第6話 魔王の秘密訓練場
ユキを見失い、元の場所へ戻る。
すると、ミレイユの顔色が悪い。
も、もしかして。
「『簡易鑑定』!」
ミレイユ♀(9841歳)
職業 魔王
Lv.1
HP 5/20
MP ∞/∞
「ぶはっ!?」
なんでもう死に掛けなの、ねぇ!?
「も、戻ったかテリー。さて、ここに来た本題を始めるぞ……?」
いや、俺が少し離れただけで、なんでもうそんなにHPが減ってるんだよ!?
ああ、回復していってたのが、離れてまたダメージ負ったからか!?
「ミツルギ様~、HPって半分までは、あんまり影響受けないんですよぉ~。だから、さっきミレイユ様はぁ、HPが10まで回復してぇ、顔色が戻ったんですねぇ」
とスラリンが教えてくれる。
つまりあれか?
俺の傍にいてHPが10まで回復して平常に戻ったけど、少し離れてまたダメージを受けて、10以下になったから苦しみだしたと。
こういう事か!?
「つーかさ、これだと俺の懸念した、勇者達と戦っている間の守りの話に戻るんだが……スラリンが守ってくれるとしてもさ。こんなよれよれのミレイユを守りながらじゃ、戦えないだろ……」
「それについてはご安心を~ミツルギ様。ちょっと失礼しますねぇミレイユ様~」
「う、うむ?」
スラリンは液状になった。
流石スライム、こっちの方がスライムって感じがする。
そうしてミレイユの足元に移動し、液状から丸い球体に変わる。
「お、おぉ。スラリン、枕の要領じゃな?プルンプルンのヒンヤリしていて、しっとりすべすべじゃ!」
「はい~。ミレイユ様の下半身を、優しく包み込みますぅ~」
「ぶふっ……!!」
「「?」」
ミレイユとスラリンが俺を不思議そうに見てくるけど、俺は吹き出してしまった。
だっておま、それ完全にスライムナ○トですから!!
だめだ、笑いが抑えられない!
「ぶはっ!はははははっ!」
「な、何が可笑しいのじゃテリー!?」
「いやだって、ははははっ!!」
ごめん、これが分かるのは、ドラ○エ知ってる奴だけだと思う。
「というわけでぇ~、大丈夫ですよぉ~?」
「ああ、うん、その状態でスラリンは戦えるのか?」
「はい~。というかですね~、ミレイユ様の全身を包み込んでしまうので、ミレイユ様と分からないかと思いますぅ~」
成程、確かにそれなら、仮に他の奴に見つかっても、時間も稼げそうだな。
「ちょっと待てスラリン、妾がそれだと窒息してしまう」
「あ、そうでしたぁ~……良い案だと思ったのですがぁ~」
息できないんかーい!!
この主従大丈夫か本当に。
「えっと、なんだ。『魔法』とかで、息できるようにしたりとかできないのか?」
「何を馬鹿な事を言うておる。そんなファンタジーな事ができるわけなかろう」
「そうですよぉ~。ミツルギ様は頭ファンタジーすぎますぅ~」
ファンタジーな世界に居る、魔王とスライムにファンタジーって言われたの、歴史上で俺くらいじゃないか?
頭ファンタジーとか言うパワーワードやめてくれませんかね。
「ご、ごめん……」
なんか理不尽だと思いながらも、謝る事にした俺だった。
「まぁ、時間はまだあるのじゃ。その点は後々考えるとしてじゃ。まずは、テリーのレベル上げを考えねばならぬ」
「ああ、そうだな。とりあえず魔物倒してきたら良いのか?」
お約束だよな。魔物を倒して、経験値を得てレベルを上げる。
そう考えて言ったら、ミレイユとスラリンが青い顔をしている。
スラリンは水色みたいな透明で綺麗な色から、濃い青色に変わっているというか。
うん、そんな事はどうでも良いな。
なんか俺不味い事……って……あーーーー!!
そうだよ!こいつら魔物側じゃん!?
俺、今仲間倒すって言ったの!?
「あ、ち、違っ!そういうわけじゃなくて!いや意味としてはあってるのか!?だけど違くて!」
「あはっ!あはははっ!もぅ、ミツルギ様慌てすぎですぅ~」
「くくっ、さっき妾達を見て笑った仕返しじゃ」
こ、この主従共っ!!
本気で失言したと焦ったんだぞ!?
「まぁ、テリーの言い分も分かるが、途中でテリーも気付いたようじゃが、魔物は妾の配下じゃ。ただし、それは意思のある魔物に限定されるのじゃ」
「意思のある、魔物?」
「うむ、その辺で本能の赴くままに生きておる魔物は、基本魔王軍ではないのじゃ。野生の魔物は獣と変わらぬでな」
そうなのか。
てっきり俺は、魔物って全部魔王の手下だって思ってたよ。
「じゃから、そういう野の魔物は倒しても構わぬが、テリーには魔王城に代々伝わる、魔王ダンジョンに挑んでもらおうと思っておる」
「ま、魔王ダンジョン?」
なにそれ、すっごい難易度高いダンジョンっぽいんですけど……。
名前からして、ゲームクリア後に行けるようになるダンジョンとか、そんな感じの。
「うむ。魔王は死後、輪廻転生を行うのじゃが……その際に肉体は弱くなってしまい、レベルも1になってしまう」
ああ、風来のシ○ンとか、ト○ネコのダンジョンとかのような感じか。
あれは確か、装備を強くしていくんだよなぁ。
妹が好きで、やりこんでるのを見てたんだよな。
「そこで、魔王のレベル上げをするダンジョンを創ったというわけじゃ、何代前の魔王か知らぬがな」
「つまり、そこでレベル上げをしてこいって事か」
「うむ。テリーのステータスなら、補正を受けた妾より高いから、
「そういう事なら、了解だ!その場所が、この場所から行けるって事か?」
「そうじゃ。元々が魔王の為の修練場じゃから、妾も行かねばならぬが……妾を守れよ、勇者!」
そうニヤッと笑うミレイユに、俺は今度こそ、しっかりと返事をする。
「おう、任せろ魔王!俺が絶対に守ってやるよ!」
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