第38話 王城への呼び出し

 

 あの事件から数日が経過した。


 ヴィールたちはしばらくは落ち込んでいたらしいが今では微かに元気さが戻りつつあった。

 ウェガは事件の事後処理として本部にはあまり顔を見せていない。


 デルフは後から聞いた話だが殺人鬼がアリルだとは公表しないことになった。


 守る立場のはずの騎士が殺されただけでも無視できない失態だ。

 さらには魔術団長までもが殺されデストリーネが誇る二大勢力である騎士団と魔術団の信頼は下がる一路を辿っている。


 だと言うのに犯人は騎士でしたなどと公表してしまえばもはや信頼の回復は不可能になってしまうだろう。 


 アリルのことを知ってしまった者には箝口令が出された。

 文句は誰も言うはずがない。

 そもそも箝口令が出されなくても誰も言わないだろう。 


 デルフはアリルが最後に言った言葉を思い出していた。


(魔術団長は殺していないか……)


 もしあの言葉が嘘ではないとするとこの王都にはまだアリルとは別の殺人鬼が潜んでいることになる。


 しかし、アリルが捕まってから一切の動きを見せないことから上層部はアリルの苦し紛れのの嘘だと決めてその証言を撥ねのけた。


 アリルは騎士や魔術団長などを含めた約十名の殺害によって死罪となった。


 しかしながらこの国の死罪は名目だけですぐに執行するというわけではない。

 というかこの国でまだ死刑を行われた試しはない。


 永遠牢屋暮らしになるだろうとウェガが言っていた。


 アリルは王都にある表にある牢屋ではなく地下牢に投獄されたらしい。


 殺人犯にしては珍しく暴れもせずに落ち着いて自分から牢屋に入っていったそうだ。


 ここまでがデルフがウェガから聞いた話になる。


 デルフは限界を超えて戦い続けた結果、倒れてしまい今さっき本部の一室で目を覚ましたところだった。


 その直後にウェガが現われ外に連れ出された。


「あんな事件だったけど解決は解決だ!! デルフが起きたし、宴会をするぞーーーー!!!!」とノクサリオは気分を一転させて大声で叫んでいた。


 しかし、ウェガに連れ出されるデルフを見て意気消沈としながら「先に俺たちだけでしているからな!!」と嘆いて宴会所に戻っていた。


 そして、デルフが連れてこられたのは王城であった。


「た、隊長……?ここって……」

「ふぉっふぉっふぉ。此度のお主の働きが認められ、あるお方が直々に賞賛と褒美を贈りたいとのことじゃよ」

「褒美!?」


 デルフは素っ頓狂な声で繰り返す。


 必死に頭の中を整理するがなかなかまとまらず言葉が詰まりながらウェガに尋ねる。 


「そ、それでそのお方とは?」

「なぁにお主も会ったことはあるじゃろう。なにも緊張する必要はないぞ」


 デルフは記憶を辿って必死に思い出す。


(会ったことがあるとなると、流石に王族ではないな。会ったことがあってそれなりの地位がある……。つまり、師匠かハルザードさんか。しかし、師匠は今この王都にはいないしここまで回りくどい言い方はしないだろう。となるとハルザードさんか)


 しかし、ハルザードに会うとしても回りくどい言い方だ。


 不思議に感じながらも取り敢えず王族と会うのでなければそんなに緊張する必要はないことにほっと息を吐く。


 たまに会っているデルフだからこそそこまでの感動はないだけで一般の騎士からすれば騎士団長に呼ばれることは誇っても良いことなのだろう。

 そう自分の感覚がおかしいだけだとデルフは決定付ける。


 そして、多少は気楽でいてもいいだろうと安易な気持ちで王城に踏み込んだ。


 その判断をデルフはすぐに後悔した。


(何が軽い気持ちだ!)


 デルフが今いる場所は謁見の間のような個室であり今は空席だが目の先には質素な椅子があった。

 こんな場所の相場である色とりどりの宝石が付けられている煌びやかな椅子というわけではない。


 だが、その椅子から伝わる風情はこれは決して安物ではないと言っているように感じた。


 決して煌びやかな物だけが高いとは限らないと教えられた気がする。


(これって絶対、ハルザードさんじゃない……)


 そのとき、部屋の外からコツコツと足音が耳に入ってきた。


 ウェガはすぐさま跪き頭を伏せ横目でまだ頭を下げていないデルフを見る。


「デルフ。頭を下げるのじゃ」


 デルフは言われて通りウェガと同じ体勢になる。


 そして、扉が開かれた。


 デルフは頭を伏せているため目で見ているわけではないが先頭に一人、その後ろからもう二人が入ってきたことが分かった。

 誰だか確かめたいと思いこっそりと顔を上げようとする。 


「まだ頭を上げるではない」


 だが、その動作がウェガにはお見通しだったらしく小声で注意を入れてしまった。


 デルフは自分の出来心を放ってウェガの言葉に従う。


 しばらく沈黙が続き先程の高価な椅子に誰かが着座するとその沈黙が破られた。


「面を上げてください」


 透き通った儚い声がデルフに向いた。


 デルフはゆっくりと顔を上げると純白の優美なドレスを身に纏い、輝いているように見えるこれまた純白の長髪の少女が椅子に腰掛けていた。


「まずは自己紹介を。私はフレイシア・ワーフ・デストリーネと申します。話は隣にいるスミドルム隊長から伺っております。デルフ・カルスト。今回、なにやら比類なき働きをしたとか、多忙な父と兄に代わって役不足でありますが私が賞賛を送りたいと思います」


 無表情で淡々と語る王女様。


 デルフも同じく無表情だったが内心ではわけが分からなく混乱していた。


 (まさか、王女様が……? 隊長、俺……会ったことないぞ……。この嘘つきめ!)


 デルフの混乱した頭は永遠かと思うほどの思考を駆け巡らせていたため時間の感覚が錯覚してしまっていた。

 なので実際はまだそれほど待たせているわけではないが待たせていると慌てて言葉を紡ぐ。


「勿体ないお言葉。私は騎士として当然の務めを果たしたまででございます。決してこのように褒められるようなことではないかと」

「ふふふ。謙遜しなくてはいいのですよ。それであなたに褒美を与えたいと思うのですがなにか望みはありますか?」


 ここでフレイシアが初めて微笑んだ。

 だが、デルフはそれどころではなく言葉を選んでいくので精一杯だった。


「……こうして、一介の騎士にこのような場を設けてもらい王女殿下のお言葉を賜ることこそなによりの褒美でございます。これ以上のことは何も思いつきません」


 デルフは心の中で敬語の勉強もしておいて良かったと安堵した。


(姉さんの言う通り必須項目なわけだ……)


 デルフは敬語なんてある程度覚えているしいらないんじゃないかとか言っていた自分にそれでも勉強を強行してくれたナーシャに深く感謝した。


 それでもこの言葉使いで問題はないかという不安もあったがフレイシアの反応は悪くはなさそうなので取り敢えずは大丈夫だろう。


 そのとき、フレイシアは誰にも聞こえないように軽く息を吐く。


「ん!」


 側で控えていた侍女たちに目配せすると侍女たちは退室していった。


 そのときのフレイシアはどこか子どもっぽく感じた。


 侍女たちが退出したことを確認したフレイシアはおもりが外れたように伸ばしていた背を緩めてうーんと伸ばす。


「それで、まだ気付かないのですか?」


 透き通った声でそう尋ねてくるがデルフはそのフレイシアの言葉の真意を掴めずにいた。

 おろおろと目を泳がせてなにも言葉を発することができない焦りで背筋に冷たいものが走る。


 それを見るに堪えかねたフレイシアはさらに一層の溜め息を吐き早口で口を開いた。


「それでは今から王女としてではなくて一人の女であるフレイシアとして接します」


 それで言葉は止まり一拍置いて再び口を開いた。


 そのときフレイシアが纏っていた雰囲気は一変した。

 侍女が去ってからも変化は感じていたがその差は明らかだ。


 あの優雅な雰囲気が崩れ去り代わりにあどけなさが見える。


 なんというかデルフは残念な気持ちになる。


「ふぅ~。いったいいつまで忘れているのですか。何なのですか。あなたは馬鹿なんですか? 多少は賢い人だと思っていたのですが私の勘違いでしたか? ああ、それとあのときは命を助けていただいてありがとうございました」


 フレイシアは座ったままぺこりと頭を下げる。


 言葉遣いまでもが変わってしまっておりデルフは呆気にとられていた。


 しかし、その驚いているデルフの頭の片隅にその声を含めその言葉遣いも初めて聞いたとは感じなかった。

 デルフは止まっていた思考を動かし頭の奥に向ける。


(何か引っかかる…………ん? そういえば隊長が会ったことがあると言っていたな。待てよ。命を助けた?)


 デルフは答え合わせをするようにフレイシアの顔を見る。


(どこか……で)


 続いて長くて雪のように真っ白な髪に目を向ける。


(ま……さか)


 デルフの脳裏にフードを被っていた少女が過ぎる。


「ああああーーーーーーー!!!!」


 鮮明に三年前のことを思い出しその驚きで考えとともに声まで出てしまった。


「ま、まさかあのときの生意気な家出少女!?」

「ゴホンゴホン!!」


 隣でウェガが大袈裟に咳払いをした。

 言葉遣いに気をつけろと言うことなのだろう。


 思わず冷静さを欠いてしまったらしい。


 デルフは思わず口を手で塞ぐ。


 しかし、そんな無礼をフレイシアは全く気にしていないようで「やっと気付きましたか」と呆れている。


「まさかあの生意気……失礼。あの少女が王女殿下であらせられるとは思いもしませんでした」


 すると、フレイシアは不機嫌そうに顔をしかめた。


「デルフ。あのときと同じ喋り方で良いのですよ? 私はあちらのほうが好ましいです」

「い、いえ、そうも参りません。私は騎士である身分ですのであのような言葉遣いなどあってはならないこと。今までの無礼も容赦して頂きたいです」


 デルフは深々と頭を下げる。


「むぅ~。そうですか。まぁ、それは一先ず置いておくとしましょう。それよりも…………怪我をしているようですね」


 フレイシアはデルフが所々に巻いている包帯に訝しげな目を向けた。


 そして、椅子から立ち上がりゆっくりとデルフに近づいた。

 デルフの隣にまで来ると包帯の場所に片手を近づける。


 淡い緑色の光がフレイシアの手から出現しそのまま包帯をすり抜け傷口に注がれるように光が放出する。

 フレイシアはその所作を怪我がある箇所、全てに行った。


(えっ?)


 一瞬で違和感が消えたことに驚き包帯を取ってみると怪我が嘘であったと思うほど一切の跡を残さずに無くなっていた。


 デルフはフレイシアと傷があった場所を交互に何度も見てしまう。


 フレイシアはにっこりと微笑んでゆっくりと腰掛けた。


「それで、褒美の件でしたね」

「い、いえ! それは先程申し上げ……」


 デルフの言葉はそれ以上続かなかった。


「静・か・に!!」


 フレイシアの気迫によりデルフの言葉は遮られてしまったからだ。

 言い返す暇が無い。


「それで、褒美の件でしたね」


 フレイシアはデルフの言葉がなかったかのようににこやかに全く同じ言葉で話し始めた。


「しかし、デルフは物には興味がなさそうです。……どうしたものでしょう。ああ、そう言えば爺から提案があると聞いたのですが。爺、聞かせてください」

「ハッ!」


 ウェガは今までずっと伏せていた足を持ち上げて立つとデルフを見た。


「デルフの褒美として儂の地位の全てをくれてやりたいと考えております。三番隊の隊長の役目ともう一つを」

「まぁ。それは素晴らしいですね。なるほど、地位とは盲点でしたー」


 なぜかフレイシアの言葉が片言のように聞こえたがデルフはそれどころではなかった。


 (俺が……隊長!?)


 本来ならば大出世で喜ぶべきところなのだがデルフは浮かない顔どころか真っ青になっていた。


「隊長。待ってください! 俺はまだ入団して半年ほどしか経っていないのですよ! そんな新人に隊長なんて務まるはずがありません!」

「ふぉっふぉっふぉ。騎士団始まって史上最年少の隊長なれるのじゃぞ? 胸を張るべきではないか?」

「俺が隊長なんて……先輩たちや同期の騎士たちも良くない顔をすると思いますが?」

「ふむ。そんなことか。それなら心配はいらぬ。三番隊の面々には儂から説明したが反応は良かったぞ。やはり、殺人鬼を捕まえたことが大きいのじゃろうな。年が上だけで実力がデルフ以下の俺たちじゃただの笑いものになってしまうと言っておったわ」

「なら! 隊長がまだ続ければいい話ではないですか!」

「これは手厳しいのう。まだこの老いぼれに働けと申すのか」

「そ、それは……」


 すると、ウェガは自分の手を見詰めて悔しそうにしていた。


「まぁ元々、儂は既に団長の座をハルザードの馬鹿に譲った隠居の身じゃ。しかし、隊長に相応しい者が居ないから隊長になってくれと言われ断るに断れずに承諾したのじゃ。その際に相応しい者がいたら隊長を交代してもいいという条件付きでのう」

「それで、俺が相応しいと……?」


 デルフとしては自分は隊長に相応しくないと考える。

 歳、経験どれもがまだまだ未熟な自分にそんな大層な自信を持てるはずがない。


「お主は気が付いてはおらぬがなにも強いだけが上の立場に付けるわけではない。いつも素っ気ない態度を取っているお主じゃがその周りにはいつも人がおる。いくら強くても人望がないものには務まらぬ。お主に人望がなければ儂がデルフを隊長に推薦したとき何かと何癖を付けて反対するものが現われたじゃろうが一切居ないときた。そもそもお主ならやり遂げると確信しておる」

「……過大評価ですよ」


 デルフにかかる重圧は増しそれを受け止めきれず顔色がさらに真っ青になってしまう。


 さらにウェガは言葉を付け加えた。


「それに儂はもう後が短い。この間も殺人鬼を探そうと巡回を行おうとしたとき急な発作が起きて倒れてしまったのじゃ。もう全盛期の力の半分も出せん。このような身体では隊長はおろか姫様の身を守ることはできぬ。だから、今のうちに全てをお主に託したいのじゃ」


 その言葉を聞いてデルフは目を見開く。


 ウェガの眼差しは至って真剣だ。

 ウェガにとってもこの決断は身を削る思いだったのだろう。


 ここで断ってはその覚悟を踏みにじってしまう。


 そして、デルフは決心した。


「わかりました。その役目を承りたいと思います」

「おお! やってくれるか。なに、心配はいらぬぞ。いきなり全てを任せるわけではない。しばらくは儂も手伝うからのう」


 嬉しそうにウェガはそう言ってくれる。

 それを聞いてデルフは少しだけだが肩が軽くなった気がした。


 これから忙しくなるなと未来の自分を想像するとうんざりしそうになるがなんとか堪える。


 ウェガがさらに爆弾発言をするまでは。


「姫様良かったですな。デルフはあの現副団長の弟子にしてその師の名に負けないほどの武勇をお持ちです。必ずや姫様の御側付きという務めも果たしましょうぞ!」

「うふふ。全く頼もしいです。これからもよろしくお願いしますね。デルフ・カルスト……隊長」


 フレイシアは微笑んでデルフを見詰める。


 デルフは困惑を隠せずに何から質問すればいいかあたふたしていた。


 そして、ようやく言葉を絞り出した。


「た、隊長……御側付きって?」

「ん? 儂の地位を全てくれてやると言ったじゃろう。隊長とそれじゃ。御側付きというのはそれなりの実力がなければ認められぬが隊長となったデルフなら大丈夫じゃ。安心するが良い」


 デルフはそんなことを聞きたいわけじゃないと必死に心の内で絶叫するが声には出さない。


 もはや、これは決定事項なのだろう。

 いくらデルフが叫いたところで結果覆らない。


 ウェガとフレイシアが楽しくこれからのことを談笑しているのが目に入ったがデルフは苦笑する。


 (隊長と御側付き……どちらも大役じゃないか……一つだけでも相当な責任がのし掛かるというのに)


 そう頭を悩ませていた。


「おっと、そうじゃ」


 まだ何かあるのかとデルフは震えながら身構える。


「お主、早く宴会に行かなければ怒られるのでないか。主役がすっぽかしなどあり得ぬぞ」

「あっ!」


 デルフはこの場に来る前の出来事を思い出す。


(そう言えばノクサリオが叫んでいたな。あの様子だと俺が起きるまで待ち続けていたのか……。それだと悪いことしたな)


 チラリとデルフはフレイシアを見る。


「行っても良いですよ。楽しんで来てください。では、デルフ。これからのお務め期待しています」

「身命を賭しましても必ず」


 デルフは跪き頭を伏せる。


 そして、立ち上がり扉の前まで行くともう一度フレイシアに一礼し部屋から退出した。




「いやはや、なんとか上手く行きました」


 ウェガは胸をなで下ろして安堵していた。


 もし、デルフが本気で断ってこられたらと思うと本当に困ったものだ。

 しかし、それでも押し切っただろうが。


 (これで姫様にとっても良い置き土産ができたというもの)


 ウェガもこれで心置きなく騎士団から身を退くことができる。


「それで爺、身体が不調だとか?」


 ウェガはそのフレイシアの問いかけに首肯する。


「はい。近頃、身体が思うように動かないのです。そんなときにデルフが来てくれて何よりでしたぞ。これで後顧の憂いなく隠居生活に戻ることができます。まぁしばらくはデルフの面倒を見ませんといけませんですがな。ふぉっふぉっふぉ」

「爺、くれぐれも無理せず自愛に努めてください」


 フレイシアは心配そうな表情で言いウェガは静かに頭を下げた。


「ところで、爺。宴会とは何ですか?」


 ウェガは口元に手を当ててゆっくりと考える素振りを見せる。


「ふむ~。騒がしい会食と言ったところですかな」

「ほほう。何やら楽しそうですね。会食と聞いたら重苦しいイメージがあるのですが騒がしいとは全く正反対……興味があります。ちなみにどこでしているのですか?」


 ウェガはフレイシアの目がキラリと光ったのを感じた。


 ウェガもにやりと笑い騎士団本部だと告げる。


「それでは時間も時間ですし。今日は部屋に戻ることにします」

「姫様。せめて着替えてからお休みになってださい」


 その言葉がどういう意図があるか理解したフレイシアは驚いたようにウェガを見る。


「儂は既に御側付きの補佐、もうグチグチと耳に痛いことは言いませぬ。多少の我が儘は多めに見ますとも」

「流石、爺です!」


 フレイシアが部屋から出た瞬間に遠ざかっていく騒がしい足音が響いてくる。


 それに続く「フレイシア様! お待ちを~」と言う侍女の声も。


「姫様のあのような溌剌としたお顔を見たのはいつ以来か……。さて、儂も向かうとするかの」


 ウェガは目頭に溜った熱いものを手で払った。

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