輝いた真夜中に三千

エリー.ファー

輝いた真夜中に三千

 お前が何を言おうと、もう、この地球は滅亡する。

 カエン星人たちは、皆、この場所に爆弾を落とそうとしている。

 核施設だからな。

 一発だな。

 間違いなく。

 俺か。

 俺はカエン星人の生み出したロボットだ。だから、こうやってお前ら地球人と運命を共にする仕事を負わされて、ここに爆弾がしっかりと落ちてくるのを見届ける。

 そういうことを今からする。

 まぁ、する、というか、ただいつだけなんだけどな。

 暇だよ。

 とにかく暇だな。

 しかし、まぁ、なんでカエン星人なんかに喧嘩を売ったんだ。地球の文化レベルでかなう相手ではないことは分かるだろう。

 侵略だって、少々の犠牲者で済んだのに変に抵抗をするから、半分以上殺されることにもなった。

 もっと上手く立ち回ることもできただろう。

 

 ある日のことである。

 カエン星が滅亡した。

 理由は。

 なんであっても良いと思う。

 とにかく滅亡した。

 何かよくないことが起きたのだと思う。

 カエン星は昔から他の星々から恨まれていたために、このようなことがあったものだから、それはそれは喜ばれた。皮肉めいた祝いの言葉も、罵詈雑言も、数えきれないほど飛び交ったのである。

 少ししてから、星が形を失くすための基準が発表された。

 カエン星は滅亡したため、その基準を作り出すための礎となったわけだ。

 それがまたカエン星人は悔しかった。

 誰かの役に立つことだけはしないようにと、そう教育されてきたからだ。


 学校の教科書にすら乗らないそういう物語の集まりを、一人で編纂している男がいた。

 皆、変人だと思ってはなしかけようともしなかったし。

 事実。

 男は変人だった。

 本人も自覚しているらしかった。

 誰とも話そうとはしないし、誰も求めないし。

 それがまた、男の神秘性とも繋がっている部分があり、非常に厄介だった。

 カエン星がどうたらこうたら、というのをよく小さな声で喋っていた。誰に向かって、ということではない。壁であるとか、何もない空間に向かってである。

 カエン星なんてもの、この世のなかにある訳がない。

 聞いた人は、皆、とうとうその男がおかしくなってしまったと思った。


 カエン星は地球から遠く離れた場所にあり、宇宙で起きたほんの少しのことであったとしても敏感に察知するらしい。それがカエン星人の持つ能力なのか、何か作り出した機械がそれを知らせるのかは分からない。

 とにかく。

 カエン星人は何でも知ろうとするらしい。

 あれはどうなったのだ。これはどうなったのだ。

 そうやって多くの知識を吸収していったらしい。

 これは秘密の話だが。

 元々、カエン星人は地球人であり、そこから追放された大罪人が宇宙に適応するために姿形を変化させたものなのだそうだ。

 ただし、謎に包まれている部分が多く、今だカエン星人について完全に調査が完了している、ということではない。


 カエン星人。

 ああ、いるね、カエン星人。

 あそこの中庭でマージャンやってるけど。

 いや、中々強いよね、あいつ。引きは強くないけど、まぁ、ちゃんとセオリー通りだから、負けもそこまで深くはならないし。

 いいよ、ああいうのは、強くもなく弱くもなくってやつで。

 一生、遊んでられる感じ。

 でもさ、たまに思うんだよね。

 本気出したら飛ばされるんじゃないって。

 うん。

 でも、まぁ、仲良くできるうちは仲良くしておくって、そういうことでいいんじゃないかな。

 うん。

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