第3話 魔王に教わる

 ミレイユに案内され、城の地下らしき場所に着く。


「ミレイユ、ここは?」


「訓練所じゃな。妾がこの体に生を受けてからは一度も使っておらぬが」


 にしては、埃一つないし、綺麗にされている。

 あ、もしかして。


「スラリンが綺麗にしてたとか?」


「分かりますぅ~?美味しいんですよねぇ~」


 美味しい、美味しいと今言いましたか?

 そうか、スライムにとって、ゴミとか埃って食べ物なのか。

 なにそれ、一家に一台貴方のおうちにスライムどうぞとかいう時代がきちゃうよ?


「テリー、今阿呆な事を考えたじゃろ」


 なんで分かるんだよ。


「ともかく、テリーにはまず『スキル』について教えねばならぬからな」


「ああ、『魔法』とかそういうの?」


「うむ。妾達のような、元々この世界の住人は、一つ一つを『魔法』として覚えるのじゃが……異世界人が覚えるのは、一つのくくりとして覚えるでな。少し違うのじゃ」


 一つ一つを『魔法』として覚える?

 疑問が顔に出ていたのだろう、ミレイユが補足してくれた。


「例えば、火の『魔法』である『メラ』じゃが……」


 ドラ○エかよ。

 まぁ、異世界は色んな名称があるもんな。

 俺的にはファイアが好きだけど。


「火の系統として『メラ』、『メラミン』、『メラミンゾーマ』、そして最上位火魔法として『フェニックス』とあるのじゃが……」


 まて、まてまてまて!待って!

 『メラ』の次はメラミだよね!?なにその食器みたいな名前!

 『メラミンゾーマ』ってなんだよ!?最後だけやけにカッコイイな『フェニックス』って!


「氷の系統としては、『ブリザド』、『ブリザラン』、『ブリザードン』、そして最上位氷魔法として『フリーザー』とあってじゃな、異世界の者は、これを『属性魔法』として全て扱えるようになるのじゃ」


 待って!突っ込みが追いつかないから!

 氷はF○なの!?混乱するから統一してくれませんか!?

 『ブリザラン』ってなんだよ!ブリザラで良いだろ!なんでンをつけた!

 『ブリザードン』って、火のポケ○ン思い出すわ!なんでもンをつけりゃ良いってもんじゃないだろ!?

 最後はもう完全にポケ○ンだよ!確かにあの鳥は氷だったよ!


「妾達は、全ての魔法を覚えられるわけではないのじゃ。例えば、今話した『魔法』で、『メラ』と『ブリザド』が使えるからと、その『上位魔法』全てを扱えるかと言われれば、そうではない。じゃが、異世界人は属性として身につける為、全てを扱える。これが大きな違いじゃな」


 俺が色々と脳内で突っ込みを入れている間に、ミレイユは淡々と説明してくれる。

 だが待ってほしい。

 俺の頭は確実に今ついていけていない。

 そんな時、俺は下半身が催してきたのを感じる。

 思えば、野球して帰る時まで、一度もトイレに行っていなかった。

 ちょっとぶるっときた俺を見かねたのか、ミレイユが聞いてきた。


「どうした、テリー?」


「えっと……トイレ、行って良い?」


「お主……。はぁ、スラリン、案内せよ」


「はい~。ミツルギ様ぁ、こちらですぅ。あ、私が食べても構いませんよぉ~?」


 何その背徳行為!?


「え!?そ、それじゃよろし……」


「……」


「い、いや!トイレの場所を教えてくださいっ!」


「くすくす、分かりましたぁ~」


 ミレイユに凄い顔で睨まれたので、慌てて言い直す。

 というか、ミレイユはどうするんだろう?


「早う行くのじゃ。妾の体力が尽きぬうちにな」


 どういう事だろうか。

 しかし、『鑑定』をすぐにするわけにも……。


「良いぞ、『簡易鑑定』をしてみるのじゃテリー」


「『簡易鑑定』?」


「対象の名前と性別、そしてHPとMPだけ見れるのじゃ。ほれ、ずらっと出ると邪魔じゃろ?じゃから、そういう項目だけの『簡易鑑定』という『スキル』もあるのじゃ」


 へぇ……それは便利だな。


「そんじゃ、『簡易鑑定』」




ミレイユ♀(9841歳)



職業 魔王


Lv.1


HP    11/20


MP    ∞/∞




「ええぇぇ!?なんで体力減ってんの!?」


「ほら、ここまで歩いてきたじゃろ」


 それだけで減るの!?

 HPだけで見るなら、ミレイユは今半死人状態なんですけど!?

 見た目なんの怪我も負ってないけどさ!


「分かったか?だから、早う行ってくるのじゃ。妾が倒れる前に」


「だぁぁ!スラリン、急いで頼む!」


「はぁ~い~」


 間の抜けた声を出すスラリンに、脱力させられつつも、トイレへと向かう。

 あーもう、なんであの魔王はあんなにへっぽこなんだ!?

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