早朝起きて思う

 過去の恥や無礼に対する罪悪感がふと思い出され溜息や独り言がよく出るようになった。


 この習慣は昔からあり、夜な夜な、或いは日中にふと叫んだり妙な呻きを上げたりしたものだが最近は特に酷く、往来にあって「俺は駄目だ」「死んだ方がいい」などと呟いてしまうのである。


 過去の失態をわざわざ思い起こして一憂二憂するのは内向的な人間の特性であり、そうした経験のない者の人生はつまらないと、名前は忘れたが偉い小説家が述べているくらいにはよくある話なのだが、このところ悪化の一途を辿る自らの症状に幾ばくかの危機感を覚えるわけであり、さらに進行すれば、街中で大声を上げて蹲り、涙を流して何者かに許しを乞わざるを得ないような事態となるのではないかと、恐々とした心境に慄くのである。そしてある日その記憶を思い出し、また同じような醜態を晒すのではないかという不安が尽きないのだ。これが恥知らずへの取り立てであるとすれば、なんと無慈悲な事だろう。俺はもはや、まともに生きていける気がしない。

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