなっ!!
しかも、この武器はこのダンジョンでしか使えないのか、クソゲーじゃねぇかっ!
「ふむ、これなら楽にレベル上げができそうじゃな?」
「ソウデスネ……」
さっきかっこつけて言った言葉が、今は空しく感じるのはなんでだろう。
まぁ、気を取り直して進むか……。
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