愚者

 ものが書けない。

 文章が固く死んでいる。一文一文の繋がりが悪くちくはぐ。展開も広がりなく、かといって伸びもない。思いつきで書いたような浅い話が続く。


 目指していたのは作家だった。

 内心諦めている。無理だと悟っている。出てくる言葉の荒さがより自覚を促す。

 だがそれでも書かない事はできない。筆を折るという選択肢がない。理由も目的も失った創作は心削るばかりなのに辞められない。諦めきれない。諦めているはずなのに、夢見てしまう。すがるしかなく、心中するしかない。


 振り返れば足跡はない。砂漠の上に、一人いる。戻れない。死が確定しながら、進むしかない。野垂れ死ぬ未来が、哀れな最後が待っていると知りながら、歩くしかない。



 三十を過ぎた。もう若さがない。やり直しもできない。ここで再起を図れるくらなら、そもそもこんな目にはなっていない。


 未来が怖い。時の流れが怖い。何もできずに死んでいくのが怖い。

 ただ時間が過ぎてゆく。無情に、冷酷に。

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